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アップデート住宅

12月11日

目が醒めると、静かに寝床から抜け出し、薪ストーブをチェックした。外はまだ暗かった。テラスドアを開けてウッドデッキに出、軒下に積んでいる薪を数本とって急いでドアを閉めた。外はかなり冷えている。
熾火の上に焚き付け用に細く割った薪を井げたに組んで置き、その上にあまり太くない薪を乗せ、着火材に火を点けた。
窓をすこし開け、空気が薪ストーブの半開きになったガラスの扉から炉内に入り込むように気を配り、炎が立ち上がるまで仄かに暖かい床に座り込む。炉内に勢いよく炎が回り始めるのを確認してから、ストーブの上にヤカンを置いた。

外が白み始めている。
すぐにシャンシャンと音を立てはじめたヤカンを持ち上げ、マグカップに白湯をそそぐ。
イスに腰かけると、そこが朝の特等席になった。

葉っぱがすべて落ちたクヌギの森の東の空がほんのりと色づいている。
小雨模様だから、これ以上の朝焼けは期待できそうにないが、木製サッシの向こうに広がる薄靄のかかった森を見ているだけで、大きく深呼吸した気分になってくる。
白湯をすすっていると、相方が何かブツブツ言いながら起きてくる。
ちっちゃい空間は一つにつながっているから、密かな行動はできない。
どうやら、薪ストーブで白湯をこしらえるといった一連の僕の動きが相方の睡眠を妨げたらしい。


この日は朝のうちにテーブルの脚を補修し、薪を数本割り、近くのコメリにシャベルを買いに行き、そのついでに湧き水をくんできた。小さな神社の下にある水汲み場には先客がいたので、その人に挨拶をし、それから水汲み場の中央に設けられた小さな祭壇にむかって二礼二拍手した。
賽銭箱に100円硬貨を一枚入れた。
ありがとうございます。ありがとうございます。
そうお礼を述べて、願い事は一切しない。

昼からは、以前家を建てた建主さんがコミュニティづくりの相談にいらっしゃった。半袖でないといられないくらいにポカポカと暖かいコヤキチの中で、窓を数カ所開けて換気しながらこれからの時代のコミュニティづくりについて語り合う。

この由布の森のような森林コミュニティができればいいですね。
と話は盛り上がった。

それから数組の方々がコヤキチの見学にいらっしゃった。
すべてSNSを見てのご来場ということで、小さなお菓子屋さんをやりたいという方や、建築中からコヤキチのことが気になっていて、工事中も時々来ていたという方もいらっしゃった。
ありがたい。
広い世界からも、この森周辺の小さな世界からも、コヤキチのことを気にかけ、ちゃんと見ていてくれる人がいるのだなあ、と感謝の気持ちで胸がいっぱいになる。

通りかかった人が興味深そうにご覧になっていたので「観ていってください、人生変わりますよ!」と笑顔で声をかけると、
見学された後に、「本当に家に対する考え方が一変しました!」とおっしゃっていただいて、嬉しかった。

コヤキチを見て、体験して、他の人がどんな感想を持つのか、
『他感を知る』思いで、その反応を見て、学ばせていただいている。

最近よく感じるのが、コヤキチの拡張性だ。
キッチン&リビングの隣りは小部屋になっているのだが、その空間を横方向に拡張するだけで収納や個室がどれだけでも広がる、という事実は、それがシンプルなだけに力強い説得力を持っている。この小部屋には、住まう人の自由意志が広がっていく余白が潜んでいるのだと確信している。

ちっちゃいは一つ、ちっちゃいは拡張する。
建坪たった7坪のコヤキチは、そんな可能性を大いに感じさせてくれる体験ハウスだ。この完成された7坪を体験した方に15坪の空間を提案すると、それはとても広く感じられる。最初からこの体験なしの方に15坪の空間を提案しても、同じ感覚を味わっていただけることは稀だろう。

そう言った意味でも、この7坪のコヤキチは、多用途な使い方にこたえる
ことのできる、これからの時代の新しいスケール感にアップデートされた、
生き方を限定しない小住宅の走りなのだ。

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桑原あきら
「小さな居場所」づくりを啓蒙するセミナーを全国で展開しています。