記者クラブ加盟各社に思うこと
「それじゃあ出ましょうか?」。「出よう、出よう」。ぞろぞろと腹を立てた新聞記者が全員出払ってしまい、首相は一人孤独に物言わぬテレビカメラに話し続けた。今から五十二年も前に遡る。佐藤栄作首相(当時)は沖縄返還をめぐる報道などがよほど気に入らなかったのか、七年にわたる長期政権の最後に新聞記者たちに絶縁状を突きつけた。いわく「新聞記者の諸君には話をしないことになっている」と。やみくもな喧嘩をふっかける首相の態度には呆れるばかりだが、それを買った記者たちには呆れではない感情を抱いた。
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我が国の記者クラブは大っぴらにされることはないが、数え始めればきりがない。有名どころでは内閣記者会。その名の通り政治部のエリートたちが詰めている場所は首相官邸。警視庁なんかは三つのクラブがある。読売や朝日など「六社」が加盟する「七社会」。サンケイなどが名を連ねるのは「警視庁記者倶楽部」。テレビ朝日やフジテレビなど民放が加盟する「ニュース記者会」。どうして三つものクラブがあるのか、経緯は不明らしい。厚労省や国交省などにもお抱えのクラブが存在しているが、最近ではどうもその加盟社たちの動きがおぞろ見えにくい。
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聞くべきことを、なにも聞いていないじゃないかと「物言わぬテレビ」に向かって吐き捨てたことが何回あるか。我が国の舵取りをする首相の記者会見に名を連ね質問する各社。事前に「質問通告」を幹事社を通して首相側にぶつけているという。国会の答弁じゃあるまいに。直球の質問をするような真似をすれば、なんでも幹事社たちから爪弾きにされるという。
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事前通告そのものが悪いとは思わないが、想定問答を形通りに読み上げるだけなら、なんのための新聞記者なのだろう。首相や官房長官の定例会見で想定外の質問をぶつけても、相手側は答えないし記者からは煙たがられるというから、まさしくこの国の終わりを露呈しているようにしか思えない。いわずともジャーナリズムには権力を監視する役割が期待されているのに、前述のようなことがまかり通っている今の有り様はジャーナリズム、さらには民主主義の自殺と言っても過言ではなかろう。
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かつてその「諸先輩」方は首相の会見拒否に断固たる怒りの意思を見せて会見をボイコットし、翌日の紙面には「こんな首相を七年も」と政治面に大見出しで飾られた。警察の横暴に対しても【声明】から始まる大見出しの記事が踊った時代があった。今の新聞記者は右も左も関係なく、ただのサラリーマンに成り果てた。なにも期待することはない。加盟各社に思うことは、正直なところなにもない。期待もしないし失望もしない。