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「グレープフルーツ・ジュース」;出来るだけあなたに伝わるように書く感想文<57>

「グレープフルーツ・ジュース」(詩集/1993)

 1964年に500部で刊行されたオノヨーコさんの「grapefruit」。これを1993年に南風椎さんが日本の写真家たちとともに、再構成したのが本作品。 「○○しなさい。」で多くの文が終わるこの作品は、オノヨーコさんがミュージックビデオに出演したことでも知られる彼女の夫のジョンレノンさんが作った「イマジン」にインスピレーションを与えたことでも有名。最近では成田悠輔さんが影響を受けた本の一冊としてこの本を提示していると聞く。



 この本に対する書評は日本語以外でも数多くなされているし、多様な価値観を抱擁してくれる世界だと思うので、自分らしく考えてみる。



 唯一「あなたらしくあること」以外、なにも強要して来ない本だと感じた。
 その教示に期限やその目的は示されず、ただ考えることを求めてくる。想像しなさい、聞きなさい、笑いなさい、多くは今私が出来ることをその場でやってほしいことを伝える。優しい言葉で。。神様や仏様、ご先祖様に対する想いを一切強要することなく、私へのメッセージが続く。
 なんのためにこの本が在るのかということが分からない。何のために書かれたのかも。強い言葉で私を啓蒙しようとするわけでもなく、強力に私の手を引くわけでもない。人生に一瞬通り過ぎていくただの一冊だとも思える。だから燃やせと言っているのかもしれない。
 でもきっと思い出すし、思い出す必要のある本な気がする。


 これだけ他人からの目線を気にする時代である。
 容姿や能力が持てはやされるのはいつの時代も変わらないことかもしれないが、気にすることでもない小さなプライドが渦巻く世の中に嫌気がさしている人も多いのではないかと思う。正直に言ってSNSは辞めたい。
 だから、他人のことを適正に評価できる人がもっと重要になってもいい気もする。相手の思ったことを言ってあげる「やさしさ」を持つ人がもっと大事にされていい気がする。こういう風に考えている。
 だから、相手のことを考えて、自分らしく振舞うその行いを日々積み重ねること。不幸せな人をそういう人の立場に立って考えてあげる強さを持つことの意味を少しずつ教えてほしい。。


 僕らしくあって、僕らしく生きればいいんです。
 そして、僕らしく居られなくなったら「サヨナラ」って言って、転居通知して死ねばいいんです。
 僕のことなんてすぐに人は忘れるし、忘れる人にはそう在ってもらっていいんです。

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