口利きに物価高に

 今も昔も口利きはどうも本人の考えを超えてしまう。就職くらいの口利きならともかく、政治の世界の口利きは、場合によってはクビが吹っ飛びかねない。遠山清彦元公明党衆院議員は数年前、融資の口利きをする代わりに謝礼を受けとる、まるでサラ金まがいの業を為して馘首された

 ▼またかと呆れ顔になる。元国交次官の本田勝・営団地下鉄総裁が、空港施設の副社長を昇格させろと求めた。親切心故か、強健を振りかざしたかったか当人のみぞ知るが、まさか表沙汰になるとは思いもしなかったろう。もちろん、うわべだけの釈明に奔走している。疑獄事件でないにしろ、雲の上の人々の権力争いの報せは、日々の食費にさえあえぐ庶民の耳に相当不快に飛び込んできた

 ▼雲の上の人々には、どうも庶民の暮らしぶりが目に見えてないか、あるいは声が届いていないように感じる。先週、政府は重い腰を上げて、鳴り物入りで物価高等対策を始めた。三本柱は一に地方自治体への交付金配布。二に低所得世帯の子ども向けの五万円給付。三はコロナ対応した自治体や医療機関への包括支援金。そのほか、低所得世帯には三万円が給付されるという

 ▼そんな政府の対応むなしく連日、物価は狂乱の様相でぶち上がる。去年二百円の卵は今年、三百円に迫る勢いをみせ、日々の食料品、生活雑貨までもが高値を更新していく。電気代も上がり続け、家計を圧迫し続けている。ついには電気を消そう、蛇口を絞ろう、ガスを節約しよう、エアコンを消そうといいはじめた。足らぬ足らぬは工夫が足らぬのあの時代にでも回帰したのか。大企業ならともかく民間中小の賃金は上がらず、財布の中身が足らぬではもはや打つ手なし。万事休した家庭も少なくなかろう

 ▼庶民に配ればどれほど助かるのか、そうぼやかざるを得ないほど海外にはカネをばらまく割に、平気で国内向けには財布のヒモを締めている。今この時に人々が求めているのは、ガラス張りの政治でも、スピード感のある政治でもなんでもない。明日を生きるための血液、カネが必要なのだ。雲の上の首相以下も、ためしに地方都市のアパートだけを日がな一日、ひたすら足を運んで普通の家庭の暮らしぶりを聞きに行き、目にするくらいの真似をしたらどうなのか

 ▼自民党のお代官様に、国民へカネを配るように口利きをしていたら、遠山元衆院議員は今頃「遠山の金さん」とでも呼ばれていただろうに。

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