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高潮とうねりをマスター!【第59回-専門-問12 気象予報士試験の解説】

第59回気象予報士試験の専門知識を解説していきます。
全ての記事を無料で公開します。
1人でも多くの人に、気象について興味を持ってもらえたらうれしいです。


問題

問12 日本に影響を及ぼす台風によって発生する災害について述べた次の文(a)~(c)の正誤の組み合わせとして正しいものを、下記の①~⑤の中から1つ選べ。

(a) 台風が沿岸に接近する際には、気圧の低下によって海水が吸い上げられる効果(吸い上げ効果)や、強風が岸に向かって吹いて海水が岸に寄せられる効果(吹き寄せ効果)、波浪が沿岸に到達してくずれる砕波による効果(波浪効果)などにより、沿岸で潮位が上昇する。

(b)台風が日本のはるか南の海上にある場合でも、台風によって発生した波がうねりとなって日本の太平洋沿岸まで伝わってくることがある。うねりは水深の浅いところでは風浪よりも海底の影響を受けやすく、海岸付近で急激に高波になることがある。

(c)高潮が河口から河川を遡り、被害が発生するおそれがある場合、海岸から離れた地域に対しても高潮警報や高潮注意報が発表される。

(一財)気象業務支援センターの掲載許可済

(a)台風で潮位が上昇する要因 → 正

(a) 台風が沿岸に接近する際には、気圧の低下によって海水が吸い上げられる効果(吸い上げ効果)や、強風が岸に向かって吹いて海水が岸に寄せられる効果(吹き寄せ効果)、波浪が沿岸に到達してくずれる砕波による効果(波浪効果)などにより、沿岸で潮位が上昇する。

(一財)気象業務支援センターの掲載許可済

問題文のとおりです。
すみません。私、気象予報士ユキは、
かろうじて正解でした。

台風が接近する際は、高波へ警戒するよう呼びかけられますが、
なぜ高波は発生するのでしょうか?

もっともわかりやすいのは、
強い風が海水を岸にぶつける、吹き寄せ効果だと思います。

また、大気の気圧が低下することで、
押さえつけられていた海水が吸い上げられる、
吸い上げ効果もあります。

さらに、波が岸にぶつかって砕ける、
波浪効果もあるようです。

私は、この波浪効果について自信がありませんでしたが、
「そんなのもありそうだな」と思い、正としました。

(b)海底の影響を受けるうねり → 正

(b)台風が日本のはるか南の海上にある場合でも、台風によって発生した波がうねりとなって日本の太平洋沿岸まで伝わってくることがある。うねりは水深の浅いところでは風浪よりも海底の影響を受けやすく、海岸付近で急激に高波になることがある。

(一財)気象業務支援センターの掲載許可済

問題文のとおりです。
まずは、前段を確認しましょう。

台風によって海では、風浪とうねりが発生します。
それぞれ、どう違うかというと…

■風浪とうねり
 風浪とは、文字通り風によって生じる波のことをいいます。うねりとは他のどこかで風浪が発生して、その波が他方へ伝わったものをいいます。風浪は風によって生じた波、うねりは伝わってきた波といえば明確でしょう。海上の波は風が0m/sでない限り、風浪とうねりの合わさった合成波高です。

(出典1:気象予報士試験受験支援会 [2012]2020:100)
風浪とうねりのイメージ(出典2)

このように、台風が日本よりも遠い場所にあっても、
台風付近からうねりとして波が伝わってくることはあります。

次に後段を確認しますが、
正直、ここはカンでもやむを得ないと思います。

例えば、海底の深い沖合で発生したうねりが、
岸に近づいて海底が浅くなることで、うねり全体が上昇し、
急に波が高くなりそうといった理解レベルでいいでしょう。

このあたりどうしても気になる方は、
浅水変形で調べてみてください。

(c)高潮警報等の発表方法 → 正

(c)高潮が河口から河川を遡り、被害が発生するおそれがある場合、海岸から離れた地域に対しても高潮警報や高潮注意報が発表される。

(一財)気象業務支援センターの掲載許可済

問題文のとおりです。
私は、洪水警報が発表されるのではないかと思い、
間違えてしまいました。

気象庁の報道発表資料によると、
2022(令和4)年から、
高潮警報が一部の内陸市町村にも発表されるようになりました。

(出典3)

例えば、東京都新宿区における警報発表基準(気象庁HP)を参照しましょう。
すると確かに、新宿区は内陸部にもかかわらず、
辰巳水門(東京都江東区)の潮位を考慮して、
高潮警報を発表することがある旨、記載されています。

うーん。問われている知識がちょっと細かいかな…
この問題を正解するには、最近の時事ネタを
くまなくチェックしておきたいですね。

まとめ

以上の検討を踏まえると、解答は①です。

いかがでしたか?

私、気象予報士ユキは、この問題は正直自信がありませんでした。
今度、波浪に関する記事を書いてみようと思います!

出典など

出典1:気象予報士試験受験支援会,[2012]2020,『らくらく突破気象予報士かんたん合格テキスト〈実技編〉』技術評論社
出典2:「気象庁 | 波浪の知識」(https://www.data.jma.go.jp/kaiyou/db/wave/comment/elmknwl.html)から抜粋して作成
出典3:「気象庁|報道発表資料 今出水期から行う防災気象情報の伝え方の改善について」(https://www.jma.go.jp/jma/press/2205/18a/02_betten.pdf)から抜粋して作成

※ 本記事における解答や解法は、個人の見解であり、(一財)気象業務支援センターとは関係ありません。