共感される目標の作り方②
前回に引き続き、エンゲージメントのコモンパーパス&コネクトについてお伝えします。
↓↓↓前回
コモンパーパスの発見の仕方
①理念を具体化していく
チームのみんなとコモンパーパスを発見するための手順をご紹介します。
やり方や手順には色々ありますが、前回お伝えしたように、とっかかりは自社の理念を切り口に考えてみるのが良いと思います。
「理念を自分の部署で具体的に体現できるとしたらどんなことが考えられるますか?私たちの役割の中でどんなことが達成できたらいいでしょうか?どんな商品だと理念を体現してるといえますか?どんな売り方なら?」など
理念を具体的するとしたら…をきっかけに考えるところから始めるのがスタンダードですね。
以前出てきた事例で「最高の結婚式を会社が追い続けるなら、星ヶ丘のメンバーが望む最高は何か?どんな商品だとふさわしいか?売り方は?」みたいなところから広げていったのと同じですね。
他にも「今の理念に共感してるところは?」をメンバー一人一人に1on1で確認するのもきっかけとしてはいいと思います。共感してるところやその理由の中に、メンバーのやる気を向上させるヒントが隠れているので、その中から共通項を見出せればコモンパーパスの種として活用できるからです。
②チーム目標の共感ポイントから始める
星ヶ丘の場合は理念にある「最高の結婚式」を星ヶ丘にマッチする形で具体化していきました。この理念の具体化パターンも有効ですが、うまくいかない場合は、今あるチーム目標の意味づけをポジティブなものに変換する方法もあります。
「この目標が少しでも自分にポジティブな意味をもたらすとしたらどんなことが言えそう?」とか「この目標が達成できた時に、自分やチーム、会社やお客様にどんなポジティブな影響がありそう?」とか、「あるとしたら」の仮定の元、チーム目標のポジティブなところをみんなでブレストするという方法です。
定量でしかない目標の背景や達成した時に起こると嬉しいことをみんなでイメージすることで、意味づけを変えれないかと試みる方法です。定量目標の意味をみんなで後付けで考えてしっくりくるものや力が入るものがないか探すというパターンですね。
自己理解と目標理解で重なりを発見する
①も②の進め方はイメージで言うとこんな感じです。
理屈で言うと、「メンバーの価値観」と「目標」の重なりの部分に共感が生まれます。しかし何もしなければ、価値観(青く塗りつぶした丸)と目標(黄色く塗りつぶした丸)には重なりが発見できません。
質問が自己理解を深める
しかし、あなたが質問をすることで、メンバーは自己理解を深めることができます。
「仕事で楽しいことは?」と聞かれ
「帳票と在庫が合うのは好きかなあ…」
「エクセル好きかなあ」
「デザインするのも意外と好きかも」
など「こんな自分」や「あんな自分」ついて新しい発見を繰り返すことで、青い丸で表現されるの部下の価値観領域は拡大していきます。
目標理解を深める
一方、理念を具体化していくプロセスで、「なぜその理念や目標を目指す必要があるのか?」「理念や目標を達成することはチームや会社にどんな意義があるのか?」「理念や目標を達成したら顧客や社会にどんな影響があるのか?」などを質問していきます。メンバーの目標に対する意義や理解が深まると、黄色の丸が広がります。
自己理解と目標理解の深さがコネクトを生む
自分が大切にしている価値観と重なる目標は、当然意味づけしやすく、やる気も出ます。
ですので、管理職は部下の価値観や強みを質問や提案で自覚させることで、メンバーの目標に対する意味づけを変えることができます。
以下は有効な質問の一部になります。
参考にしてみて下さい。
それでもイマイチな目標しか発見できない時の第3の手法 ソーシャルコモンパーパス
上記を探って、何も出そうにない場合や、意味づけとして少し弱いものしか出てこない場合の第三の方法は、「ソーシャルなコモンパーパス」から攻めるというパターンです。
先述したSさんのワクチンのストーリーでは、携帯電話ショップのスタッフが携帯電話を販売するたびに、恵まれない貧困国の子供にワクチンを寄付するというアイデアにスタッフ一同が熱狂した結果、売り上げで全国一位に輝区というサクセスストーリーでしたが、このパターンは本業の理念とは直接関係ない、ソーシャルなコモンパーパスが機能した事例ともいえます。
Sさんの事例だけでなく、ソーシャルな企業として有名なアパレルブランドのパタゴニアも「私たちは、故郷である地球を救うためにビジネスを営む」と謳い、売上の1%を寄付に充てています。
アメリカで「最もイノベーティブな企業」と評価されたワービーパーカーはメガネのD2C企業ですが、彼らは「Buy a pair, Give a pair」というスローガンで、自社のメガネが一つ売れたら、発展途上国へメガネを配布するという活動をしています。
(ワービーパーカーによると、メガネを使う必要があるのに、手に入れられない人は世界で10億人に登るそうです。)
え、、そんな自社に関係ないことでもいいの??という意見もあるかもしれませんが、ソーシャルコモンパーパスは企業理念よりもう一段上の、地球市民としての理念と解釈するといかがでしょう?
企業より上のレイヤーの地球人類にとってのコモンパーパスと考えるのであれば、ソーシャルコモンパーパスは全ての企業、全てのチームで適応可能だと考えることができます。
自社の理念よりもソーシャルな理念の方がメンバーの共感を得られるのであれば、アリだと考えるのも一つのアイデアですよね。
自分たちに権限がないことが出てきたら
一通りアイデアが出てきたら、自分たちに権限があることとないことに分けましょう。権限がないことは一旦傍において、出てきたアイデアの中から、自分たちが実現できることから始めましょう。
お客さん目線での検証を忘れない
コモンパーパスを設定したとしても、それは仮決めです。チームのコモンパーパスがお客さんのニーズに沿っているかも超重要です。チームメンバーが共感できるコモンパーパスができたとしても、お客さんが同じように共感してくれるとは限りません。
(※ちなみにあなたが間接部門であればお客さんに当たるのはあなたがサポートする部門の社員と読み替えてくださいね。あなたの仕事の価値の対象をここではお客さんと表現しています。)
だから、メンバーが望むコモンパーパス「候補」の中から、お客さんにも気に入ってもらえるものを選ぶ必要があります。
星ヶ丘の事例では、「親に感謝を伝える」というニーズに関しては、ゼクシィの顧客クラスター分析で一定のニーズや市場があることを確認していました。
私も営業に出ることが多かったので、名古屋の女性が、母親と仲が良く、母親も結婚式に対して大切に考えている方が多い傾向であることも肌感でわかっていました。
この辺りはマーケティングや営業のセンスも必要なのですが、コモンパーパスを立てた後には、そのコモンパーパスにお客様(自分のチームが間接部門なら関連部署)も同じように共感してくれるそうか、のリサーチや検証は必須です。現場で扱うコモンパーパスは「戦略」に近い要素も含んでいます。
外したらどうすればいいのか
やり直せばいいだけです。自己理解や目標理解の深さが足りないと接点が見つけづらくなるので、接点が少なかったり弱かったりする場合は自分たちの価値観や目標に対する掘り下げをさらに進めてみましょう。
また、根本を変えなくても、表現や切り口を変えれば、スタッフにもお客様に受け入れられるケースもあります。しっくりくる表現も大切なので、掘り下げと表現と2軸で検証と調整を繰り返しましょう。