【観劇感想】だいもんの魂はずっとタカラジェンヌだ!(望海風斗20thAnniversaryドラマティックコンサート「Look at Me」)
宝塚歌劇団を観に行くようになって7年ほど経つ。
インドアな私が面倒くさがらずに出掛けていく唯一の趣味である。
しかし7年も経つと、見始めた頃に在団されていたタカラジェンヌも多くは卒業(退団)されている。
芸能活動から引退される方もいるが、退団後も舞台などの様々な場所で活躍してくれる方も多くいる。
先日、望海風斗(現ワタナベエンターテイメント所属)の芸能活動20th記念コンサート「Look at Me」が開催された。運よく友人がチケットを取ってくれたので一緒に観劇に行った。
望海風斗(愛称・だいもん)は2017年に雪組トップスターに就任し、2021年に退団した。花組時代から観劇していた私は退団の報に寂しさを覚えたのも記憶に新しい。
だいもんの舞台を観に行くのは退団後すぐに開催された「エリザベートガラコンサート」以来である。本当は「ガイズ&ドールズ」のチケットもあったのだが、新型コロナウイルスのせいでチケットは紙屑と化した……。恨めしき新型コロナ。
(以下、コンサートのセットリストなどにも触れるため、ネタバレが困る方はご注意ください。)
コンサートを観に行って思ったのは「やっぱりだいもんの歌声は生で聴くのが1番!!」ということだ。
国際フォーラムの天井を突き抜けんばかりの美声。男役から離れて、女優として活躍してもなお力強くて圧巻のパワーは健在で、ダイレクトに心に響いてくる、これぞだいもんの歌声!大好き!と聴いているだけで心が躍った。
演劇仕立てのコンサートということもあり、ほぼ出ずっぱりで歌いっぱなしだった(なんと舞台上で衣装替えまでする!マルチタスクすぎる!)が、それでも最後までハリのある美声を響かせていた。すごいよだいもん……。
コンサートでは大まかにミュージカル音楽、往年の有名ソング、だいもんの演じた舞台の曲といったセットリストであった。
以前から昭和の歌謡曲や演歌は歌が上手い人が歌うと響き方が違うなと思っていたが、このコンサートでも改めてそう感じた。
(しかし藤井風の「帰ろう」は昭和歌謡でも演歌でもないのに、なぜかすっごく昭和歌謡みを感じた。)
とりわけ感動したのが「エリザベート」の「最後のダンス」!上述した「エリザベートガラコンサート」では、だいもんは花組Ver.に宝塚時代に演じたルキーニとして出演もしていたが、アニバーサリーVer.として宝塚時代演じてことはなかったトートとして出演する回が予定されていた。ずっと「だいもんのトート閣下観たいなー」と思っていた私としてはこれは外せない回だ!と意気込んでいたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、その回は無観客配信という形になった。おのれコロナ……。やはりお前だけは許せぬ。
配信も観たしBlu-rayも購入したが、生で聴きたかった「エリザベート」の楽曲を、ついに生で聴くことができたのだ!これはとても嬉しい。
トートという役柄も、劇中では男性としてのイメージで演じられているが、本来的には「死」という存在なので、女性の姿で歌うことにもそんなに違和感がなく観ることができた。
なによりも、だいもんの歌声の力強さ、トートとしての感情の入れ方が、性別を超越した「死」という存在であるトートそのものであり、性別を超えた存在は宝塚の男役の姿でもあった。歌声に男役であっただいもんの魂が宿っているように感じた。
驚きなのがパンフレットのロングインタビューで、だいもんは「幼いころ、祖父からは音痴だと思われており、小学校の先生からも音痴だ言われていた」というエピソードを明かしていることだ。
今ではあんなに歌が上手いのに!!
もしかして、ジャイアンもびっくりな音痴の私でもだいもんみたいに上手くなれるのかしら……と希望を持ちそうなエピソードであるが、分かっている。宝塚音楽学校に入学するまでに、在学中に、在団中に、退団後の舞台で、余人には想像できないほど努力していたからこその「今」であると。
宝塚の世界が大好きで、退団してしまうとたとえ芸能活動を続けてくれていたとしても男役を演じることは基本なくなってしまうことにいつも一抹の寂しさを覚えていた。
しかし今回だいもんのコンサートを観に行って、そこに確かに宿るタカラジェンヌの魂のような歌声を聴き、寂しさを覚えなくてもいいのだなと感じた。退団してもその人の人生に宝塚での経験はもちろん残っているし、男役トップスターだった魂は歌声やダンスやパフォーマンスのすべてに宿り、その後の人生と交わりながら生き続けている。そんな風に感じる良いコンサートだった。
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