【レビュー】W杯最終予選日本対サウジ 本当にこれでベスト8を目指せるのか
今回のW杯アジア最終予選で1番厳しい試合と予測されたサウジ戦。結果は0-2の快勝でした。より強い相手と戦って出てきた日本の3バックの強みや弱みを分析していきます
まずは基本フォーメーションから
フォーメーションを変えてきたサウジ
日本は3421、サウジは4141に近い433。日本のスタメンはバーレーン戦と同じ。攻撃が停滞した試合と同じスタメンで驚きました。以下の記事では代表の選出基準として守備意識が求められているとのことですが、スタメンの選手は確かに守備意識が高そうな選手たちでした
久保選手の世代はスタメンから外れ、平均年齢も結構高めになりました。久保選手の世代は確かにその上の世代ほど守備が強い印象はありません。ただ、後述する通り結構攻撃が停滞したので、久保選手ぐらいは入れて良かったのではと思います
一方のサウジは日本を分析してきて普段と違うフォーメーションにしてきたようです。どういう意図があったが詳細に考察します
点は取ったが危うかった前半
3バック全員にプレッシャーをかけてきたサウジ
サウジは433の3トップが日本の3バックに対して同数でプレッシャーをかける形。またアンカーとインサイドハーフで日本の2ボランチをマークしつつシャドーへのパスコースも消します
日本の3バックは大分パスが出しにくそうでした。敵のDFラインの裏やサイドにロングボールを蹴ることが今までより多かったです
日本はボランチがDFラインに降りて数的優位を作って対抗
そのため、日本はボランチの選手がDFラインに下がって数的優位を作るようになります。その分中盤は数的不利に陥りますが、鎌田選手と守田選手が流動的に動いて中盤にパスコースを作ります
余裕ができた日本のDFラインは、サウジの433の泣きどころであるアンカー脇に位置取ったシャドーにパスを出したり、左サイドに張った三笘選手にロングボールを入れました。サウジは流動的に動く鎌田選手と守田選手を気にしてか、徐々に前へのプレスに出られなくなっていきました
最後の崩しは停滞気味
一方でボールが前線に入ってからの日本の崩しは停滞した感があります。上手く崩せたのはゴールシーンとあと1、2回ぐらいではなかったでしょうか
一因として、守勢に回ってポジションが崩れてしまっていたことがありそうです
まず堂安選手は守備に追われてポジションが低めでした。囲まれることも多かった印象です。更に、バーレーン戦のレビューでも話した通り、堂安選手と南野選手の組み合わせではサイド突破がしにくく、その分右サイドの攻撃が停滞してしまったのだと思います
三笘選手にもなかなか良い形でボールが入らず良さが生きませんでした。上述した通り、守田選手や鎌田選手が流動的にポジションを変える中で、三笘選手が孤立した感があります。特に鎌田選手と三笘選手との距離が少し遠くなってしまっていた感があります
前線からの守備は改善傾向
次は日本の守備。日本の前からの守備は前よりも効いていました。前2戦と同様、4バックに対して、1トップ2シャドー、そして左WBの三笘選手で同数でプレッシャーをかけます
ワンツーなどで交わされることも一定ありましたが、サウジはマークを外せずなかなか前進できないことが多かったです。プレスをかけるタイミングが良くなったのかなと思います
日本の右サイドが突破される
ただ、問題だったのはその後です。右サイドで詰まったサウジは何とかDFラインに戻して左に展開します。そして強力な左のアルサドリ選手経由でペナルティエリア前後まで侵入されるケースが多かったです。堂安選手が交わされたり、そのカバーに入った選手の更に裏のスペースを突かれたりしてピンチを招くケースが結構ありました。サウジは左シャドー、左ボランチ、更に左SBがどんどん裏に走ってきてましたが、サウジの左サイド、つまり日本の右サイドが狙い所と感じていたのかもしれません
ハーフタイムの変更で形勢を立て直す
後半、ハーフタイムに変更があって形勢が立て直されます
まずは南野選手が伊東選手に交代。南野選手がイエローをもらっていたため交代したのかと思ってましたが、右サイドの形勢が悪かったことも理由だったのかもしれません。実際、伊東選手が入って日本の右サイドは良くなりました。伊東選手はDFではありませんが、足が速くアルサドリ選手に抜かれることがほとんどなく、逆にサウジの守備をぶち抜くケースも出て、その分サウジが守勢に回った気がします
また後半から5バック気味に構えることも増えました。その分サウジのサイドの選手がフリーになりにくくなり、日本の右サイドも守りやすくなったのかもしれません
ロングボールの対応で1、2回危ない場面はありましたが、基本的には危なげなく対応して完勝。後半は攻める機会が減りましたが、安心して見られる展開だったと思います
攻撃的3バックでベスト8を目指せるのか
諸刃の剣の攻撃的3バック
攻撃的3バックは危ういと感じた試合でした。今のサッカーはWGに突破力のある選手が多く、それに対して攻撃的WBが対峙するとどうしても突破されるリスクが高いです。強豪国と闘えば更にリスクが高まります。失点は免れなさそうな気がします
攻撃が機能しないと厳しい
だと言って守備的に戦うのは違う気もするので、後はそれを上回るだけの攻撃ができるか、ですね。しかしそれは今回の試合だけ見れば厳しい印象を受けました。守勢に回ってポジションが崩れがちだったのと、右サイドの南野選手と堂安選手の組み合わせが悪かったことが一因だと思います。機能しない配置に拘るところは森保監督の悪いところ
プレス耐性も高める必要性がありそう
守勢に回らないためにもプレス耐性を高める必要があると感じました。この試合でもボランチが上手くボールを捌けずにボールを失い、危ない場面を招くことが何度かありました。その分、鎌田選手も下がる必要性が出て、結果三笘選手の力が削がれた印象です。強豪になればなるほどプレス圧力が高まるのは必至で、ベスト8に進む上では改善が必要に感じます
ポゼッションを重視するアーセナルもシティも、プレス回避のために長身CFにロングボールを入れることが増えました。日本もロングボール経由でのプレス回避能力を高めていく必要があるのかもしれません。このテーマはもっと考える必要がありそうです