諤飜字式羅馬字&百足式分かち書き
槪要
『諤飜字式羅馬字』は日本語を羅馬字(alphabet)で書き表す表記法である。
基本的には假名文字と羅馬字が一對一に對應する單純飜字方式である。
獨自の文字表記を持つ我々日本人にとって、
羅馬字は飽くまで副次的なものである爲、
最低限の規則で運用可能なものを目指した。
基本方針
成る可く國語の考へ方をそのまま反映せしめる。
西洋の慣例は參考にするが、必要の無いものは輸入しない。
例外を減らし、少數の決め事から演繹的に處理可能な樣にする。
ASCIIで扱へるもので基礎を賄ひ、それ以外の記號は輔助的に採用する。
用途と特性
主に、固有名詞の讀み方を傳へたり、
短い文言を記述したりするのに
使用するヿを想定してゐる。
事情があって漢字や假名が使用できない場合や、
圖案の都合で羅馬字にしたい場合に活用できる。
英語への轉寫と云ふ側面の强いHepburn式と異なり、
假名を單純に置き換へる方式なので、日本人にとっては樂に習得でき、
「漢字や假名には不慣れだが、發音の基礎は把握してゐる」程度の
日本語初學者との遣り取りに役立つ可能性がある。
歷史的假名遣を前提にしてゐるが、
現代假名遣やそれ以上に表音式の假名遣への適用も原理的には可能である。
使用する文字種
和文は總て大文字を使用するものとする。
西洋の慣例では
文頭や固有名詞の頭を大文字に、
それ以外を小文字にするヿになってゐるが、
これは日本語にとって特に有意味なものではない爲、
蹈襲する必然性が無い。
大文字を主立って使用するヿには次の樣な利點がある。
縱書きに耐へる。
文字毎に縱の長さに違ひのある小文字を主に使用する所爲で、
歐文では單語全體を囘轉せしめて表示する方法が採られ、
結局縱書きそのものが嫌はれるが、
大きさが均等な大文字のみであれば、
文字自體を傾けずとも縱書きが可能である。
歐文を部分的に原語のまま取り入れる際の標となる。
これは丁度、漢字かな交じり文に於いて、
カタカナを外來語を表す標としてゐるのに相當する。
西洋語に由來する語に就いて、日本語特有の發音を示すのではなく、
原語の綴りをそのまま記述した方が傳達上望ましい場合に活用できる。
但し、大文字のみで記述せられる「頭文字を取った略稱」とは
相性が良くない爲、引用符を附す抔の工夫が必要になる。
使ひたければ小文字でも差し支へ無いが、
本記事では總て大文字を使用する。
文字對應表
基本的には『日本式ローマ字』と大きな差は無い。
ハ行にはFを當てゐるが、轉呼音にはHを當る。
促音「っ」はQ、撥音「ん」はXとした。
Qを促音に當るのは、日本語の音韻論からの借用である。
Xを撥音に當るのは少々强引であらうが、
促音も撥音も假名と一對一で對應するヿを優先せさせた。
Xは外國語轉寫で十中八九餘る文字で、
特殊記號として使はれ易い宿命にあるので、
他の餘り文字に較べれば增しな選擇だと思はれる。
ここを讓ってしまふと、apostrophe處理に氣を囘さねばならなくなるし、
單純飜字といふ基本方針からしても、割り切った方が良い。
Nに輔助記號を付けるのも考へたが、
ASCIIで簡易に扱へなくなるので、採用しなかった。
こちらが不便を被ってまで西洋の慣例に配慮する義理は無い。
Kを表す文字が四つもあって鼻音を表す文字が二つしかないのが惡い。
一般的なIMEの羅馬字入力でも
Nがナ行と撥音を兼ねてゐる爲に多少の不便があるので、
X(他の餘った文字でも可)に撥音を當ると云ふ點だけでも
採用價値はあると思はれる。
慾を言へば、清音に濁點を附す方式の方が、
連濁と云ふ現象のある日本語にとって都合が良いのだが、
ASCIIで扱へるものと云ふ制約の下に見送った。
猶、長音符は用意しない爲、同じ母音字を繰り返して表現するものとする。
直音・撥音・促音
$$
\begin{array}{|c:c:c:c:c|} \hlineあ & い & う & え & お \\ \hdashline \textrm{A} & \textrm{I} & \textrm{U} & \textrm{E} & \textrm{O} \\ \hline か & き & く & け & こ \\ \hdashline \textrm{KA} & \textrm{KI} & \textrm{KU} & \textrm{KE} & \textrm{KO} \\ \hline さ & し & す & せ & そ \\ \hdashline \textrm{SA} & \textrm{SI} & \textrm{SU} & \textrm{SE} & \textrm{SO} \\ \hline た & ち & つ & て & と \\ \hdashline \textrm{TA} & \textrm{TI} & \textrm{TU} & \textrm{TE} & \textrm{TO} \\ \hline な & に & ぬ & ね & の \\ \hdashline \textrm{NA} & \textrm{NI} & \textrm{NU} & \textrm{NE} & \textrm{NO} \\ \hline は & ひ & ふ & へ & ほ \\ \hdashline \textrm{FA} & \textrm{FI} & \textrm{FU} & \textrm{FE} & \textrm{FO} \\ \hline ま & み & む & め & も \\ \hdashline \textrm{MA} & \textrm{MI} & \textrm{MU} & \textrm{ME} & \textrm{MO} \\ \hline や & & ゆ & 𛀁 & よ \\ \hdashline \textrm{YA} & & \textrm{YU} & \textrm{YE} & \textrm{YO} \\ \hline ら & り & る & れ & ろ \\ \hdashline \textrm{RA} & \textrm{RI} & \textrm{RU} & \textrm{RE} & \textrm{RO} \\ \hline わ & ゐ & & ゑ & を \\ \hdashline \textrm{WA} & \textrm{WI} & & \textrm{WE} & \textrm{WO} \\ \hline ん & っ & & & \\ \hdashline \textrm{X} & \textrm{Q} & & & \\ \hline が & ぎ & ぐ & げ & ご \\ \hdashline \textrm{GA} & \textrm{GI} & \textrm{GU} & \textrm{GE} & \textrm{GO} \\ \hline ざ & じ & ず & ぜ & ぞ \\ \hdashline \textrm{ZA} & \textrm{ZI} & \textrm{ZU} & \textrm{ZE} & \textrm{ZO} \\ \hline だ & ぢ & づ & で & ど \\ \hdashline \textrm{DA} & \textrm{DI} & \textrm{DU} & \textrm{DE} & \textrm{DO} \\ \hline ば & び & ぶ & べ & ぼ \\ \hdashline \textrm{BA} & \textrm{BI} & \textrm{BU} & \textrm{BE} & \textrm{BO} \\ \hline ぱ & ぴ & ぷ & ぺ & ぽ \\ \hdashline \textrm{PA} & \textrm{PI} & \textrm{PU} & \textrm{PE} & \textrm{PO} \\ \hline \end{array}
$$
ハ行轉呼音
$$
\begin{array}{|c:c:c:c:c|} \hline は & ひ & ふ & へ & ほ \\ \hdashline \textrm{HA} & \textrm{HI} & \textrm{HU} & \textrm{HE} & \textrm{HO} \\ \hline \end{array}
$$
※區別の必要が無ければ、不使用とする。
拗音甲
$$
\begin{array}{|c:c:c:c:c|} \hlineきゃ & & きゅ & きぇ & きょ \\ \hdashline \textrm{KYA} & & \textrm{KYU} & \textrm{KYE} & \textrm{KYO} \\ \hline ぎゃ & & ぎゅ & ぎぇ & ぎょ \\ \hdashline \textrm{GYA} & & \textrm{GYU} & \textrm{GYE} & \textrm{GYO} \\ \hline くゎ & くゐ & & くゑ & ぐを \\ \hdashline \textrm{KWA} & \textrm{KWI} & & \textrm{KWE} & \textrm{KWO} \\ \hline ぐゎ & ぐゐ & & ぐゑ & ぐを \\ \hdashline \textrm{GWA} & \textrm{GWI} & & \textrm{GWE} & \textrm{GWO} \\ \hline しゃ & & しゅ & しぇ & しょ \\ \hdashline \textrm{SYA} & & \textrm{SYU} & \textrm{SYE} & \textrm{SYO} \\ \hline じゃ & & じゅ & じぇ & じょ \\ \hdashline \textrm{ZYA} & & \textrm{ZYU} & \textrm{ZYE} & \textrm{ZYO} \\ \hline ちゃ & & ちゅ & ちぇ & ちょ \\ \hdashline \textrm{TYA} & & \textrm{TYU} & \textrm{TYE} & \textrm{TYO} \\ \hline ぢゃ & & ぢゅ & ぢぇ & ぢょ \\ \hdashline \textrm{DYA} & & \textrm{DYU} & \textrm{DYE} & \textrm{DYO} \\ \hline にゃ & & にゅ & にぇ & にょ \\ \hdashline \textrm{NYA} & & \textrm{NYU} & \textrm{NYE} & \textrm{NYO} \\ \hline ひゃ & & ひゅ & ひぇ & ひょ \\ \hdashline \textrm{FYA} & & \textrm{FYU} & \textrm{FYE} & \textrm{FYO} \\ \hline びゃ & & びゅ & びぇ & びょ \\ \hdashline \textrm{BYA} & & \textrm{BYU} & \textrm{BYE} & \textrm{BYO} \\ \hline ぴゃ & & ぴゅ & ぴぇ & ぴょ \\ \hdashline \textrm{PYA} & & \textrm{PYU} & \textrm{PYE} & \textrm{PYO} \\ \hline みゃ & & みゅ & みぇ & みょ \\ \hdashline \textrm{MYA} & & \textrm{MYU} & \textrm{MYE} & \textrm{MYO} \\ \hline りゃ & & りゅ & りぇ & りょ \\ \hdashline \textrm{RYA} & & \textrm{RYU} & \textrm{RYE} & \textrm{RYO} \\ \hline \end{array}
$$
拗音乙
$$
\begin{array}{|c:c:c:c:c|} \hline& すぃ & & & \\ \hdashline & \textrm{SHI} & & & \\ \hline & ずぃ & & & \\ \hdashline & \textrm{ZHI} & & & \\ \hline & てぃ & とぅ & & \\ \hdashline & \textrm{THI} & \textrm{THU} & & \\ \hline & でぃ & どぅ & & \\ \hdashline & \textrm{DHI} & \textrm{DHU} & & \\ \hline てゃ & & てゅ & & てょ \\ \hdashline \textrm{THYA} & & \textrm{THYU} & & \textrm{THYO} \\ \hline でゃ & & でゅ & & でょ \\ \hdashline \textrm{DHYA} & & \textrm{DHYU} & & \textrm{DHYO} \\ \hline つぁ & つぃ & & つぇ & つぉ \\ \hdashline \textrm{TWA} & \textrm{TWI} & & \textrm{TWE} & \textrm{TWO} \\ \hline ふぁ & ふぃ & & ふぇ & ふぉ \\ \hdashline \textrm{FWA} & \textrm{FWI} & & \textrm{FWE} & \textrm{FWO} \\ \hline ふゃ & & ふゅ & & ふょ \\ \hdashline \textrm{FWYA} & & \textrm{FWYU} & & \textrm{FWYO} \\ \hline & & & いぇ & \\ \hdashline & & & \textrm{YHE} & \\ \hline & うぃ & & うぇ & うぉ \\ \hdashline & \textrm{WHI} & & \textrm{WHE} & \textrm{WHO} \\ \hline \end{array}
$$
拗音丙
$$
\begin{array}{|c:c:c:c:c|} \hlineゔぁ & ゔぃ & ゔ & ゔぇ & ゔぉ \\ \hdashline \textrm{VA} & \textrm{VI} & \textrm{VU} & \textrm{VE} & \textrm{VO} \\ \hline ゔゃ & & ゔゅ & & ゔょ \\ \hdashline \textrm{VYA} & & \textrm{VYU} & & \textrm{VYO} \\ \hline \end{array}
$$
拗音に關する補足
現在の拗音は槪ね
「一文字目の子音と二文字目の母音を組み合はせた音」を表す
と云ふ仕組みに成ってゐる。
之は詰まり、
元來音節文字である假名を羅馬字と似た使ひ方をしてゐると云へる。
一文字目の母音はそれ自體が重要ではなく、
その音節に結び附いた子音を指す爲に選ばれてゐる。
五十音圖上の同じ行にあっても
イ段やウ段の子音が異音となるものがあるヿを前提にして、
別の母音を宛ふのだ。
そこで、
Yはイ段の異音を表し、Wはウ段の異音を表すものとして統一を圖った。
逆に、
通常は異音であるイ段やウ段にその行の標準の子音を宛ふ拗音は、
一文字目の假名が異なるとしても意圖は同じと見做し、之にHを當た。
飜字法としては少々例外的に見𛀁るかも知れないが、
拗音の性質を鑑みた上での判斷である。
此等の法則を當て嵌めれば表に無い拗音も再現可能であるが、
一般に使用しさうにないものは割愛した。
輔助記號
apostropheによる分離
母音が連續してゐるが長音化しない箇所では、
先行する母音の直後にapostrophe(')を置くヿで讀み間違ひを防ぐ。
tildeによる撥音の强調
Xに撥音を割り當る違和感を輕減せしめる爲に、
鼻音を仄めかす記號であるtilde(~)を添へ「X̃」と記述する。
circumflexによる長音化の明示
母音が連續して長音化する箇所は、
先行する母音字にcircumflex(^)を附加するヿで、長音化を明示する。
umlautによる母音轉呼の明示
歷史的假名遣で「アウ/アフ」の綴りは通常オ段長音となるが、
極一部に「アオ」と發音する例外がある。
Uの上にumlautを附加するヿで、之を明示する。
字音假名遣用の擴張
Xの代はりに、N/Mを使って韻尾の鼻音を區別するヿができる。
但し、次にア行ヤ行ワ行が續く場合はapostropheを付ける。
イ/ウにogonek(˛)を附加するヿで韻尾ŋに由來するものであるヿを明示する。
分からなければ無視できる樣に、目立ちにくい記號を敢へて選んだ。
辭書によっては次の樣な字音假名遣を採用してゐるものがある。
・兄 = クヰャウ
ワ行とヤ行の二重拗音。
拗音を二重に處理すれば一往解決できる。
・春 =スヰン
飜字自體は問題無いが、讀み方は如何ともしがたい。
umlautを付けて御茶を濁しておく。
百足式分かち書き
分かち書きとは、單語を空白文字で區切るヿで、讀み易くする手法である。
固有名詞や二三の單語を記述する場合には然程問題にならないが、
文章を書く際にはどの樣に分かち書きするのかを考へる必要がある。
茲では私の思ひ附いた手法を紹介するが、
文字表記そのものとは獨立したものなので、採用は任意である。
諤飜字式羅馬字に對して、
他の羅馬字の分かち書き手法を採用するヿも可能である。
發案經緯
西洋語に倣って單語毎に區切らうとすると、
動詞から連なる助動詞群を如何に捌くべきかが問題になる。
總てを區切れば、何處から何處までが一繫がりか判然としないし、
全く切らなければ十文字や廿文字の塊が出來てしまひ、
分かち書きの體を成さなくなって仕舞ふ。
之は膠着語と云ふ分類を持つ日本語の特徵であり、
この點に就いて西洋語は參考にならない。
はて、ファミコンを思ひ起こせば、
假名の分かち書きに茲まで惱む處があった樣には思はれない。
そこで、假名の分かち書きで使はれる文節區切りを
羅馬字に適用できないかと考へる。
實際に試してみると、用言の連なりは上手く切れず、
體言の方は助詞との境界が曖昧になり、寧ろ狀況は惡化した。
かうなる原因は字數だらう。
羅馬字は子音字と母音字に別れてゐるので、
假名から羅馬字にすれば字數が倍增する。
閉音節や連續子音を持つ西洋語にとっては合理的な體系だとしても、
日本語には字數が膨れる短所が大きく響く丈なのだ。
畢竟、羅馬字で日本語を書き綴らうと云ふのが間違ひである。
發音と文法に對して、文字體系の相性が惡過ぎる。
茲で已めても良かったのだが、諦めずに折衷案を考へる。
文節で區切った後に
體言と助詞の間に別の區切り文字としてhyphenを加へてみた。
此ならば、文節の纏まりと體言の獨立性が兩立できる。
謂はば二段階の分かち書きである。
この二段階の分かち書きと云ふ發想があれば、
用言の連なりにも對處できさうである。
試しに總ての助動詞を區切ってみると、
多數の節を持つ蟲の如き記述が生まれた。
百足式分かち書きの誕生である。
百足式分かち書きの基本
基本的には文節ごとに空白文字/space( )を使って區切る。
其れに加へて、二段階目の區切り文字としてhyphen(-)を用ゐる。
之により、基本的に空白文字の直後は自立語が來て、
それにhyphenを伴って附屬語が連なると云ふ構圖が出來る。
所謂「形容動詞」の語幹を體言と同列の扱ひとする。
輔助動詞や輔助形容詞や形式名詞を附屬語と同列とし、
述語を一つの塊と見做す。
讀み易さを考慮して、適當な場所にhyphenを追加するものとする。
日本語の總てを網羅する樣な細かい規則は、私からは提供できない。
さういふ意味でこの規則は未完成とも云へるが、
抑〻漢字や假名を棄てて羅馬字に乘り替へる抔と云ふヿを
目指してゐる訣ではないので、網羅的な規則を作る必要が無いし、
作った處で讀むに堪へぬ長文が出來上がると見込まれる。
下に幾らか例文を用意したので、參考にはなると思ふ。
「この語は切る、この語は切らない」と云ふ語彙的な決め方では
附屬語に對して有效な對處は出來ないと考へる。
日本語の助動詞は組み合せの自由度が高い一方で
繫がる順番には決まりがあるので、
有力な組み合せを見つけて一塊とすると云ふ方向で考へた方が良い。
分かち書きの目的が讀み易くするヿにあるとするならば、
特定の語の表記を一定せしめるヿに拘るべきではない。
當初の全單語で切る方式は
到底讀み易いと思へなかったので採用を見送った。
書く分には迷ひが少なくて濟むし、
若しかすると慣れれば便利な面もあるかも知れないが、
其處まで檢證する豫定は無い。
分かち書きの前提として「何が單語なのか」と云ふ判斷が必要になるが、
私一人の手には餘るので、手を付けない。
「國語辭書の見出しに上がるもの」と考へればひとまづ十分だらう。
因みに辭書に「連語」と書いてある言葉は狀況に應じて、
一語として扱ふか、それ自體を節として分解するかを
惱んで考へるしかない。
通常の文章に就いて我々が分かち書きをせずに濟んでゐる現狀は、
この問題を永遠に先送りに出來ると云ふ點で、幸せだらう。
實際、その區分は曖昧なのだ。
角括弧による塊の明示
複數の文節から成る塊(主に連體修飾節とその修飾を受ける體言)を
一纏めにして、文の構造を見易くする。採用は任意。
修飾語が少數の場合は
括弧を使はずに空白をhyphenに置き換へると云ふ方法も採れるものとする。
複合語の明示
複合語の要素境界に二重hyphen(=)を置くヿで
複合語の塊とその成分を明示するヿが出來る。
場合に依ってはhyphenで間に合はせても良い。
語ごとに複合語か否かを決定し
一環した表記を目指さうとすると剩りにも不毛なので、
あった方が讀み易さうだと思った時に追加すれば十分だらう。
例文集
飽くまで執筆時點の私が適當と判斷した結果でしかないので、
細かい點は各自に任せる。
輔助記號は全部入りにしておいた。
この長さの漢語になると二重hyphenがあった方が良ささうだ。
切り方が合ってゐるのかは不明。
假名書きでは「えない」の前で切れば十分だが、
羅馬字では其處を切っても不十分な氣がしたので、まう一箇所切った。
文語文法を考へれば、「ざるを」の後に空白を置くのもアリだが、
事實上は附屬語相當の慣用句となってゐるので、hyphen繫ぎとした。
格助詞の前にhyphenが入るので、
修飾語がある場合は括弧があった方がしっくり來る。
「かもしれない」は附屬語相當として繫いだが、
少し長いので、「かも」でも切った。
「氣がする」は附屬語相當として處理したが、
「が」の位置に係助詞が來るヿも考慮して「KI-GA-SURU」の形で
連體修飾節を受ける複合動詞として扱ふ方が汎用性は高いと思ふ。
「ない」と「た」の組み合はせ(なかった)は區切りを入れる有力候補。兩方とも用言聯結の後ろの方に來るし、
所謂カリ活用で餘分に長くなるのもあって、塊として切り出し易い。
「傳家の寶刀」を一つの複合語として二重hyphenを附すよりも、
括弧を使った方が見易かったのでさうした。
「埓が明かない」は一つの形容詞の樣に捉へるヿも出來るが、
ここでは他に主語が無かったので、單文として處理した。
「かうする」「さうする」抔は複合サ變とした。
複合サ變は動作を表す名詞に動詞化接尾辭として「する」が附いたもの
なので、複合語として=を使っても良いが、
附屬語相當としてhyphenにしておいた。
假名書きであれば「おちつかせられない」は未だ何とかなる長さであるが、
羅馬字で切れめ無しだと嚴しい。
「(さ)せる」と「(ら)れる」が兩方出現する場合は、
「られる」の直前を切ると良いと思ふ。
この二つは繫がる順番が早く、動詞との結合度も高いので、
片方しか出現しない場合は切らぬ方が良からう。
文語の例も入れてみた。
「歌なり」の主語はその手前全部なのだが、
そこまで括弧が長くなると役に立たないので、付けるのは已めた。
諤飜字式は古代の發音を直接再現しない。
之は歷史的假名遣も同じ。
「無きにしも非ず」の樣に實質引用文の樣な使ひ方をする慣用句には、
引用符を付けた方が良ささうである。
「筈が無い」は「氣がする」と同じ樣な構成の表現。
述語が名詞の場合、「の」の後はhyphenにするよりも、
連體修飾として空白にした方が見易さうだったのでさうした。
臨機應變に。
私の「そんな」の切り方が變なのではなく、
「そんな」の活用が變なのだ。
「的」の樣な接尾辭は英語基準ではhyphenを付けぬらしいが、
有った方が良いと思ったので付けた。
「と」は狀況に應じて孤立せしめた方が良ささうだ。
今回は引用符があるが、無くても複數の文節を受けるヿがある。
二重hyphenは複合語の爲に導入したが、
固有名詞にも役立つ。
「身を以て」は副詞として機能する連語。
格助詞「を」があるからと云ってバラバラにしても仕方が無いし、
全部一繫がりとしても見易くはないと思ったので、この形にした。
外來語をそのままの形式で取り込む例文が無かったので書いておいた。
一般的な英語辭書では「smartphone」と直結表記するものらしい。
空白を含む二語以上の場合は角括弧を付けるか、
複合語の處理のみ原語を無視して=を使ふ抔の割り切りが必要だらう。
接頭辭の「御(お/ご)」は丁寧さの表現に過ぎず、
自立語の獨立を優先せさせて區切りを入れるべきだと判斷した。
Xの便利さに慣れると、Nの後のapostrophe處理が一層面倒に感じられる。
(ここでは輔助記號を全部使ふヿにしたので字音假名遣の爲に施してある)
矢張り、接尾辭には=を付けるのが良ささうだ。
「我等」ぐらゐであれば、繫げても良ささうではある。
「~し(も/は/...)しない」は動詞に係助詞を係けるための構文であり、
附屬語相當としてhyphenで繫ぐのもアリだらう。
この例文では節内に主語も目的語も無かったので、空白でも問題無い。
「ことができる」は附屬語相當とした。羅馬字だとやけに長い。
百足式では空白の後は原則として自立語となるので、
一音節語の「野」も比較的判別し易い。
何だか碎けた文體の例文も欲しくなった。それだけ。
同じ母音が續く時に長音符號が必要かと云ふと微妙だが、付けておいた。
元來は形容動詞で、
活用が狹まって副詞や連體詞に分類せられる樣になった語は、
末尾が接續用の形態素として見出し易く、
通時的な觀點を取り入れた方が綺麗だと思ふ。