【読書メモ】風姿花伝・花鏡
風姿花伝・花鏡 世阿弥 小西甚一編訳 2020.4
600年前、室町時代の『能』文学を子孫に相伝した「秘伝の書」。
「秘伝書」…実世界でそんなものが簡単に購入できるなんて。
ゲームや漫画の世界でしかお目にかからないものかと思っていたものが、先人方の研究や経済発展により、文庫本で簡単に手に入るようになった。
有難し。感謝です。
昨年、複数人から世阿弥の話を聞いたので読んでみた。
正直、面白いかは分からない😅。
けど、先人に教わるところが多々あり。
一度は能を見てみたくなる。
メモを作るために4回くらい読み直す羽目に。
古典を真面目に勉強しておけば、もうちょっと理解度や臨場感も違うのかな。(口語訳はついてます)
まとめ
☆初心忘るべからず。花は心、技は種。
時々の人の好みを選び分ける心を持ち、また、稽古を重ねて身につけた芸の数々を、いつでも使えるようにしておくこと
要点
□稽古
原義は「昔を考える事」。先人の教えに基づいて学修するの意。
□温故知新
古きをたずね新しきを知る もって師なるべし
□「花」
優雅さ、幽玄、新鮮さ、おもしろさ
※多用されるが明確な定義難しい
□ただ、花は見る人のこころに珍しきが花なり
その時々の好みを察し、人が新鮮と感ずるところを心得ること
□「初心忘るべからず」
世阿弥が作った言葉
是非の初心忘るべからず
時々の初心忘るべからず
老後の初心忘るべからず
実は3つある。
□向上について自覚反省を持つこと
出来なかった、知らなかった時分を覚えておき、稽古を重ねてできるようになった過程を覚えておき、身につけていつでも使えるようにしておくこと
奥義のひとつ
□現在もひとつの初心、老後には老後で、その時に初めて習う初心がある
□「芸の底を見ないで生涯を送る」
奥義
極めきることはないということ。
分かっていると思っているものも、また知らないことがあり、底を見ることなく、稽古に励むこと。
□まことの花は、咲く道理も散る道理も心のままなるべし。
学びつくす心が花の種なり。
花はこころ、技は種なり
□目前心後
心を後ろに置いて、すなわち離見の見を持って観衆と同じ目で自己を眺める
「俯瞰」と同義か。
感想など
■現代は「最初の決心を忘れない」みたいな意味で使われる事が多いが、世阿弥の言う初心とは、「未熟だった時期と成長過程を忘れない」、というような意味で使われている。
この考え方は、能を超えて人の生き方に共通する真理だと思う。
勉強する、試合する、習いごとをする。
子ども達が当たり前のようにやっていることは、人が成長するための訓練のようなものに見える。
「未熟だった」「できかった」ときの自分と、今の自分を比べて、どれだけ成長したか、どうしたら更に成長できるか、比較し工夫すること。
生涯通じて忘れてはならない。
■忙しさにかまけた「やっつけ仕事」は、すぐに忘れてしまって身についてない。
自分の引き出しに入れて、いつでも使えるようにしておく、というのは現代の仕事でもなんら変わらない。
業務は達成して、その時はそれで良いが、自分の芸(能力)としては、まさに時間の無駄遣い。
種(技術・能力)がなければ珍しき花(新しいアイデア・イノベーション)が咲くこともない。
初心忘るべからず。よくよく覚えておく。
■花=新鮮さだが、奇をてらうではない。
周囲が珍しさを当たり前に感じるようになれば花を失うことになる。
引き出しの多さ(種)と、使うタイミングを心得る(心)が極意。
つまり、「誰も気付かなかったもの」である必要はない、ということなんだろうな。
■離見の見(りけんのけん)を持って自己を眺める
自分を背後から見るように。
住む人、使う人と目線を合わせて、自分勝手な思い(面倒とか)が働いてないか、大衆の思い(地域、世論)と合っているか、よく感じながら道路設計やまちづくりをすること。
■能の全盛期の頂点は34〜35歳。
その後は歳と共に花が消えてゆく事を自覚して、良い助演者を得る。
能で言えば、自分はもうピーク過ぎたのか。
今後の進む道と、育成を考えないといけない。
■「きざし」がある。同じ事しても時に成功し、時に失敗する。
「善悪に別はなく、邪正は同じ」
地域だったり、タイミングだったり、当時の人だったりで、良いものでもダメな時がある。
時と場合によってうまく適合するものが善い、そうでないものを悪い、としているに過ぎない。
⇒失敗の原因は何だったんだろう。
計画そのものに間違いがあるのか、きざしを捉えられなかっただけなのか。
タイミングや人、話し方を変えたら、ダメだったものが良かったものに変わることがある、ということをよく覚えておこう。
■常にいつの時代でも、奢らず、謙虚で、ひたむきに。
■「秘伝の書」と言っても、ゲームのように突然レベルアップしたり、クラスチェンジするわけではない。読む前と読み終わった後で、何も変わらない事を自覚しておく。技を極めるに近道はなく、稽古に励むほかはないということ。ただし、近道はないが、遠回りしない道標になる。
■花鏡奥の段、「能を知る」と「老後の初心」は忘れずに引き出しに入れておく事。覚書