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称賛は本当に成果につながるのか?

昨日まではエンゲージメントの【5C】のコラボレーション、強みを活かして協力するチーム、についてご紹介しました。


本日は5つ目のC、セレブレーション(称賛)についてお伝えします。

人を成長させるときに、褒めて育てるか、反骨心を煽るか、どちらがより効果的か部下のいる立場だと、迷いますよね。

今回はアメリカで最も有名なスポーツであるアメリカンフットボールの名将トム・ランドリーの逸話をご紹介します。

名将による称賛エピソード

トム・ランドリーが活躍したのは1960-80年代、少し昔のお話です。


多くのチームがタックルの失敗や落球シーンなど、うまくできなかったシーンを振り返って次のプレイの反省材料にするという振り返りが主流だった時代、

トムは選手達が自然に有効なプレーをしたシーンを集めて、一人一人のためにハイライト集を作りました。


実は、真に優れたプレー中は選手はフロー状態に入るので、自身に良いプレーをした自覚がないことも多いそう。

それに気づいていたトムは、選手の良いプレーをビデオで振り返ることで、無意識で行なっていたプレイを意識下に上げるように促します。

それにより、選手たちは自信を深めるだけでなく、自身の長所を磨く方法を自分で考えるようになりました。


同時に優秀なプレイに惜しみない称賛を与えることで選手たちに「優れた仕事をすれば必ず褒められる」という体験を提供し、称賛のカルチャーを定着させたそうです。


ちなみに、トムが率いたダラス・カウボーイズは、20シーズン連続の勝ち越し、2回のスーパーボウル制覇、最盛期には3シーズン連続でスーパーボウルに出場し、アメリカを代表するチームと呼ばれました。

上司の対応とエンゲージメント

トムは称賛の文化をチームの基盤に置きましたが、厳しいフィードバックをの文化のもとで、部下たちはどんなエンゲージメントを示すのでしょうか?


アメリカの調査会社、ギャラップは「上司の対応によるエンゲージメントへの影響」の研究を行いました。


「部下を無視する上司」「ネガティブなフィードバックをする上司」「ポジティブな注目を与えた上司」がそれぞれの部下のエンゲージメントに与える影響を調査したのです。

「部下を無視する上司」の元だと、【エンゲージメントを高く保てる人1人に対して、エンゲージメントが低いメンバーが20人】という比率になることがわかりました。


また、
「ネガティブなフィードバックをする上司」の元だと、【エンゲージメントを高く保てる人1人に対して、エンゲージメントが低いメンバーが2人】になることがわかりました。

最後に「ポジティブな注目を与えた上司」の元ではどうなったでしょう。

【高いエンゲージメント60人に対し、低いエンゲージメントが1人】と、エンゲージメントの高い人と低い人の数が、大きく逆転することがわかりました。まとめると以下の図になります。

シカト上司はネチネチ上司の40倍嫌われる?

この結果から

無視<ネガティブフィードバック<ポジティブ注目


の順にエンゲージメントに効果があることが明らかになりました。


つまり、ネチネチ上司はシカト上司よりも40倍マシ、

ポジティブ注目上司はシカト上司の1200倍、部下のエンゲージメントにポジティブな影響を与えます。


このことから、人間にとっては無視が一番良くないということがわかります。

私たちは、パチパチとパソコンを打ちながら部下の報告を聞き流してる場合ではないのです。そんなことしてたら、愛想のいい隣の部署の管理職や、前任者と比べて1200倍嫌われます。

そしてこの研究の結果から、人がフィードバックを欲しがるというのも嘘だということがわかります。人が欲しいのは厳しいフィードバックではなく、ポジティブな注目です。


部下が欲しいのは「フィードバック」より「注目」

ここで重要なのは「ポジティブなフィードバック」ではなく「ポジティブな注目」でいいということなんです。

ポジティブな注目って何かというと、SNSで考えたらわかりやすいのですが、コメントまではつけてもらわなくてもいいということ。

「いいね!」さえ押してくれれば、大半の人間はそれで大満足ということを意味しています。

なぜなら、称賛って、結構難しいからです。


「私、不器用ですから」のように褒めるのが照れくさいとか、苦手とかそういう意味ではありません。

称賛はわかりやすい結果や行動が伴った時に初めて実行するチャンスが訪れるものです。つまり、称賛に値する行動が取れない部下には、称賛するチャンスが訪れないのです。

管理職研修でよく「褒めるワーク」をやりますが、褒める言葉、出てこないというケースが多いです。わかりやすい結果や行動がないのに、褒めるって訓練してないと、結構難しいんですよね。

突出する結果がないために、声をかけるタイミングが訪れない、だから離れてそっと見守るだけなんてことも多いのではないでしょうか。

注目を怠るリスク

しかし、注意してください。こういった状態が長く続く部下は「自分が特別でありたい」という気持ちから、問題行動を起こす可能性が高まることがわかっています。

中2のヤンキーが、スポーツや勉強では目立てないから、授業を妨害したり、万引きして、良くない方向で注目を集めようとするのと同じメンタル構造です。無視されるよりはマシだと考えちゃんですね(本人は意識してないことも多いですが)。

だからこそ、「注目」が大事なんです。称賛すべき事がなくても注意を払っているということを部下に感じてもらうことで、エンゲージメントを高く維持してもらう事ができることを、ギャラップの研究は示しているのです。


このことは上司にとっても救いになると思いませんか?いちいち「何か言わなければ!」とポジティブなセリフを捻り出さなくてもいいということです。

「やってるね!」「がんばってるね!」「いいね!」とスタンプを押すような感覚で接しているだけでも、部下のエンゲージメントに良い影響を与えることができるということです。

そして、最も日常で自然に、気軽にできる注目とはなんでしょう???
それこそが「挨拶」です。

「おはよう、今日も早いね。」「お疲れさん、遅くまでがんばってるね。」何気ない挨拶の中には相手に対する注目や気遣いが溢れています。


「パフォーマンスがいいから称賛する」のは勿体無い

ところで、
「パフォーマンスがいいから称賛する」のか?
「称賛するからパフォーマンスが上がる?」のか?

どちらが正しいのでしょう?


鶏と玉子のように、どちらも正しいといえますが、実は研究では、後者の方が前者より4倍相関が強いということがわかっています。


つまり、良いパフォーマンスは「称賛をすることにより生み出す」ことができるということです。

長い経験で前述の名将トム・ランドリーはそのことを直感的に知っていたのかもしれませんね。

ということで、この記事を読まれた方はぜひ「スキ」をお願い致します笑!

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