令和型「麦茶」CMを深掘り!
まずは、こちらをご覧ください。
あっという間の70秒だった気がします。
一人称視点で撮影された映像は、自分がこの小さなカフェにいるかのような没入感を与えてくれ、少なくとも僕はこの店員さんが勧めてくれた「麦茶」を買ってしまうことでしょう。
爽やかさと涼しさの中にどこか温かさも感じる素敵なCMに出会えたという印象でした。
【時代背景】
コロナ禍で閉塞感が漂い、自由に行動することすらままならない状況下。
好きな場所に行って、好きなことをするのもなにか罪悪感を感じてしまったり、思うようにできない。「おうち時間」がトレンド入りしてしまう。そういった日々がここ数年続いてしまってる社会。それが今現在だと思います。
ここから、今多くの人達の心に眠る「おうちでできないこと」がしたいという感情が見えてくるように思えます。(僕自身もその1人です)
つまり何が言いたいかと言えば、この時代背景をも加味して、このCMの最も伝えたい価値「おうちでは飲めない味わい」を楽しめる。ということなんじゃないかと僕は思いました。(※僕の個人的な解釈です)
豆の深み、ひと手間加えた味わい、そんな「麦茶」を製造している方の想いが届くかのように。
このCM中、「僕」が麦茶を飲んだ後が最も大切な瞬間なのでしょう。
一人称の「僕」は声を発しません。
本来なら「麦茶」を飲んだ人の感想がこの商品のアピールポイントになるはずです。でも本動画の中では表情すら映ることはありません。
注目すべきは店員さんの行動であり、すべてを詰める必要があるのです。
「おうちの味と違います?」
これが店員さんが発した言葉でした。
この一言とよっしゃのガッツポーズですべてが伝えられたと思います。
【撮影技術】
このCMはほぼノーカットで撮影されています。その場にいる臨場感を味わってもらうにはある程度カメラを回しっぱなしにする必要があるのです。
このCMの最も難しいところはどこだと思いますか?
僕は数回見て気づきましたが、おそらく店員さんが麦茶をやかんからコップに注ぐシーンだったように思います。
見るからに重そうなやかんから、ドバッとお茶が注がれてしまえば撮り直しだし、できればコップの中の氷がカランっと動いてほしい。僕が撮影監督でもそう思います。
だからこそ、このシーンの直前に上手いことカットが入っているのです。
そう、カメラを湯気で曇らせることによって。
そんな撮影技術やアイディアもとても素敵だなと思いました。
【配信メディア】
ここからは少し専門的な話になりますが、
今回このCM動画はYouTube用に作成されています。
テレビCMであれば、15秒・30秒が一般的でテレビサイズに合わせたフォーマットで制作する必要がある。でもこの動画は70秒という時間で縦長のサイズで作られています。明らかにYouTubeで配信することを想定して作っているのです。
さらに言えば、YouTubeは基本的にスマホで1人で見る人が多い媒体。つまり、1人でカフェにいく一人称視点の主人公が没入するにはこれ以上ない配信媒体となるのです。
【コメント欄】
YouTubeで配信することは、もう一つ大きな要素も兼ね備えます。
それはコメント欄があり、一般のユーザーが動画の感想を書き込める場所が用意されているということ。
気になる方はもう一度動画に戻ってコメント欄も見て欲しいのですが、この動画は良い感想や前向きな意見がとても多いのです。いわゆる「平和」なコメント欄というやつです。
このコメント欄は一定数のユーザーが見ますし、共感性を生みます。
一般の人々のダイレクトな感想がよりこのCMの素晴らしさを物語っていたのではないでしょうか。
ちなみに15秒動画ver.はこちらです。
また次回のCMでお会いしましょう!
それでは。
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