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切り替える強さ ~Part 2~

私には気持ちの切り替えが天下一品なおばあちゃんがいる

おばあちゃんは老人向け携帯を駆使し、私とEメールのやり取りが出来る

ある日おばあちゃんから一通のメールが届いた

仏壇を返すことにした

私はおじいちゃんとおばあちゃんにとって仏壇がどういう存在が知っている

おじいちゃんとおばあちゃんの家に行くと、まず仏壇に手を合わせる、お土産はまず仏壇に供える習慣が私にも染み付いていた

それほど仏壇は我が家で存在を放っていた

おじいちゃんは毎日お水とご飯を供え、毎日お経を唱えていた

私は寂しい気持ちになった
あの時が仏壇に手を合わせた最後になるなんて……と8月のお盆を思い出した

事の重大さを感じ、メールでの返信ではなく、おばあちゃんに電話することにした


単刀直入に仏壇を返すに至った経緯を聞いた


私はなんの前触れもなく、急に決めたと思っていたが、実は何年も前からおじいちゃんと話し合っていたらしい


自分たちが死ぬ前に、自分たちの手で片付けたかったらしい


何ともセンチメンタルな気持ちになる
おじいちゃんとおばあちゃんは91歳だ
密かに終活をしていただなんて……

おばあちゃんは色んな気持ちになって、涙が止まらなかったと言った

私は うんうん と話を聞き、仏壇を引き取ってもらうために払った費用などディテールにも耳を傾けた


30分くらい話を聞いても、おばあちゃんのマシンガントークが止まらなかったので、悪いが良きところで電話を切らせてもらった

そして私は眠る前までずっと仏壇のことを考えていた



後日、母と合った時に仏壇の件でおばあちゃんと電話したことを話した


おばあちゃん、涙が止まらなかった と言ってたよと

すると、母は食い気味で ほんまにたいへんやってんから と息を巻いていた

どう大変だったかというと、仏壇を引き取ってもらった瞬間、おばあちゃんは仏壇があった空のスペースをメジャーで測れと母に言いつけたとのこと

どうやら仏壇スペースにハンガーラックを置くことを夢見ていたらしい

なんと……



おばあちゃんは今すぐニトリに連れて行けと母に懇願し、母はただでさえ仏壇の引き取りで疲れていたのにニトリまで91歳を連れて行くことになった


帰宅後すぐに、持ち帰ったハンガーラックの組み立てを娘婿に命令し、おばあちゃんのハンガーラック計画は一日にして叶った


涙はどこへ言ったのだろうか

何だったら、スペースが出来て ラッキー くらいである

むしろハンガーラックのために、仏壇を引き取ってもらったのではないだろうか

終活はまだしないようだ


まったく今を生きるを体現しているし、期待を裏切らない


まさに人生は綱渡り

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