大増殖天使のキス『#毎週ショートショートnote』
世界は一変した。世界中の人たちが、家から出れなくなった。
あの僅かな異変が、まさかこんな大事になるなんて、私含め世界中の専門家も予期することはできなかった。
各国の政府は国民に防護服を支給した。
防護服には特殊な匂い成分が塗布してある。
この防護服があれば外へ出ることはできるが、窮屈であることに変わりはない。
世界中の専門家が原因を追究、解明しようと試みてはいるが、糸口を見いだすことはできていない。
やはり、実際に触れあって確認するしかないのか。
防護服なしで外に出るのは危険だが、解明に近づけるかもしれない。
よし、行くぞ。
外へ一歩踏み出した瞬間、一斉に私の元へやってきた。
大増殖した豆柴の群れが。
無数の豆柴が私に飛びかかる。バランスを崩し倒れると、私の口元を執拗に舐めてくる。
なんとか一匹捕まえたが、なんの変哲もない豆柴だった。
そんな馬鹿な、なにか手がかりがあるはず、うっ、ダメだ。
抵抗するも、豆柴たちのキスに骨抜きにされてしまった。