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【レビュー】パリ五輪サッカー日本対スペイン 諦めずにハイプレスを続けたい

パリオリンピック、日本対スペインの好カード。日本の現在地を知る良い試合だと思ったので観戦しました。とても良い試合だったと思います。試合を見つつ大分熱くなってしまいました。試合を振り返ります

まずは基本フォーメーションから。日本もスペインもフォーメーションは似ていて433又は4231。試合状況に応じてボランチの数が変わってフォーメーションが変わります

青が日本、赤がスペイン。両方433だが若干4231的

守備でスペインのポジションチェンジに対応できず

戻ってくるスペインの選手を捕まえ切れずハイプレスを回避される

守備時の日本は相手GKにはプレスをかけずに代わりにアンカーをマーク。相手GKからパスが出たらハイプレスをかけます。とにかくアンカーにはパスを出させないという狙いが見えました

青のLIHが赤のDHを徹底マーク

しかし以下のためにハイプレスは嵌まらず

  • アンカーの選手の戻り方が上手い。一度消えるような位置から戻ってくる

  • スペインのボランチやインサイドハーフの選手が戻るのを捕まえ切れず、その選手にパスを出されてしまう

  • スペインの選手の受け方が上手い。ファーストタッチで上手く交わされることが散見された

赤の戻ってくる選手がフリーに。この例ではRIHの選手がフリーに

特に序盤、スペインはアンカーが右CBに降りて右SBを押し出し、右SBと右WGで日本の左SBに対して数的優位を作って攻め込むことが多かったです。スペインの右WGも内に入って微妙な位置を取り、日本の左SBが前に出にくい位置取りをしていました。しかもスペインのDFラインから左SBや左WGへメチャメチャ速いパスが出るので、日本はなかなか捕まえ切れず

赤のDHがDFラインに降りてRSBが上がり数的優位に

日本はこの左サイド中心に押し込まれて失点します。失点の際のシュートへの寄せは甘く、海外の選手の広めのシュートレンジに適応できなかった感があります

ハイプレスの裏を突かれる

スペインはハイプレスのひっくり返し方も上手かったです。レイオフも多用してましたし、インサイドハーフの選手がボランチの位置まで降り、代わりにボランチの選手がハイプレスに出た日本のSBの裏側に走ってボールを受けたりもしてました

下がった赤のLWに青のRSBが付いていった裏を赤のLIHが突く

日本はマークが絞れずDFラインがなかなか前に出にくそうでした。ハイプレスに出る前線とDFラインの間がかなり間延びしてしまうことも多かったです

戻ってくるスペインの選手を追いかけるようになって安定

前半の途中からスペインのボール回しがやや滞るようになり、日本もボールを保持できるようになりました。この背景には以下の記事の通りに戻ってくるスペインの選手を追いかけるようになったことがあるようです

カタールW杯のスペイン戦でも、戻っていく選手を追いかけるようになってから日本に勢いが出ました。やはり受け身では厳しいのだと感じます

攻撃では徹底したポケット攻略が非常に機能

攻撃は個人的にはとても素晴らしかったと感じます。とにかく狙うのはDFライン裏のポケット(ペナルティエリア内のハーフスペース)。ポケットを狙うための工夫として以下があり、徹底度合いが窺えました

  • 選手がどんどんポケットに走る

  • サイドからどんどんポケットにボールを入れる

  • サイドのプレスを和らげるためにもSBがどんどん上がる

  • 同じくサイドのプレスを和らげるためにCBがどんどんドリブルで持ち上がる

ポケットを狙う青のRIHとRW。RWを楽にするためにRSBも上がる

ポケット狙いはかなり機能していました。シンプルな戦術ですが、徹底すればここまで機能するのだということを思い知らされました。以下記事にパリオリンピックまでの試行錯誤が記載されていますが、「チーム原則、戦術オプションの数を極力減らし、それをぶれずに積み上げていく」というスタンスが功を奏したように感じます

且つ、相手がポケットをケアすればその分中央が空きます。日本はそのスペースもしっかり使っていました。その流れから細谷選手の幻の得点に繋がる形

加えて、攻撃が機能する中で獲得したセットプレーの質もとても高かったです。セットプレーからゴールポストを叩く場面が散見されました。0-3でしたが、日本も数点取っておかしくない出来でした

スペインにハイプレスをかけられた時にややバタバタしたのが気になる程度ですね。A代表よりしっかり攻撃できてたのでは、と感じる良い攻撃でした

オープンな展開で失点を重ねて敗戦

後半、日本は同点にするためになりふり構わずハイプレスをかけます。前半と異なりGKにもプレスをかけるようになりました。スペインは少し苦しんだ印象がありましたが、ギリギリのところでボールを取らせず、カウンターを繰り出すことが多かったです。スペインの個々の選手のキープ力が上回った印象

その中で失点を重ねて敗戦。点差ほどの差はないが、このままではスペインに勝つのが難しいと感じさせられた一戦でした

どうすれば勝てたのか

攻撃は今の方向性で良い印象

攻撃は非常に機能しており、今の方向性で良いと思います。個人的には驚きに近いレベル。サボらずに走る日本人の特徴がポケット狙いに必要なものに合致していて、A代表も含めて日本代表全体として目指すべき攻撃と感じました

物足りなかったのはサイドのWGからの個人技での突破。日本には良いWGが多いので今後の成長に期待したいところ

ハイプレスを志向するならもっとインテンシティが必要では

次は守備面を考えます。パリオリンピックのサッカー日本代表はハイプレスを主軸に勝ち上がってきました。対戦国のメディアからも称賛の声が聞こえます

確かにハイプレスはサボらずに走る日本人の特徴と合致しています。Jリーグもハイプレス戦術が主流になってきています。一見、日本の目指す方向性と合いそうに見えます

しかし、個人的にはハイプレスはインテンシティの高さがないと成り立たない戦術であり、日本国内のサッカーのインテンシティのレベルでは厳しいのではないかと感じます。海外サッカーのインテンシティの高さを訴える選手・識者は多いです

インテンシティが高い国ではそれに応じた攻撃戦術や能力が発展するはずです。この試合のスペインの連動したポジションチェンジやボールキープ力もそうでしょう。日本はスペインからなかなかボールを奪えませんでした

実際に日本ではハイプレス回避のレイオフが不足しているという分析もされています。そんな中では逆にハイプレスも洗練されなくなってしまうでしょう

海外経験の豊富なA代表であればまだハイプレスで戦えそうですが、国内主体のオリンピック代表ではインテンシティが不足し、相手にハイプレスを剥がされてしまうのではないでしょうか

諦めずにハイプレスの練度を高めていくのが重要な可能性

とは言っても、ハイプレスを諦めていては国際大会で勝ち上がるのも難しいと感じます。EURO2024でもハイプレスを志向したスペインが優勝しました

カタールW杯のクロアチア戦の敗戦も前からのプレスが機能しなかった点にあると感じています

玉砕覚悟でハイプレスを行い、そこで不足に気付いた選手が海外に行き、インテンシティを高めた上でA代表としてハイプレス戦術を行う。オリンピックはそういう位置付けで戦っていくのが良いのかもしれません

下馬評が低い中でスペインと素晴らしい試合を繰り広げたパリオリンピックサッカー日本代表。今の方向性を是非続けて欲しいですし、今後の日本の若い世代にも期待したいと思います

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