多くの選手を苦しめてきた呪いの正体
サッカーには象徴的な背番号というものが存在する。クラブのバンティエッラとなる者が着けるに適した番号が。多くのクラブでは、10番がこれに当たるだろう。元ローマのトッティが良い例だろう。彼自身の愛称がバンティエッラなのだから。ただし、違う番号がその役割を果たすクラブもある。バルセロナの14番やマンチェスター・ユナイテッドの7番がこれに当たるだろう。ヨハン・クライフ(バルセロナ)やエリック・カントナ、クリスティアーノ・ロナウド(以上マンチェスター・ユナイテッド)が着けた番号である。日本で言えば、昨シーズン惜しまれつつも潔くユニフォームを脱いだ川崎フロンターレの14番、中村憲剛しか思い浮かばない(加筆)。これらには共通点がある。それは、現在(2020年夏の執筆当初)空き番号だと言うことだ。ここでは、マンチェスターのチームの7番について考えていきたい。
最近のユナイテッドの7番には、必ずと言って良いほど、ある不気味な言葉がついて回る。「7番の呪い」である。これは、CR7以降の選手がこの番号で全く活躍していない惨状から来たネーミングである。犠牲者は多いが、記憶に新しいところでは、ディ・マリアとデ・パイだろうか。前者は当時のリーグ記録となる移籍金であのレアル・マドリーから、後者はW杯でのブレイクを受けて、ともに大きな期待を背負い、入団した。しかし、2人とも、入団のインパクトを越す結果はもたらせなかった。確認しておきたいが、2人とも退団後はまた素晴らしい選手に戻っているので、やはりユナイテッドに合わなかったということだろう。背番号に潰されたとも言える。
さて、ようやく「不気味」な正体を暴く訳だが、そのために、7番をつけて活躍した選手見ていきたい。ジョージ・ベスト、エリック・カントナ、デビッド・ベッカム、クリスティアーノ・ロナウド。この4人が代表格に思われるが、ベストはかなり昔(筆者はそのプレーを見たことがない…)のことであり、ベッカムは他の番号もつけてプレーしたので、一旦除外したい。さて、カントナとクリスティアーノの共通点といこう。生憎、カントナのプレーを生で見たことがないので、映像資料や今も語り継がれることに頼るが、確実に言えるのは、良くも悪くも2人は、途轍もないエゴイストであったということだ。もちろん特別な才能があってだが。エピソードや逸話は枚挙にいとまがない。
要するに、ユナイテッドの看板を背負う、または世界的ビッグクラブの核となるというサッカー界随一の重圧に対応できる選手でないといけないのだ。対応できるなんて言うのは簡単なのだが、その難しさは生まれ持ったエゴでもない限り、対応できないものなのだと思う。
ここで、現在のユナイテッドで7番に合う選手を見てみよう。個人の見解になるが、見当たらない。ブルーノ・フェルナンデスやポール・ポグバは確かに強いエゴを持っているが、ともに7番という感じではない。そうなると、ユース出身であり、ユナイテッドの全てを学んでいるマーカス・ラシュフォードはどうだろう。確かに、面白いかもしれない。ただ、10番が彼には十分似合っている。メイソン・グリーンウッドは若武者すぎる。新加入の噂がある選手で強烈なエゴを持った選手は見当たらない。ユナイテッドに「7番の呪い」を解いてくれるような選手が現れるのは、まだ少し先かもしれない。
この記事を書いた当初から実に6ヶ月という月日が経った。やはり思うことはビッグクラブの歴史ある番号を背負うことの重圧の大きさである。エディンソン・カバーニは非常に良い働きを見せているが、その番号の意味については深く考えすぎないようにしている様子も窺える。実は、そのクラブのフィロソフィーを熟知していない者がそのクラブの旗頭になるためにはそのような姿勢が重要だったのかもしれない。しかし、やはり、クラブの象徴は内部から誕生して欲しいと思わずにはいられない。カバーニがいつまでマンチェスター・ユナイテッドにいるかは不明であるが、退団する時はマーカス・ラッシュフォードにその番号を託す姿を見てみたいと考えてしまう。
ぼー 4/2/21
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