#3 絶滅が危惧されている?B面集について語りたくなるスピッツとOasis
つい先日、スピッツのキャリアの中の3枚のアルバムがアナログ化リリースされました。自分も例に漏れず、特に大好きで今も聴いている、“花鳥風月+“(元々リリースされていた花鳥風月に、極初期の未発表テイクを追加して“+”となってますね)をオーダーしました。
スピッツってバンドは、ブレイク後のタイミングで自身の初期バックカタログをアナログリイシューしており、当時全部買い揃えるほどの財力もなかった僕は、特に自分にとって大切な2枚のアルバム、1st“スピッツ“と2nd”名前をつけてやる“のアナログ盤を必死で購入し、今でも大切に持っています。このリイシューのアナログ盤には、ボーナスとしてアルバムごとに別々の漫画家さんがスピッツの曲をテーマとして描いた1枚のショートストーリーが入っていたんですよね。で、1st“スピッツ“の担当は自分のオールタイムベストと言える漫画家、よしもとよしともさんが曲タイトルを使った“夏の魔物“を寄稿されていて、それも含めて大切な宝物なので、本当に自分が死んだら一緒に墓に入れてほしいものなのであります。ちなみにスピッツの1stと2ndは本当にロック史に残るべき名盤だと思ってますが、じゃあ自分が一番好きなアルバムは何かと聞かれると石田小吉プロデュースの“8823“だと答えるんですけど、今も聴いてる頻度が高いアルバムは何かと聞かれると、この初期のシングルのB面曲と提供した曲のセルフカバーをまとめた“花鳥風月“と答えてしまうくらい、本当に素晴らしい楽曲が多数収録されてます。もちろんいろんなタイミングや製作の経緯が違う曲が含まれてるんで統一感があるわけでもなくて、いわゆる“名盤!“とかいうのとも違うんですが、個々の楽曲がどれも素晴らしすぎるとしか言いようがないんですよね。全曲サイコーなんですけど、特に“流れ星“から“猫になりたい“までの冒頭6曲がもう全部ベクトル全く違うのにどれも名曲っていう奇跡が起きてて、すごいとしか言いようがないんです。普段割と散文的な歌詞を書く印象のマサムネさんの、結構しっかりしたステートメントみたいなものがリリックに入った曲たちをこうしたB面曲に入れるのも何だか“らしい“ですしね。
音楽のリリース形態が従来のものからどんどん移り変わっているストリーミング時代になった2021年の現状では、そもそも曲リリースする時にB面となる曲が同時に出る必要もなくて、このB面集みたいなコンセプトってどんどん成り立たなくなるんじゃないかと、まあそんな風にあたりまえに思うのですが、それってちょっと寂しいよなぁ、みたいな事も思ったりするんですよね。キャリアのポイントやタイミング、収録されるアルバムのコンセプトとの齟齬などから切り離され、もしかしたら世に出ることも叶わないこうした楽曲に触れられないのは、残念でしかないなぁ、と。時代のいたずらで、自分が“俺のすべて“や“猫になりたい“みたいな一生好きな曲たちに出会えなかったとしたら、それはやっぱり残念でしかないわけで。
で、B面集といえばもう1枚、花鳥風月と並んで語りたくなるのがこのアルバム、Oasisの“The Masterplan“ですよね。
Oasisももちろん、ロックの歴史に名前を刻んだ偉大なバンドとして認識されてると思うし、1stや2ndはこれからもいろんなところで聴かれ、語り継がれるのは間違いないでしょう。追体験としてそれでもちろん間違ってないし、全然いいんですけど、Oasisをリアルタイムで体験した僕は、やっぱり当時リリースされるたびに12cmのシングルをどうしても買わなきゃいけない、そんな気持ちを駆り立てられ続けた奇跡みたいなB面曲をまとめたこのアルバムについても語り継ぐべき、という謎の使命感みたいなものがずっとあるんですよね。
(Oasisの1st/2nd 期のシングルボックス、これ欲しかったけど高すぎて買えんかったなぁ…この装丁の元ネタになってるBenson&Hedgesのタバコに憧れすぎて、一時ヨーロッパに行くたびに1カートン買って帰ってきて悦に入ってた、まあ思い出です)
このアルバムもスピッツの“花鳥風月“と同じで、なんかノエルがサラッとアコギで歌ってみたみたいな“Talk Tonight“とか(またそれがサイコーってのがアレなんです)、ストリングスが鳴り響くコーラスがいかにもOasisなタイトル曲“The Masterplan“もいいし。あと何と言ってもやっぱ冒頭の“Acquiesce“、他にはあんまりないですが、ヴァースをリアムが歌った後で、無茶苦茶エモい歌詞をスイッチしたノエルが歌うこの曲は、自分の記憶ではキャリア後期でもライブの結構いいタイミングで演奏され、ファンの大合唱を誘う重要な曲で、Oasisのベストソングを挙げろって言われたら、迷いなくこの曲の名前を言うでしょう。でまあ、そんな曲が“Some Might Say“のシングルにB面としてサラッと入ってたんですから、どんだけ奇跡が起こってたか、って話なわけで。
まあ、最近はこういうシングルしかリリースされてない曲とかシングルのB面の曲とかは、アルバムのリマスタリングとかリイシューのタイミングで無理やりボーナストラックとしてアルバムに収録されてるので、聴くきっかけが全くないわけじゃないと思うのですが、Oasisとかスピッツとか、B面集を作ってもこれだけ曲が、普通のじゃなくてすげー曲をたくさん作れるバンドは、やっぱ偉大やなぁ、と、そんなことを思うんです。
…とここまで書いてみて、そういえば自分の名前にもしてるローゼズのこの曲も、Weezerの中で1番好きなこの曲も、シングルとかB面でリリースされてることに気づいてしまった。
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