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低学年は団子サッカーで良いのか?強豪チームの事例紹介

「団子サッカー」とは、ボールを追いかけて皆が一箇所に集まり、戦術的なプレーがあまり見られない状況を指します。

 この現象に親やコーチは頭を悩ませるものですが、本当に団子サッカーは悪いことなのでしょうか?
この記事では、様々なチーム(特に強豪チーム)の事情を見ながら低学年のサッカーにおける団子サッカーの是非について考察します。

 尚、筆者はサッカー未経験の素人なため、あくまで子供のサッカーを10年以上見続けてきた、いち保護者の意見です。

 知能や判断がまだ未発達な段階では、子供達は自然とボールに全員が集まってしまいます。やはりサッカーの楽しさはボールに触ってこそなので、これは子供達がサッカーの楽しさを感じる自然な反応と言えるでしょう。

 近年、一部の指導者や保護者からは団子サッカーを避け、早い段階で戦術的なサッカーを教えるべきだという意見がよく聞かれる様になりました。

 ヨーロッパ、特にスペインのサッカー育成が各メディアで取り上げられ、幼少期から大人顔負けの戦術的なサッカーを学ぶ環境が整っていることが背景にあります。その結果、多くの名選手が輩出され、スペインが美しい戦術的サッカーを駆使してワールドカップで優勝するなど、世界中に強い影響を与えています。

では、日本の現状において、一体いつ団子サッカーをから戦術的なサッカー指導に移るのが良いのでしょうか?幼少期に団子サッカーをするメリットはないのでしょうか?考えていきたいと思います。

 まずは、私の息子達のクラブの事例、そして低学年から継続的に試合をしてきた、いくつかの強豪チームの事例をもとに考察します。

 息子達のチームは低学年時、絵に描いたような団子サッカーチームでした。
試合中は全員がボールに群がります。キーパーでさえ自陣にボールが入ってくるとボールにアタックします(笑)

 コーチもそれで良しとしている様で、試合中の掛け声は常に
「行けー!!」でした。
いつ頃までそれが続くかというと、小学2年生の秋くらいまではそんな感じです。
ちなみに息子達のチームは県内でも指折りの強豪チームとして知られていますが、低学年時はこんなもんです。

周辺の強豪チームと練習試合をしますが、他のチームも同じ様な感じでしたね。

  稀に幼稚園生くらいでも、お団子に突進して行かない子がいます。
 これには2パターンあって、成長が遅く体が小さかったり、気が弱かったりで行きたくても行けない子と、周りがよく見えていてボールをゴールに入れたら勝ちというサッカーの性質を理解していて、常に団子からのこぼれ球を狙って少し離れた所にポジションを取る子です。

 後者は多くの場合、体も大きく、しっかりドリブルやキックができる成長の早い子です。そういう子が団子の外でボールを拾うとほとんどゴールまで独走できてしまいます。

そんな中で異色だったのが、県内のとある強豪チーム(仮にチームAとする)です。

 息子の学年ではないのですが、1年生チームが冬頃、チームAと練習試合をしていました。
 この時はまだ団子サッカーをしていましたが、よく見ると真ん中でボールを奪うと外を見る子がいたり、前が詰まっている時に後ろにドリブルしたり、バックパスをしたり、密集を避ける意識が感じられます。

 しかし、奪いに来る時は全員で来るし、外に逃したボール、下げたボールには全員で群がっていたのでこの頃はまだ実質的には団子サッカーでした。

 選手達の能力差は無くスコアもほとんど同じくらいでした。
むしろボールを下げるのであっけない失点が多かったのを覚えています。

 その半年後、2年生の夏頃、またチームAとの試合を見る機会があり驚愕しました。

 顔ぶれはほとんど変わっていないのに、全員がポジションの概念を理解してプレーしています。
 プレスをかける際はマークを明確にして、誰が行くのか、行かないのかを理解していますし、奪ったボールをサイドに展開して運び、クロスを上げ、中には数人がゴール前に詰める様なプレーができています。DFの選手もリスク管理をしています。

 息子達チームはボールを奪われ、サイドに展開されたボールを全員で追いかけた所で、空いた逆サイドにパスを出され、最終的にDFまで釣り出されたガラ空きのゴール前にラストパスが入ってきます。

 こうなると相変わらずの息子チームは太刀打ちできません。5試合くらいやって、毎回10点差以上つけられて負けたと記憶しています。

 半年前まで同レベルの試合をしていたチームAの変貌に驚きが隠せません。コーチの操り人形の様に試合中、細かく指示を出しているのかと思ったら、時折、プレー後に「今のは良かったよ!」とか「こっちは見えてた?」とか
声がけをする程度で特に指示はしていませんでした。

 今、思えば半年前から個人レベルでポジショナルサッカーの概念を意識させ、全員に浸透した段階でチームとして、戦術的なサッカーをやっていたんだなと気付かされました。

 チームAは、そこまで身体的に優れた選手がいる訳ではありませんでしたが、この時期から、高度に戦術的なサッカーをやるチームは周辺には無く、4年生くらいまでは出る大会、全て大差で優勝して県内でも話題になりました。

続いてチームBの事例について紹介します。
 チームBは県内ではいわゆる絶対王者というやつで、全国大会の常連。
J下部にも当たり前に勝ってしまうチームです。

 このチームもセレクションは無いものの県内最強の呼び声高く、近隣チームの絶対的エースだった子達ばかりが皆、全国大会出場を目指して集まってきます。
そして2年生くらいでCチームまである大所帯になります。

 どんなサッカーをやるかと言えば、ズバリ"超ハイプレス+個の能力を活かしたシンプルかつ強力な攻め”で畳み掛ける超攻撃的サッカーです。

 息子達のチームは1年生の頃から頻繁にチームBと練習試合をしますが、低学年のうちは同じ様な団子サッカーをやっていて正直、あまり差を感じませんでした。

 特徴は学年が2年、3年と上がるにつれて、さらに能力が高い子が集まり、逆に低学年時でついていけない子が移籍したりでメンバーが大きく入れ替わり、どんどんと別のチームになっていく事です。

 やっているサッカーはそれほど変化しませんが、選手の質が上がっていくので、身体能力とサッカーIQの両方が高い子しかレギュラーに残れず、自然とただボールに群がる団子サッカーから、極めて連動したハイプレスに移行していくイメージです。

 この調子で学年が上がるにつれて選手の質も上がり、全員が連動した超ハイプレスも精度を増していきJ下部相手でも
「ずっと相手コートに押し込んで何もさせないで勝つ」
を実行してしまう様なチームです。

 さて最後に息子達のチームですが前述のとおり、2年生秋までは団子サッカー、冬頃から少しづつスペースを意識する事を教えて行きます。

チームのポリシーとして、

  • 1対1に勝つ

  • ボールを持つ

  • 球際負けない

をテーマにしているので、団子サッカーの中でもボールを持っている選手には、どんどんドリブルで仕掛けて行く事を求めますし、パスを出すにしても、目の前の相手を一人剥がしてから、というのを徹底します。
奪いに行く時の球際の強度も高いです。

 これを続けると、高学年になるにつれて、技術と対人能力の高い個が強い選手が育ち、中学生になる時には、たくさんの選手がJ下部のジュニアユースにスカウトされて入団して行きます。

 ただ、低学年時に"まずはドリブル"を徹底するため、チーム戦術の浸透に時間がかかり、高学年になるまで全然、勝てません。

3つのチームの例が出たので、このチームの戦力バランスが、学年ごとにどの様に推移して行くかまとめてみます。

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