【音楽の話】インストルメンタルを楽しめるようになった①

楽器の嗜みはなく、壮絶な音痴であるが、音楽は好きだ。
「音楽は好き」と言っているが、どうやら私は音声認識能力が著しく欠けているようで、メロディを覚えたり、楽器別に音を聞き分けたり、ましてそれを再現するのは不得手である。だから音痴なのだろう。
曲調?リズム?ビブラート?音程?原曲キー?コード?
……分からん!!カラオケではジャイアンといい勝負ができるだろうと思っている。
そういうわけで、今まで「この曲が好きだな」と思うのは主に歌詞やボーカルの歌い方、もっといえば声質に重きを置いていた感がある。

上記から察せられる通り、恥ずかしながら長年、インストルメンタル曲については楽しみ方がさっぱり分からなかった。認識力の乏しい人間にはインストルメンタルは楽器の「音だけ」なのでどうしたらいいのか分からないのだ。かろうじて歌詞のある曲のインストなら、カラオケのように自分の下手くそな歌を重ねて楽しむことはできた。しかし元々歌詞のない曲はどう楽しんでいいものかさっぱりだった。クラシック、ゲームのサントラ、映画の劇伴etc……。楽しみ方が分からない。楽器の「音だけ」だから。
初めてインストルメンタルというものに触れたときに、どうやら私は、楽曲に対して「歌声」と「楽器の音の塊」という認識しか持てないでいることが分かった。残念すぎる。
数々の偉大な作曲家がこんな奴を知ったら卒倒しそうだ。もしくはそんなクソみたいな存在(私のことである)には音楽のなんたるかは分からん!「音楽を好き」だなんて軽々に申すでない!と叱られそうだ。

しかしそんな音楽的素養ゼロのダメ人間にも、ここ最近、変化があった。
「音だけ」だと思っていたインストを楽しめるようになってきたのだ。さらには今まで聴いていた曲の聴こえ方が変わってきたのだ!
普通に今まで音楽を楽しんできた人にはなんのこっちゃ……当り前じゃね?と思うだろうが、私にはまさに革命ともいえる変化だった。

そのきっかけは2つあった。

まず1つのきっかけは、ずっと好きだった摩天楼オペラというバンドから得た。
摩天楼オペラは2020年に所属事務所から独立し、Vo.苑が代表を務める株式会社エーテルがサポートしていくというスタイルで活動している。
そのスタイルからか、メンバーが個々に様々なことを事務所という枠に囚われずに活動しているように見受けられる。(門外漢なので詳しいことは分からんが……。)
YouTubeチャンネルもあり、バンド公式とは別に個人個人がチャンネルを持ち、音楽に限らない配信活動をしたりしている。今や摩天楼オペラのスタイル云々に限らず、そういうバンドも珍しくないのかもしれないが。ともあれ第一線で活動しているバンドなのにメンバーが元気に動画をちょくちょく上げてくれる。ファンとしてはありがたい。

私が摩天楼オペラを好きになったきっかけは苑さんの歌声がとても素敵だったからである。苑さんは摩天楼オペラの楽曲の作詞も担当しており、苑さんが紡ぐ言葉も好きだった。
もちろん演奏も素敵だ。すごいな、カッコイイなと思っていたが、なにせこちらは楽器の音を聞き分けたりは出来ないマン。細かいことは全然分かっていない。そんな奴に「演奏がカッコ良くて好きです!」と言われてもなぁ……有識者に「お前に何が分かるんだよ!」って思われそう……という気持ちは拭えなかった。
しかし、Dr.響くんのYouTubeチャンネルで、ドラムプレイスルー動画を見て、初めて「響くんが叩くドラムの音が好きだな」という気持ちを抱いた。
それまでずっとインストルメンタルが分からんの民であったので、「好きなバンドのメンバーが動画にしている」という機会でもなければ、楽器だけの演奏を自分から積極的に聴こうとは思わなかった。正直、好きなバンドのメンバーが弾いている動画であっても「楽器分からんしなぁ……」という気持ちだった。響くんの動画も最初は「ドラム分からんしなぁ……」と思っていたが、ドラムの演奏は動きが複雑でそれが面白くて観始めた。(どうでもいいが私には四肢で別々の動きをするという行為は神業に思える。)
観始めたら不思議なことに「(動きが面白いから、あるいはメンバーが好きだから)観ていたい」から「ドラムの音をずっと聴いていたい」と思うようになった。私としては驚きの気持ちだった。今までよく分からないと思っていた「音だけ」なのに。

そしてそれからいつものように摩天楼オペラの曲をなんとなしに聴いたら、ドラムの音が「分かる」のだ!響くんがプレイスルーしていなかった曲でも、演奏者が響くんでなくとも、さらには摩天楼オペラ以外のバンドの曲でも!
ユ……ユリイカっ!
今までこんなことはなかった。曲の「音」は様々な楽器が混然とした「音の塊」であったのに、ドラムの音がドラムの音として聞き取れる……!
というか世の人はこんな風に様々な楽器の音を聞き分けて、それらが重層的に響き合うのを理解して音楽を聴いているのか!ドラムの音がやっと聞き分けられるようになっただけなのに全然今までと違う……。今まで私は何を聴いていたんだろう……と愕然とした。
叶うことなら今のこの耳力(?)でエメさんのドラムを、エメさんのドラムだけで聴く機会が欲しいと思ってしまった。人間は強欲な生き物だ。

自分の中でどうしていきなり聞き分けられるようになったのかは分からない。単純に上手い人の演奏するドラム動画をたくさん聴いたから耳(音声認識能力)が微力ながら向上し、学習しただけかもしれない。ほかの楽器も学習を重ねれば聞き分けられるようになるのかもしれない。
ただ、響くんの動画で感じた「この人の叩くドラムの音が好きだな」という感覚がやっぱり大事なんじゃないかと思う。
そのきっかけを得られなければ学習できるほどたくさん聴けはしない気がする。

こうして、いまいちインストルメンタルを楽しめない・楽器が分からないマンである私は、「音だけ」の音楽を楽しむ第一歩が踏み出せた。
ありがとう摩天楼オペラ……ありがとう響くん……。

もう1つのきっかけはまた後日まとめたい。



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