GXL ボランタリーカーボンクレジットレポート
2023年末にGXリーグから「ボランタリーカーボンクレジット情報開示検討WG」の最終報告書が公開されました。
レポートの日本語版は29ページで、内容は以下の通りです。
国際的なボランタリークレジットの動向
日本企業へのボランタリークレジットに関するアンケート調査
ステークホルダーへの提言
この記事では2の日本企業へのアンケート調査の気になった箇所を挙げていきます。
*レポート内でも触れられていますが、このアンケートはGX リーグの中でも特にボランタリークレジットに興味を持つ企業を対象としている点に注意が必要です。GXリーグに参加している企業はそもそも気候変動対応について前向きな企業が多いと考えられ、さらにその中でもボランタリークレジットに興味がある企業なので、日本企業の中でも特に興味を持っている企業と思うのが良いでしょう。
ボランタリークレジットの購入を検討しているか?
9割以上が購入・利用を検討しているが、実際に購入・利用しているのは未だ3割という状況。残り1割は検討していない。ボランタリークレジットに興味があるが購入検討をしていないということは、まだ検討していないのか、興味があり、創出や流通などに興味があるが、自社では購入しないということなのでしょうか。
なぜ利用していないのか?
国際的な基準においてクレジット利用方法が不明確や我が国の利用ガイダンスがないのが理由の上位ですが、これは昨年ガーディアン紙の記事などのカーボンクレジットの批判記事が、より一層企業を慎重にさせ基準やルールの明確化を求めているのかもしれません。SBTやICVCM、VCMIなどの各種イニシアチブで、クレジットの品質や利用については方向性が明確になってきていますので、企業の理解や利用も進むと思います。
「義務市場に適格でない」というのも次いで多い理由です。炭素税やGX-ETSが検討されている中、さらにボランタリークレジットの利用というのはなかなかハードルが高いのが日本企業の実情ということでしょうか。MicrosoftやGoogle、Appleのような高収益ビッグテック企業では、SBTのBVCM(バリューチェーンの外への貢献)的なカーボンクレジットの利用ができるものの、自社のバリューチェーン内の削減で手一杯という企業が多いのだと思われます。
初期投資の懸念事項は?
これはやはり炭素が将来一体いくらになるのか?という点につきるのではないでしょうか?足元のように1 米ドル/CO2-tなのか 100米ドル/CO2-tを超えるのか?インターナルカーボンプライシングを導入している企業ですら、価格設定には難儀していると聞きます。また企業の投資判断は、NPVやIRRが重要であることが多く、いくらESG/SDGsのための投資とはいえ投資採算性を定量化しないといけないという社内稟議ハードルがあるのだと思います。