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湿潤層の位置を25字で作文!【第59回-実技1-問1(3)③ 気象予報士試験の解説】

第59回気象予報士試験の実技1を解説していきます。
全ての記事を無料で公開します。
1人でも多くの人に、気象について興味を持ってもらえたらうれしいです。

問題

(3) 図4には華中から東シナ海にのびる停滞前線の転移層がみられる。このことに関連して、以下の問いに答えよ。

(一財)気象業務支援センターの掲載許可済

③ 図4を用いて、福岡上空の雲に対応すると考えられる湿数3°C以下の湿潤層と、停滞前線の転移層との関係を25字程度で述べよ。

(一財)気象業務支援センターの掲載許可済
(一財)気象業務支援センターの掲載許可済

何が問われているのか

こちらの記事(第59回-実技1-問1(2))でも述べましたが、
記述問題のポイントとして、次の点があります。

1.ビビらない。図に書いてあることを読み取るだけ!
2.何を問われているのかを明らかにしてから、図を観察する!時短。
3.解答文には、主語を忘れずに!何がどこにあるの?

気象予報士ユキ(第59回-実技1-問1(2))

漫然と図を見たり、作文し始めたりするのではなく、
まず、何が問われているのかを明らかにしましょう!

今回は、

  • 福岡上空に関する状態曲線(図4)をみて、

  • 湿数3°C以下の湿潤層と、転移層の関係を、

  • 25字程度で述べよ

ここでの「関係」とは、2つの層の「上下位置の関係」
すなわち、「AがBの上に分布している」的なものでいいでしょう。

露点温度って?

皆さま大丈夫かと思いますが、
学科一般知識の教科書を開いて、露点温度を復習します。

露点温度〔℃〕とは、圧力一定の下で未飽和の湿潤空気の温度を下降させて水蒸気が凝結を始めるときの温度をいいます。

(出典1:気象予報士試験受験支援会 2019:50)

圧力一定(空気を上昇・下降せず)の状態で、空気の温度を下げていくと、
目に見えなかった水蒸気が水滴へと凝結をはじめます。

例えば、冷たいビールのジョッキや、冬の列車の窓ガラスには、
水滴がつきます。
これは、ジョッキや窓ガラスに小さな穴が開いていて、
ビールや列車外の雪がしみ出てきたわけではありません。

  1. ジョッキや窓ガラスがあまりに冷たいので、

  2. それらの周辺にある空気が冷やされ、

  3. 空気が露点温度を下回り、

  4. 空気に含まれていた水蒸気が水蒸気でいられなくなり、

  5. 水滴へと凝結します。

そして、

露点温度は空気中の水蒸気量に依存し、空気中の水蒸気が多いときは高く、水蒸気が少ないときは低くなりますから、低圧のもとで水蒸気量が変化ないときは気温が変化しても露点温度は一定です。

(出典1:気象予報士試験受験支援会 2019:50)

水蒸気が多いときは、ちょっと温度を下げただけですぐ飽和し、
水蒸気が水滴にどんどん変わります。

したがって、水蒸気が多いときは露点温度は高くなります。

湿数とは

今回問われている湿数(しっすう)についても、復習しましょう!

湿数とは気温と露点温度の差をいいます。単位は慣例的につけないことも多いのですが、付加するときは〔℃〕となります。
例えば、気温が20℃、露点温度が15℃のときは湿数は、湿数=気温-露点温度となり、5℃となります。湿数は値が小さいほど空気が湿っていることになります。

(出典1:気象予報士試験受験支援会 2019:50)

湿数が小さいほど、気温は露点温度により近いです。
つまり、その空気は飽和に近く、湿っています。

そして、湿数が3℃未満の空気が存在するエリアを湿潤域といいます。
湿潤域には、雲が発生していることが多いとされています。

気象庁の高層天気図AUPQ78(750hPaと850hPaの実況)にも、
湿数3℃未満の湿潤域がドットで示されています。
(参考)高層天気図はこちら(気象庁ホームページ)

850hPa高層天気図(2023/12/16 21時:出典2)
日本海北部に低圧部があり、湿潤域が南西及び東に広がる

位置関係を作文しよう

今回は、湿数3℃以下の湿潤層と、
①で確認した転移層の位置関係を問われています。

①の解答のとおり、転移層は、福岡の上空630hPa~650hPaにあります。
(参考)①の解答はこちら(第59回-実技1-問1(3)①)

そして、湿潤層は、図4をみると、630hPaのさらに上層にあります。

参考までに、転移層の下には、湿数が大きく(気温と露点温度が離れている)、
乾燥した空気層が広がっています。

したがって、次のとおり書けます。
湿潤層は転移層から上層にかけて分布している。

!何が、どこにあるのかをはっきり書きましょう!

まとめ

いかがでしたか?(*'ω'*)

記述問題でしたが、状態曲線から読み取れることだけを書けばいいので、
たいして難しくはないと思います。

ただ、
露点温度ってなんだっけ?
湿数って大きいとどういう意味なんだっけ?
と本番にならないよう、学科一般知識も復習しましょ!

出典など

出典1:気象予報士試験受験支援会,2019,『気象予報士かんたん合格テキスト〈学科一般知識編〉』技術評論社
出典2:気象庁「aupq78_12」
(https://www.jma.go.jp/bosai/numericmap/data/nwpmap/aupq78_12.pdf)から抜粋して作成

※ 本記事における解答や解法は、個人の見解であり、(一財)気象業務支援センターとは関係ありません。