認定考査 参考解答例(令和2年)
令和2年のすべての問題の参考解答例です。
問題
https://www.moj.go.jp/content/001333232.pdf
第1問
小問⑴
売買契約に基づく代金支払い請求権
小問⑵
被告は,原告に対し,50万円を支払え。
小問⑶
X は,Y に対し,令和2年6月1日,本件中古車を代金50万円で売った。
小問⑷
1 契約不適合に基づく解除
(1) X は,Y に対し,令和2年6月1日,本件売買契約に基づき本件中古車
を引き渡した。
(2) X とY は,本件売買契約の際,本件中古車は,乗用車として正常に稼働
する品質を有するものと合意した。
(3) 本件中古車には,エンジン部分に不具合があり,本件中古車は動かなく
なった。
(4) Y は,X に対し,令和2年6月26日,本件中古車を修理するよう催告
した。
(5) 令和2年7月31日は,経過した。
(6) Y は,X に対し,令和2年12月1日の口頭弁論期日において,本件売
買契約を解除するとの意思表示をした。
(7) X とY は,本件売買契約の際,代金支払期日を令和2年7月1日と定め
た。
2 相殺
(1) Y は,A に対し,令和2年4月30日,弁済期を同年7月1日として,
30万円を貸し付けた(以下,「本件消費貸借契約」という)。
(2) A は,本件消費貸借契約に際し,X のためにすることを示した。
(3) X は,A に対し,本件消費貸借契約に先だって,本件消費貸借契約の代
理権を授与した。
(4) 令和2年7月1日は,到来した。
(5) Y は,X に対し,令和2年12月1日の口頭弁論期日において,上記貸
金債権をもって,X の本訴請求債権とその対当額において相殺するとの意
思表示をした。
小問⑸
1 代理権濫用についての悪意―相殺に対して
(1) A は,自身の利益を図るために,X の代理人として,Y と本件消費貸借
契約を締結した。
(2) Y は,⑴の事実を知っていた。
2 代理権濫用の目的を知ることができたこと―相殺に対して
(1) A は,自身の利益を図るために,X の代理人として,Y と本件消費貸借
契約を締結した。
(2) 代理権濫用の目的を知ることができたことの評価根拠事実
アY は,A と同じ職場で働いていた。
イA にはひどい浪費癖があり,A の交際相手のお金にも手を出していた
ことを,Y は知っていた。
ウY は,令和2年4月29日,「A から,至急現金が必要だが,手元に
資金がないので,貸してくれないかと言われた。」と話しており,A 自
身が金に困っていた状況もよく知っていた。
小問⑹
1 代理権濫用の目的を知ることができたことの評価障害事実―代理権濫用の
目的を知ることができたとする再抗弁に対してY は,X の母であるB に架電し,A が受け取った30万円は,B が引き取ってX に渡すことになっている旨を確認した。
小問⑺
結論
消滅時効は完成していない。
理由
Y がX に対し本件売買契約に基づく代金50万円の支払い猶予を求めたこと
は、「権利の承認」(民法152条1項)にあたるため、令和5年7月1日から、新たに時効が進行する。したがって、令和8年7月2日の時点で、時効期間を経過しておらず、消滅時効は完成していない。
小問⑻
1 ①の場合
結論
証拠調べをすることなく、認定をすることはできない。
理由
不知の陳述をした事実は、同事実を争ったものと推定される(民訴法15
9条2項)ことから、擬制自白は成立せず、証拠調べをすることなく同事実
を認定することはできない。
2 ②の場合
結論
証拠調べをすることなく、認定することができる。
理由
当事者が口頭弁論において、相手方の主張した事実を争うことを明らかに
しない場合には、弁論の全趣旨により、その事実を争ったものと認めるべき
ときを除き、その事実を自白したものとみなされる(民訴法159条1項)
から、裁判所は、証拠調べをすることなく、同事実を認定することができる
(同法179条)。
第2問
小問⑴
結論
司法書士P は、X から特別の委任を受け、X を代理して、控訴を提起するこ
とができる。
理由
認定司法書士は、自ら代理人として手続に関与している事件の判決に限り、
上訴を提起することができる(司法書士法3条1項6号かっこ書)。司法書士Pは、原審において、X の訴訟代理人として訴訟追行していた司法書士であるから、X から特別の委任を受け、X を代理して、控訴を提起することができる。
小問⑵
結論
X の主張する攻撃防御方法を記載した準備書面を作成するという態様で、関
与することができる。
理由
認定司法書士の上訴審における代理権限は、小問⑴のとおり、上訴の提起に
限られ、訴訟代理人として、訴訟行為を行うことはできない。もっとも、裁判所提出書類の作成(司法書士法3条4号)は、審級や訴訟物の価額の制限なく、これを行うことができるから、X の主張する攻撃防御方法を記載した準備書面を作成するという態様で、関与することはできる。
第3問
結論
司法書士Q は、Y からの依頼を受任することはできない。
理由
なるほど、司法書士Q は、X の同意があれば、X からの受任事件の相手方で
あるY からの依頼による他の事件として、A に対する訴状作成の依頼を受任することができるように思える(司法書士法22条3項3号、同項柱書ただし書)。しかしながら、X のA に対する代理権の授与について、XY 間で主張が食い違っており、一方の主張が認められれば、他方が責任を負うという点で、両者の間には、利害の相反関係があり、Y の依頼を受任することは、司法書士倫理61条4項に抵触する。
したがって、司法書士Q は、Y からの依頼を受任することはできない。