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森と人のつながり(7) ~木のおもちゃ、親子の木工ワークショップ、自然環境

はじめましての記事で書いたように、いろいろな人に森とのつながりのお話を聴いています。

七人目は、千葉県の木育コーディネータで木のおもちゃを通じて木の魅力や木工の楽しさを伝えたり、その木が育つ自然環境について伝えている K さん。FCWS(Forest Creative Women's School)(*1)でいっしょに学んだ仲間です。

〇いまやっていること ~木のおもちゃ広場(木育ひろば)、親子木工ワークショップ

2021年に千葉県木育コーディネーター資格を取得した事をきっかけに、『人とまちと森をつなぐ木のおもちゃプロジェクトの会』(市民活動団体)を立ち上げて、木育(もくいく)の普及活動を行っています。

木育とは、2004年に北海道で生まれた言葉で『木に触れて遊び、学び、行動する』という基本的な考えがあります。

【木育】の捉え方は、千差万別。
木に親しむこと、木や自然に触れて学ぶこと、木でものづくりをすること、森林に関わる人材を育てること、SDG’s、自然を大切にする意識のこと。などすべてが【木育】だと思っています。

私が考える木育は『自然と共に生きる力を育てる』活動であり、それは子どもの時から始める〈親子・家族の絆づくり〉だと考えているんです。今は、木のおもちゃを中心に【親と子の絆づくり】をテーマに【木育ひろば】や【親子木工ワーク体験】を実施しています。

大人も子どもも一緒に楽しみながら、日本の自然の木の良さを感じられる場の提供をしています。対象は0歳~100歳。親子に限らず、多世代に渡った交流を深めてもらいたいですね。特にけん玉やコマ遊びなどは、日本伝承の遊びなので、年配の方から次の世代に大切に伝えていけたら良いな思います。

ちばの木のおもちゃ広場からものづくりへの展開

毎年、千葉県コーディネーター協会のメンバーが企画・制作をしている千葉県産材の木のおもちゃ(材:主にサンブスギ、ヒノキ)を管理場所の東金市〜流山まで2時間位かけて車で運び、市内の親子に遊んでもらえる木のおもちゃ広場を開催しています。最初は、3組ほどでしたが、いまは毎回、開催時には、30人(15組)ほどの親子さんが、リピーターとして参加して下さるようになりました。

一年目は、《木に親しむこと》を主としていましたが、ニ年目からは、『木工がしたい』という声が増えてきたので《木工ワーク体験》と《遊びの自然素材の枝や幹を使った自由創作『木工クラフトワーク体験』を実施しています。サンブスギの端材も取り入れています。

枝を切ったり、装飾用の小さな幹に工夫をしたり、レーザーで刻印や絵を入れたり、自分でできることは、なるべく自分でしていこうと頑張ってますよ。

木工ワークについて

《釘とかなづち(玄能)》を使う事にちょっとこだわってます。子どもの成長に大事な手指の運動になると思うんです。最近、〈握る〉ということをあまりしない子もいて、力が弱くなってい気がします。「ぎゅっとつかんで」と言っても、指先でつまんじゃう。そういう体感覚はやっぱり大事だから、早いうちにやってあげたいなと。そのきっかけとして、金槌を握って打つ事をやってもらってます。

私は、道具を扱うのは、正直得意ではないんですが、製材所の人や元大工さん、木を扱う経験のある人などに教えてもらったり、自分で練習をしたり、それなりに少しは、上達してきたかな〜と思いますが、子どもたちが怪我をしないようにだけは、いつも十分に気をつけています。

①おもちゃで遊ぶこと(楽しいこと)
②ものづくりをすること(想像力・アイデア力)そして、
③自分の体の使い方(カラダ感覚)にも意識を高めていく。そんな感じで広がってきている感じです。

今後は、木育コーディネーターとしては、木の特徴とか、木の扱い方とか、自然や森林環境の事などを都市部の人たちに知ってもらうために、身近な自然の中での体験を増やしていけたら良いなと考えています。

目指しているもの(1) ~子どもが自分を表現する、親子が認め合う

実は、本業はチャイルドマインダー(英国式ベビーシッター)です。
今年で満7年になりました。子育て支援をしてきて、その根底にあるのは、子どもの心を大事にしたいなっていうのがずっとあるんです。

社会や大人の事情もあるけど、できるだけ子どもたちが、自分らしさを自由に表現できるお手伝いをしたいという思いが強いんですね。だから、『木育ひろば』『木工ワーク』で、思いっきり自分を表現できる機会や無条件に認めてあげられる場所が必要だと感じています。

そして、子どもだけではなく、大人(親)にも子どもと一緒にご自身を表現してもらいたい。子どもたちには、いつもそばで見守る家族や親がいてくれる事、その優しさに気づいてお互いが認め合って、褒め合える関係性を見出せたらサイコーですね。

ある日、親子でそれぞれに私の木工ワークに参加してくれて『自然素材のミニチュアタウン』を作ってもらった時の話。冬の町を作っていたんですが、子どもが屋根に雪を降らせたり、小枝で焚火を作ったりして。親が子どもにすごいねって声がけをすると、お子さんも『お母さんのもいいね〜!』って認め合う。そんな素敵な場面に立ち会わせてもらいました。その瞬間がとても大切だと思うし、私もすごく嬉しくなりましたよ。

最近は、自然のものや体験を大事にしている保育園や幼稚園、こども園なども増えていますね。今年の秋に、幼稚園でも親子のものづくりワークをする予定です。そういう機会がどんどん広がったらいいなと思います。

親子で木工を楽しむ

ここに行き着くまでには。。。

実は、昨年までずっと木育活動の方向性に悩んでいたんです。今年2月に、林業に関わる仲間が「本当にあなたにとって大事なことは何?」って問いかけてくれたのです。それまでしてきた事や経験したことをたくさん聞いてくれました。そして、話をしていくうちに『はっ!』として。
それが【親子の絆を深めること】だって。
木のおもちゃで遊ぶことだけじゃなくて、その背後にある親子の関係を私が一番大切にしていることなんだと、改めて気づきました。

ここに応援してくれる仲間がいてくれる。
同じ方向を向いてくれる仲間の存在に心から感謝しています。

自然環境への関心

私の木育活動に協賛いただいている環境再生医の方から、私が住む地元の森林環境の状況を見ていただく機会がありました。すると、里山で栄えてきたこの土地の今の状況は、ちょっとまずいと言われまして。。

土の状況が悪いというのは、今まで森林の中を流れていた自然の水や空気が、住宅の建設などによって周りをコンクリートで固められ、土の中に通らなくなり、木がだんだん息苦しくなって弱っちゃう。それで山崩れとかに繋がってしまうということで。なるほど〜と思いました。木が元気かどうかは葉先でわかる。樹を逆さまにした状態が、土の中の状態と同じだ。とも言われました。樹が元気に育つ環境は、見えない土の中の環境を整えることで、多少は回復できると教えてもらいました。樹が元気なよい環境には、きれいな空気が流れて、土中を流れる水もきれいになる。人も健康で元気になるというお話には納得することばかりでした。

今年3月下旬に、『石川県能登地震から学ぶ、みどりのまちづくりシンポジウム』が開催されました。自然環境活動などをしている他の団体と一緒に共催して、自然災害に強い安全な街づくりを考え、地域で市民レベルでできることはないか、市民の意識を高めるために開催されました。将来の環境に関わる話なので、子ども連れの人たちにも知ってもらうため『木のおもちゃプロジェクトの会』も親子参加の〈木育ひろば〉を同時開催しました。

私自身が、以前よりも増して自然環境への意識が高まってきてますね。日常の安心・安全が、当たり前じゃないよというところで。私は、林業をしている訳ではないので森や自然に対して直接には、何もできないけど、身近な自然や森からいただく、枝や幹、木の実のギフトを預かって、自然環境に関わる話を伝えていくのが使命かなと思っています。

自然環境に目が向いたきっかけ

林業関係の仲間と能登の山に行った事があります。その山の所有者と一緒に歩き、『人手が無く、手つかずの森を今後どのように上手く活用したら良いか。。』という流れで仲間と一緒に視察してきたんです。その山の中は、本当に土がふわふわで水も豊富でびっくりしました。前の土中環境のお手本になるような場所だと実感しました。

山の管理の問題は、簡単には決められないですが、自然に人が介入することが、プラスになるのかマイナスになるのか。深く考える良い機会になりました。日本の豊かな自然を残し、そこに住む生き物と人とともに生きていくバランスは、本当に難しいそうですね。

森やその地域の活性化のために、人が入り出して、山に道を作り、山の土が固められて、木が弱り、森に元気がなくなってしまうことが、自然災害に弱い環境になってしまうというのも考えられる。

問題を解決するのは、簡単じゃないし、お金や時間もかかる。でも、もっと多くの人に本当のことを伝えて行きたいです。私たちが何かを自然から受け取るだけでなく、ちゃんと返していくこと。世界に誇れる日本の自然の美しさを未来に残していく活動にも貢献していきたいです。

目指しているもの(2) ~木工作家

今までは、かわいらさ、美しさ、遊ぶ楽しさなどが、【木のおもちゃ】を選ぶ基準だったのですが、最近は、森にある樹々を眺めることが多くなってきたせいなのか、やっぱり自然の形や質感に惹かれますね。

特に、必要に迫られて自分で木工ワークをするようになってきましたが、自分でワーク用の枝や幹を切るようになってから《森の声》を聴きたくなってきたんです。

生の枝や幹は柔らかくて、樹皮が手できれいに剝けるんです。樹皮から出てきた木肌がツルツルでとってもきれいなんです!! 形も様々で、そのまま木のおもちゃとして、子どもたちに遊んで欲しいなあと考えたり。安全に遊べるためには、ちゃんとヤスリやカンナをかけなくちゃとか。。

今度は、私が作り手になりたくなってしまったのです。FCWS 仲間の C さんから能登産のヒバを、 I さんから静岡産の桐を送ってもらい、それを切って塗装をせずに磨いて、それぞれの質感を大切に【木育ひろば】で使うおもちゃを作りました。木育ひろばでは、来てくれた親子さんに遊んでもらって『これいいね』『サラサラしてて気持ちいい』とか。とても好評で私も嬉しくて。。

そして、遊びながら、その木が育った土地のことや森の話、木の使われ方(机やタンス)などにも話が膨らみます。子どもたちにも身近な物がどこから来て、元はどんな樹だったのかを体感してもらえます。自分が作れるようになって、その楽しさを伝えたいっていうのがどんどん出てきましたね。

最近は、関東地域のいろんな森に行って、森の様子を見てまわることも多くなりました。森に残る自然の様子を記録して、そこからいただく、おすそ分けの枝や幹で想いを込めて作品を作りたいです。都市部に住んでいるからこそ、子どもたちに森の声を届けたいです。

森時間

私がベビーシッターとして経験してきたことが、そういった活動の根っこにあるのですが、子どもたちの成長を見ていると、本当に自然体でいることの大切さを感じています。焦らず、ゆっくりと成長を見守ることが必要だとつくづく思います。

森についても同じで、何かを急いで成し遂げようとすると、かえって自然を傷つけてしまうかもしれない。だから、じっくりと時間をかけて、あわてずに自然と向き合うことが大切だなぁって。ただし、環境の整備は急いで欲しいですが。。

森も、子どもも、良い環境で時間をかけてゆっくりと育てることが、何よりも重要だなあと思います。

森時間って本当にあるんだと体験しました。栃木県の自然の森というところ行ってきたんです。時間があんまりなかったのに、とても気持ちが良くて。
森の中で森時間にひたっちゃったんです。1時間くらいかなと思っていたら、2、3時間くらい経っていて。。あれ、もうこんな時間!って、
あわてて帰ってきました(笑)。

でも、この日〈森時間〉を過ごせた事でリフレッシュできて、忙しくても元気に頑張れました。

本当にこのゆったり時間が大事なんだろうなって。こっち帰ってきたら、あと何分とか、残り時間を数えてる自分がいて。また森に帰りたいなぁ。

Kさんの話を聴いて

入り口は子どもとおもちゃというところから始まって、自然の木のおもちゃ、木工ワークシップ、自然環境へと、楽しみながら、自然にどんどん深まってここまで来ているというお話がとてもおもしろいと思いました。目標を置いてそこに近づいていくというより、行動する中で、経験したり、人と出会ったりして、見つけていっているところがとても参考になりました。

また、元々はおもちゃで遊ぶ子どもが対象、と思っていた。でも仲間に問いをもらって、改めて考えてみると K さんの対象は親子で、親子がいっしょに遊んだり、作ったりすることでお互いを表現したり、認め合ったりするところを大事にしたいと気づいた。そのお話を聞いて、活動する中で振り返って、自分が大切にしているものを改めて発見して、次の道を考えることも大切だと感じました。

また、自然環境のお話も、実際にいろいろな山に足を運んで山自体を味わったり、ものづくりの体験を積んだり、日本全国の材を集めてそれぞれの特長を味わいながら作品を作ったりする中で、実感を持って考えられていて、手触り感、足触り感(?)をもった活動をされていていいなぁと思いました。

〇補足

(*1)FCWS (Forest Creative Women's School)
森林資源を活かした新しいモノ・コトづくりや、事業拡張に調整したい女性のためのオンラインスクール
https://m.youtube.com/watch?v=AG9VzFKWesc&list=PLdpiwGzmzDdxqYBrOLFygnJ8bXAu5Sh8l

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