【学つぶ #8】心のバケツを溢れさせよう
どうも、主任やまもです。
幼稚園教諭をしたり、大学で講義をしたり、主任やまもの園内研究室を運営したりしています。
「学びのつぶやきプロジェクト」というのをゆるゆると進めております。新任の保育者や実習生に伝えたい言葉をツイートから探していく企画です。
最終的に冊子になればいいなと思っています。
前回の解説はこちら
学びのつぶやき解説
本日のつぶやきはこちら。
佐々木正美さんの言葉です。
佐々木正美さんの紹介を少ししておきますと、児童精神科医の男性です。自閉症の方のための支援プログラムTEACCHをアメリカから日本に持ってきた人です。
あとは著書「子どもへのまなざし」があまりにも有名ですね。
表紙を見たことがない保育者はいないほどです。
私は大学時代には出会えませんでしたが、職場に後輩が入ってきた時に「講義で使った」と紹介してもらいました。その後輩のゼミの先生の追っかけをしていた時期でしたので、すぐに買って読みましたね。けっこう分厚いです。
中身はスキルではなく、保育者の心持ちについて書かれていた印象があります。私は多くの言葉が心に刺さりながら、うんうんと頷きながら読んだ覚えがあります。職場の信頼している後輩にも勧めました。
この本、私は若手の期間に読むことをおすすめします。
なぜなら、ある程度の現場経験を積むと「そうは言っても、現場はそんなに余裕ない」となってしまうからです。そうなる前に、子どもと相対する大人として基盤をこの本でつくるべきです。
…と、前置きが長くなりました。
ツイート解説にいきましょう。
発育の4原則と成長
佐々木正美先生の言葉には「成長」とありますが、日本語には「発達」や「発育」など似ている言葉があります。この辺を正確に分ける必要は保育者にはないと思いますが、一応解説しておきます。
成長:形態の量的変化を指し、測定できる。身長や体重。
発達:構造や分化が多様化・複雑化していく過程で経験、練習、訓練、教育などによる学習が加わった現象。精神を中心として、構造や機能が育っていくこと。
発育:成長と発達を統合した言葉
んで、発育には4原則があります。これもざっくりと。
1.順序性と方向性
どこからどんな順に育つか決まっているよ。
(粗大運動から微細運動へ)
(首が座ってから寝返りからハイハイから歩くへ)
2.速度の多様性
部位や種類によって大きく育つ時期が違うよ。
(スキャモンの発育曲線)
3.敏感期の存在
この時期に育つ!という時期を逃すと育たないよ。
(胎児もそう。生まれてからもそう。)
(愛着は生後7~10カ月で作りあげるらしい)
(2歳半まで目隠しをすると、一生目が見えないらしい)
4.相互作用の影響
あちこち関連して一緒に育つよ。
このざっくりさへの異論は認めません。
先に謝っておきます。ごめんなさい。
んで、(2回目)
佐々木正美先生のツイートには「成長」とあります。
佐々木先生はここまでの話の流れを前提に「成長」という言葉を使ったかは分かりません。順番がある、というのも発育の4原則の話なのかも分かりません。
きっと、もっとシンプルな言葉です。
急に箸を持てないよ。それは子どもの身体の成長によるよ。
急に布パンツにならないよ。身体の発達によるよ。
急に片付けするようにならないよ。片づけの大切さとすがすがしさと後に回した大変さを経験してからだよ。
こんな意味なのではないでしょうか。
焦ってもしょうがないし、大人には決められない。
首を長~くして待ちましょう。的な。
そうなると、はじめの固苦しい話はなんだったんでしょうね。
すみません。
心のバケツ理論
私が大切にしている理論を紹介します。
先ほどの「首を長~くして待つ」をもう少し見える化する理論です。
とは言っても、目には見えません。
目に見えないバケツのお話です。
人の心にはバケツがあると考えます。
そして、そのバケツから水が溢れた時、その人は目に見える成長をします。
例えば。
チャックを自分で上げる、で考えます。
「チャックを上げる」と書かれたバケツがあると思ってください。
子どもは、最初は自分でできませんね。当たり前です。
そこで、大人はやってあげます。説明もします。手本を見せます。
これらがバケツに注がれる水です。
大人がやってあげることでバケツに水が入り、
お手本を見せるとバケツに水が入り、
説明をするとバケツに水が入ります。
たまに、水を入れても入らない時があります。
例えば「全然できないね」という言葉。
煽ってやる気を出させようとねらったとしても、
方向性が違うとバケツに入らないんですね。的外れ。
だんだん水が溜まります。
自分でもチャックに挑戦するでしょう。
その日はうまくいかなくても、その経験でも水が溜まります。
そうして溜まっていった水が、ある時バケツから溢れます。
その瞬間、その子はチャックができるようになります。
これが心のバケツ理論です。
バケツ理論には三つのポイントがあります。
①バケツの大きさは人それぞれ
小さいバケツの方がすぐに水が溢れますよね。
ですが、バケツの大きさは誰にも決められません。
生まれつきバケツが大きい人がいます。
そうなると、水がたくさん必要になります。
他の人より時間も周りの手間もかかる、ということです。
でも、その人が悪いわけではありません。
バケツの大きさが大きいからなんです。
②バケツが溢れてから大きな変化がある
これが厄介です。
バケツに水が溜まっていく間は、見た目に変化がないものがあります。
技術的なバケツではなくて、マインドのバケツは特にそうです。
昨日までとは見違えて変わった!とかありますよね。
チャックは技術的なものなので、少しずつ変化が見られます。
たまにできる時はありますし、明日にはまたできないなんてこともあります。
③今どのくらい溜まっているかが分からない
これも厄介です。
「私はこんなに世話してあげてるのに!どうして!」となってしまうことってありますよね。それは、確実に水は溜まっているけれど、それが見えないからです。
見えていたら「このままだと、あと一週間で溢れる」と終わりが見えます。終わりが分かると頑張れることって多いですよね。
でも、心のバケツはそうではない。
溢れるまで与え続けないといけないんです。終わりが見えなくても。それが大変ですよね。サポートする側も辛い。本人も辛いでしょうし。
まとめ
佐々木正美先生の言葉から心のバケツ理論に繋げてみました。
最後に、上の説明では省きましたがこんな人もいます。
バケツに穴が空いている。
心に傷を負った人は、満たされて溢れるはずのバケツに穴が空いています。
「どうせ自分なんて」と思ってしまっているんですね。
そんな人は大人にもいます。子どもにも。
その人たちに私たちができることは、水を注ぐことです。
穴から水が出ちゃっても出ちゃっても、水を注ぎます。
穴は本人にしか直せません。本人にも直せないかもしれない。
だから、私たちは水を注ぎ続けるしかないんです。
せめて空っぽにならないように。
心のバケツ理論を信じて、私は子どもにも後輩にも関わっています。
みなさんは信じている理論がありますか。
ではでは。
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