#ARSBHA23_24


[ prologue ]



やあ、みんな元気かい?

今日の舞台、Emirates Stadiumの構造美はスゴイね。今頃TVで観ている人達は仰向けでポッカリ口を空けているかのように見えるfootball stadium特有な姿をソファーなんかに腰掛けてその様子を楽しんでいるんだろうけれども、ピッチの底からオレの目線で見る姿もなかなかオツなモンなんだゼ?完全なる見上げの構図で、スタンドから観ている人達よりもきっとはるかに壮大な景色なんだ。


天を拝みつつ四隅がキレイな流線形で波打ちながら抜けているというレイアウトは、日本人が見たら富士の裾野を思い起こすのかも知れないな。あわせて客席を保護する屋根もそれと連なって滑らかな曲線を描いてせり出しているんだからシャレているよな。構造的な強度を保ちつつ、曲線を多用し建築としてまとめ上げるってのはかなりムズカシイ事なんだろう?専門的な知識で頭がいっぱいになっちゃうくらいにさ。


建造物としてあるべき屋根が無いというスタイルは古くからあって、かつてはこんな大きな建物に壁も屋根も付けると真っ暗になってしまうからどちらかは最初から無いものとして設計されていたらしい。まあだってそうか、あれだけ広大なスペースを照らす為に幾ら石造りだからって毎回大火事起こしてる場合じゃないもんな、電気が無いからっていちいち癇癪を起こしてる訳でもあるまいに。


だから現代の技術とデザインの粋を集めた存在であっても、高い外壁に囲まれた中に大勢が集まって時には雨風、またある時には風雪にさえさらされながらもエンターテイメントに興じるってのは、コロッセオに通っていた人たちも通づる人間の営みの一部なのかもな。




[ GOAL -1- ]



Roverto De Zerbi 、そして彼のメソッド無くしては今の順位に居るのが不思議なくらいさ、こんな怪我人だらけの中にあってはね。

そしてほら、まただ。今シーズンよく見る光景が訪れてしまったよ、Veltman 34 が痛んでどうやらもうこのゲームは無理らしい。なんでかってくらい最近のPremierじゃあ毎節どっかでこんな事が起こるよな。


これはそれに関連する事だと思うんだけど、今日アウェイチームがなかなかチャンスを作れずオフェンス面で脅威をホームチームに感じさせる事も無く苦しんでいる状況を見れば無関係とは言えないんじゃない?昨シーズンやメンバーの揃っている時のデキを知っている人ならさ。


あらゆる面を見ても試合開始の時点で差がついてしまっていたよ、〝工夫〟だけじゃどうしようも無い程。それだけによく耐えていたんだBrightonは。前半から幾度も作られてしまったGOALチャンスをどうにかこうにか否定し続けてやり過ごし、危険を承知の上で積極的にプレスをかけてビルドアップの自由を与えなかったんだからね。それは諸刃と知りながらも剣を手に取る、せめてもの勇気はあるって事の証明だろうな。


実際いつもは同サイドのSBや背後のスペースをケアする事が多い 三苫 22 が、今日はCBの間に下りて自らゲームを構築しようとする Ødegaad 8 について行く方法をとっていたもんな。相手が相手だけに各選手普段より与えられたタスクが多いのかも知れないけれどよくこなしていたよ、ホームチームよりも持ち得る武器が少ない分、ホント上手いこと戦い方をまとめ上げたなと思える仕上がりだったのさ。


うっかりファーポストで仕留める気満々で佇む、赤の9番をポッカリ空けてしまうまでは。



ずっと集中していて連携も悪くなかったから無失点のままなんとか推移したんだろうけど、それを打ち破ったのはアグレッシブに行った結果のアンラッキーってんだから致し方ないよな、コレばっかりはさ。

後半に入ってArsenalは相手のビルドアップ時の狙いをより明確に定めて来た様だったから、Brightonは攻めようにも効果的に前へ付けることが出来なくなり少し後ろ向きにパスを回す機会が増え余裕を持ってパスコースを探せなくなって、そこにしっかり前から僕ホルダーをハメ込む形がバッチリハマり、笛が鳴ってからスグに高い位置のプレスからゴール前でのチャンスを作って行ったんだ。


GOALが生まれたCKもその一連で相手陣の深い位置でミスを誘発させ、エリア内ゴール正面のビッグチャンスをギリギリの所で阻止され貰ったヤツだからね。


Arsenalにとっては前半から「後は決めるだけ」に近い演出は数多くしてるのに、スコアが0-0のままだったのは不可解な謎みたいなものだったかも知れない。でもその「解」を持っていたのはBrightonで、スタート直後から素晴らしいplayの連続であわやのシーンを救って来た Van Hecke 29 ってのは一体どんな皮肉だろう?


この直前の場面も、彼が Ødegaad 8 の前に割って入らなきゃアッサリ決められていた事だろうし、そんな彼のフリックした僕の行き着く先がフリーで待つ Jesus 9 なんて報いが無さ過ぎるよな。人間に予め用意されたとかいう運命って奴はこんなことばかりするのかい?残酷だよ、余りにさ。


それにしてもあれだけチャンスを作って決まらなかったモノが突然プレゼントされたんだから、なにはともあれ一安心だろうな、ホームチームは。ずっとゲームを支配した中にあってスコアを動かせずに時間だけが経過して行ったここまででも、どうやったら点が取れるんだという焦りのようなものは見られなかったにしてもね。



そして結局のところ、おおよその場合基本的な攻撃の起点になる両翼では、左サイドは対峙する Veltman 34 になんとか頑張られていたんだけれど早々に壊れてしまったし、どうやら右の Milner 6 は残念ながら Saka 7 の相手じゃなかったらしい。


BrightonはGK、ディフェンスラインでのビルドアップにもプレスを積極的にかける為、必然的にライン設定は高くなる。間延びしてしまって簡単にパスが繋がる様では何をやっているんだかわからないからね。でもそうするとラインの裏には広大なスペースが存在するって事で、そこを狙ったパスが通ればディフェンスは大きく後手を踏んで対応せざるを得ず、個人技からのシュート、クロス、ワンツーでのさらなる抜け出しとケアする手段が多くて混乱に陥ってしまう。単純なスピード勝負はもちろん、ドリブルの1vs1も経験だけで封じられる程甘くないみたいで縦に仕掛けてもマークを外せていたし、外を見せてからそれをフェイントに使いつつ中への切り返しで自ら進入したり、Ødegaad 8 とのパス交換や中に当ててリターンを受けようとしたりと Saka 7 から始まるArsenalのコンビネーションは多彩で翻弄されるままだったもんな。


エリア内でラストパスが通り誰も文句の言えない状況でシュートを打っているのに、最後の最後だけが何故か決められないでいたのは Verbruggen 1 、 Dunk 5 、そして特に Van Hecke 29 にホント何度も何度も体を張って、身体を投げ打ってブロックされたからだろう。幾多の決定機をフイにしつつもペースも僕もつかまえて、敵のゴール前を自分たちのやりたいようにしていたから、大量得点で前半のうちに勝負が決まっていても全然おかしくなかったんだ。その世界線の話を書いて聞かせれば、フェイクニュースくらい人は簡単に受け入れてしまうハズだゼ、事実は小説よりも奇なりの逆説じゃないんだけどさ。



[ GOAL -2- ]



点差が生じた後も流れはほとんど変わらなかった。ホームチームが「これは来たか!」というシーンを作り続けて、プレスからショートカウンターを仕掛ければビッグチャンスに手が届きかけ、セットプレイでは相変わらず脅威を与え続けていた。


そんな展開を少しづつ動かして行ったキッカケはやはり選手交代だった。なかなか好転しない展開に刺激を与える3枚交代、それに伴ってシステムも少しイジったみたいで、左SB可変だったのを Igor 3 を入れた事により右SBの Hinshelwood 41 がポジションを離れ中央の厚みを作るようになっていった、攻撃する時にね。


いきなり形勢逆転というような甘いモンじゃないけれど、徐々に意味のあるポゼッション、効果的な組み立てからゴール前に迫りシュートを打てるチャンスも得られるようになって行ったんだ。そう、71分に Dunk 5 の鋭いロングフィードから生まれた 三苫 22 がエリア内で勝負に行った場面や、左サイドをなんとかこじ開け突破し、君たちには一瞬決まったかに見えた事であろう Groß 13 に合わせた81分のシーンとかさ。


当然それはArsenalがテンポなんかを緩めたから起こった変化ではないと思うよ。僕が向こう側にいる事も増えホームチームの〝足〟を離れて忙しく動き回らされる時間が長くはなったんだけれど、それでも67分にはCKからニアで見事にスラした White 4 のバックヘッドが Dunk 5 にライン上紙一重でクリアされ無ければ、僕はサイドネットへ強烈な勢いでダイブしていたに違いないからね。


試合を通してそれまでなかったホームチームが押し込まれる展開の続く中で生まれたGOALに、ホームのサポーターもちょっとビックリしたんじゃないか?ハラハラがドキドキを通過せずに突然ウハウハへと変換されちまうんだもんな、出会い頭でもないのに不意を突かれたみたいに。


それにしてもホントあと少しって所まで迫っていたと思う、アウェイチームの猛攻は。時間のこともあるけど、だから余計にショックを受けたかも知れないなBrightonにすればね。失点シーンもたぶんチームとして上手く追えているつもりで Trossard 19 を敵陣まで押し戻したハズだったのに、マークの受け渡しが甘くなってキレイに間を通され前を向いた Ødegaad 8 へ繋がって、完全にプレスが剥がされ引っ繰り返ってしまったのさ。


あとはスピードに乗る前線のplayerに追い縋るための力が、流石にこの時間には残っていなかったってトコロかな。そこからは誰も僕ホルダーに寄せきれず、静かに事の一部始終を見届けるしかないままネットインされてGOALだからね。


いやあArsenalは一流揃いではあるけれど、上手にコントロールされたキープかと思わせてあっという間の反転攻勢からきっちりGOALゲット。美しい擬似カウンターだったな、あれは。 そしてフィニッシュに脇の下を抜く決定力、文句ないね。


もちろんこれはタラレバで仮にそれが出来ていたとしても結果は変わらないのかも知れないんだけど、Ødegaad 8 に渡ってプレスが剥がされた瞬間、もしくはも1つ先の Nketiah 14 がフリーで受け VanHecke 29 が全速力で戻り出したのと同時に Buonanotte 40 か Hinshelwood 41 が同じように Havertz 29 をケアする為に反応していれば、直結GOALと成らずに遅らせる事くらい可能だったのかもな。


やっぱり本職のSB、尚且つDFですら無いってトコロがこういう場面で出てしまうモノなんだろうか。それまで上手くやれていたのに残念だよな、本当に。




[ epilogue ]



ホームチームのために歓喜の笛が鳴らされた後、まあ結果が物語る光景がピッチ上でも表現されていたよ、スタンド同様にさ。


至極当然、当たり前と言えば当たり前にチームとしての完成度の高さを見せつけた試合内容と結果になったワケだけど、選手に目を移せば今日の Ødegaad 8 と Rice 41 は抜群に良かったな。いつも通り気の利いたポジショニングから受け手、出し手両方をこなしつつ、攻守両面で労を惜しまず走ってくれるんだ。あのセンスの塊のような2人がインテンシティ高くピッチを縦横無尽に動き回ってくれるってのは、ベンチからするとどれほど有難いことなんだろうな? Ødegaad 8 はエリア内に進入して何度もチャンスに絡んで相手に危険なイメージを植え付けていたし、Rice 41 は自陣で体を張る場面を見せたかと思えば、カウンターから巧みなドリブルで持ち上がり自らフィニッシュまで行ったんだから。


あれだけやってくれるplayerが中盤に2人もいるんだ。それに Havertz 29 の調子もここに来て上がって来たみたいで、今日の2点目を観ただろ、結果も付いて来るようになった。昨シーズンのベースがありながら、順調にさらなるベースアップを図ってここにいる。

これは強いよArsenalは、本物さ。


あとはシーズン終了まで大きな怪我やトラブルで離脱者続出なんて展開にならない事を祈るだけだな、アウェイチームみたいにね。




                                                                                                                                                                                                                                    Fin.

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