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#9 偉大なるテクノおじさん、電気グルーヴの話

 2022年5月末、何の前触れもなく突然電気グルーヴの過去のMVがYouTubeに公開されましたね。逮捕されたり有罪判決を受けたりで、色々あってレコード会社からも独立、一時ストリーミングでも聴けなくなったりしてたんで、今回クソ最高な過去の映像が一気に観られるようになって、勝手にブチ上がって雄叫びをあげましたよね?よね?
 キャリアを通じてそのストイックな音作りとそれを全部台無しにするみたいな悪ふざけを行ったり来たりしながら、1989年のデビューから30年以上(‼︎)のキャリアを築いた、偉大なるおじさん達の歩みにリスペクトを捧げようと思って書きはじめたら、結果めちゃくちゃ長くなってしまった… 極めて身勝手なベストMV、暇な時にでもお付き合いください。

N.O.

自分が電気グルーヴを最初に認識したのは実は音楽そのものではなくて、今では伝説になってるともっぱら噂の“オールナイトニッポン“。ちょうど中学生で深夜ラジオにハマり出した頃で、火曜の夜中のオールナイトニッポンを担当してたのが電気グルーヴだったんですよね。今ではその頃からいろんな海外のテクノやニューウェーブをかけて紹介してたってのも理解してるんですが、当時はとにかく下ネタ満載のくだらなすぎるトークが面白すぎて、何か“話がむちゃくちゃ面白い人たちが、音楽もやってるらしい“っていう認識だったんですよね。で、その頃リリースされて初めて好きになったのが“N.O.”でしたね。

 いやぁ、いい曲ですね。今でこそフロアが似合うダンスミュージックが彼らの代名詞ですけど、特にまりん在籍時のこの頃は、自分がまだクソ田舎に住んでたただの中学生だったこともあって、”なんか面白い音を奏でる変な人たち”っていうくらいの認識だった気がしますね。

 リリースから15年以上経った2006年、フジロックのグリーンステージで初めて電気のライブを体験、セットの最後の方でこの曲が演奏された時、割と真剣にマイクを持って歌ってた卓球を目の当たりにして、むちゃくちゃ久々に聴いたはずのこの曲のラップパートがすらすら出てきたのが思い出されます。

タイトルは彼らのルーツ、ニューオーダーから付けられているってのも有名な話で、この曲の冒頭から鳴り響く単音のリフはまさにニューオーダー、ですよね。

Shangri-La


 "N.O."が収録されたアルバム”VITAMIN”がリリースされたのが1993年で、自分の興味がギターロック的なものに移っていくに従って、一旦電気グルーヴの音楽を積極的にフォローする感じではなくなっていったんですけど、否応無しにポップシーンのど真ん中に鳴り響いたのが、多分今でも最大のヒット曲、と言えると思われるこの曲ですよね。1997年リリースされたアルバム ”A"からのリードシングル、この曲がリリースされた時の衝撃は今でも覚えてますね。普通にTVやFMでも流れまくってて、文字通りお茶の間を席巻してましたよ。

 しっかし、何でしょうねこれ。当時のインタビューとかで、真面目にヒット曲を作りたいとかってかなり真剣に話していたのも覚えてるし、実際シルベッティの”Spring Rain"からサンプリングしたこの感動的なストリングスが鳴り響く、今聴いてもサイコーな時代を越えるべき名曲やのに、一体なぜ?と思わざるを得ないこの超不気味なMVの内容。映ってるものを細かく解説はしませんが(笑)、いやーさすがです。

 で、アルバム”A" の大ヒットの後、卓球とまりんはそれぞれ”らしさ”全開のソロ活動に邁進、特に卓球はDJとして海外へも活動の場を広げていきます。今考えたらとても信じられないような、ベルリンの街に150万人が集まると言われた伝説のテクノイベント”Love Parade"で、卓球があのテクノクラシック、Underworldの”Rez”とミックスして電気グルーヴの”Niji”をスピンした瞬間の映像は、当時のテクノヘッズ(懐かしいなこの言葉)が全員涙を流したハズ。

 …とここまで書いてきて、オフィシャルに”Niji”のMVがないことに気づいてしまった。そうやったっけ?それでは、ベルギーのレーベルから出た12インチ収録のこのバージョンを代わりに貼っておきましょう。いやークラシック。


Flashback Disco〜Nothing's Gonna Change 


 ということで、各々のソロ活動を経て、よりフィジカルなテクノに向かっていく電気グルーヴと相反するようによりミニマルなサウンド作りに傾倒していくまりん脱退(まりんのその後のソロ活動もすごいんですよこれが)がアナウンスされた後、1999年後半に立て続けにこの2曲がリリースされた瞬間の興奮はもう、ヤバかったですよ。ちょうど自分のダンスミュージックへ傾倒していくタイミングとも相まって。

 ”僕の心はまるで衛星のよう、君の周りをぐるぐる回る”なんていう超メロウな歌詞のコーラスパートを持ったむちゃくちゃ素敵な名曲やのに、まじで何故こんなビデオになったのか…
 ちなみにこの2曲が収録された”VOXX”ってアルバム、当時むちゃくちゃ興奮してた記憶があって、今回久しぶりに聴いてみたけど今でも全然サイコーでした。バッキバキの低音と悪ふざけ。つまりはザ・真骨頂。

 Volcanic Drumbeats (Live)



 で、そのVOXXリリースの後に開催されたツアーの音源を収録したライブアルバム”イルボン2000”のバージョンのこの曲。元々は”A”に収録されてた曲ですが、当時ライブにサポートで参加していたDJ Tasakaのスクラッチを大胆にフィーチャーしてぶっ飛びそうになるほどカッコよくなったこの曲、そしてそのスクラッチに合わせて繰り出されるオモロ映像…あーヤバい。延々リピートしてしまうこと請け合いです。


 個人的に、むちゃくちゃ好きなダンスミュージックのユニットのライブアルバムってのが2枚あって。1枚はダフトパンクが1997年にリリースした”ALIVE1997”、こちらは割とアイデア重視な感じの音源をリリースしていたダフトパンクが、”そんなん出来るんや?”ってな具合にバッキバキの低音を響かせるところが最高なのですが、この電気グルーヴの”イルボン2000”はマジでそれとタメ張れるくらいの名盤だと思ってます。


聖☆おじさん feat. スチャダラパー


 いやー、公式からこの曲のMVも公開されるの嬉しすぎるなー。2000年代以降、一旦の活動休止を経たりしながらコンスタントに活動してきた電気グルーヴ、いくつか印象的なコラボもあって、特に同世代のスチャダラとのこの曲とこのビデオ。なんか好きなんですよこれ。ただの温泉旅行の映像ですけど。

 ビデオはないんですけど、コラボといえば特に卓球が七尾旅人とやってるのが結構イイんですよね。ディスコっぽいものもあるんですけど、割とメロウなものもあって、ダンスミュージックとはちょっと違った一面が垣間見えます。

 …とまあ、キャリアも長いのでなかなか網羅するのが大変な、とっても凄い事を色々やってのけたのに、溢れ出るくだらなさがそれらを上回ったりする、とっても最高なおじさん達。リスペクトを込めて、死ぬまでその活動を続けていただけるよう、密かに思いを馳せながらお別れです。

 長々と書いてきた文章にお付き合いいただいた感謝を込めて、最後にこれを書いている2022年段階での最新曲と、コロナ禍で始めたルーツを語る動画をどうぞ。いずれもやっぱり、音楽的にもすごく意義のあることをやりながら、ちょっと毒や棘もあり、結果ゲラゲラ笑ってしまうという、やっぱり彼ららしさ満載で最高のヤツなんです。


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