部下にプレッシャーをかけるのはよくないことか?
昨日までは、称賛や注目に関する力についてお伝えしました。
こちらの記事には、
という内容を紹介しました。
わたしが企業研修で上記の内容を紹介すると、受講生である管理職の皆様は「なるほどー、褒めて育てるのがやはり教育の主流なのだな、そうだよなー、やっぱ、今どきそうだよなー。」
と理解を示してくださる反面、
「本当に褒めてばかりでいいのでしょうか?相手のことを考えると、時には厳しく接する必要があるのではないでしょうか?実際そうしないと、部下への示しがつかないこともあります。現実的な考えではないように思えます?」
と、不安を感じられる方も少なくないようです。
本当に褒めて甘やかすことだけが教育なのか?辛いことに歯を食いしばって乗り越えることにビジネスの意味はないのか?人はプレッシャーがあるから頑張れることもあるのでは?
そんな考えだって、正しく思えます。
ではどうすればいいのでしょうか?本当にプレッシャーはかけてはいけないものなのでしょうか?
今日は「上司はプレッシャーをかけるべきか、そうでないか?」について考えます。
皆さんがラグビーの監督だったら?
皆さんに質問します。皆さんが、以下の状況ならどうしますか?
さあ、あなたはどんな声をかけますか?チームを引き締めるために叱りますか?それともソフトにアプローチにしますか?
…
…
…
状況による、と判断した人、大正解です。
もちろんそうですよね。
では、「状況による」と考えた方への質問です。
「あなたの対応を分ける判断基準はなんでしょうか?どんな時は叱り、どんな時はソフトにアプローチするのでしょう??」
…いざ考えると、難しいですよね。
かつてラグビー日本代表を世界に戦えるチームに成長させ、今年8年ぶりに日本代表のヘッドコーチとして戻ってきたエディ・ジョーンズは、こう判断するそうです。
私はこの回答を初めてみた時に、目から鱗が落ちました。
相手に残されたエネルギーによって、対応を変えるということですね。
ヤーキーズ・ドットソンの法則
パフォーマンスとストレスの関係を扱った研究で有名なのが、1908年のヤーキーズとドットソンの研究です。
彼らが行った実験の結果では、ストレスが低すぎても、ストレスが低すぎても高すぎてもパフォーマンスは上がらず、パフォーマンスが最も上がるのは適度なストレスに晒された時だということがわかっています。
これをヤーキーズ・ドットソンの法則といいます。
また、フロー状態で有名なチクセントミハイも、人間がフロー状態に入るのは、「能力」と「難易度」が釣り合った時だと言っています。
「能力」に対して「難易度」が高すぎると【不安】になり、「能力」に対して「難易度」が低すぎると【退屈】になる、ゆえに最もパフォーマンスが上がるのは、「能力」と「難易度」が釣り合った時だということです。
つまり、部下のパフォーマンスをあげようとするなら、プレッシャーをかけ、適度なストレスを与えた方がいいということです。
なぜプレッシャーがパフォーマンスを上げるのか?
実は、人間はプレッシャーをかけられると、アドレナリンやノルアドレナリンが体内に放出されます。
これらはいわゆる「火事場のバカ力」を生むホルモンでもありますが、同時に出過ぎると、過剰な興奮や恐怖、不安、焦燥を生むホルモンでもあります。
目先のピンチを爆発的な力で乗り越えたい時のカンフル剤として、非常に有用ですが、かけすぎると、体が慣れて麻痺して次第に効かなくなりますし、ストレスに耐えきれなくなると問題行動につながります。
このことから、ストレスは筋トレと同じく、かけた方が成長するけれども、ストレスの程度や与え方にコツが必要、ということがいえます。
プレッシャーの功罪
ここまでを整理すると、称賛や注目はパフォーマンスを上げるが、一方で、ストレスだって、パフォーマンスを上げる、ということがわかりました。
しかし、ストレスには、相手のパフォーマンスを下げ、やる気を奪い、混乱を助長するリスクもあります。
エディ・ジョーンズがいうように、「相手にプレッシャーに耐えるエネルギーが残されているか」を、見極める、という前提を肝に銘じることが必要です。
では、どんな時にどんな種類のプレッシャーをかけるのが、適切なのでしょうか?
フィットネスのトレーナーは、相手に応じた適切な負荷の掛け方やトレーニングを熟知しています。現場の管理職も、部下への適切な負荷のかけ方を知っておいた方が良さそうですよね。
次回はビジネスのマネジメントにおいての「適切なプレッシャーのかけ方」について考えます。