マレーシア・ジョホールバル飲食業界レポート ジョホールバルの流行 2014年から2018年(カフェとレストラン)
2014年当初から、ジョホールバルのレストラン情報のFacebook「ジョホールバルグルメ」
のアップデートを続けているのですが、これまで訪れた店は、述べ800店を超えました。(2018年2月現在の時点で)
その間、クアラルンプールでの、ハラルラーメン店の立ち上げと運営にも携わり、食材や食器、調理器具等のサプライヤーとの取引や調査などを通して、ジョホールバルの飲食業界についての情報も蓄積してきたので、飲食店のトレンドについて、ちょくちょくまとめてみたいと思います。
これからジョホールバルに進出を考えている飲食業社の方には、内容を参考にしていただき、それ以外の方には、「ジョホールバルに行ったら、こういうものが食べられるんだ〜」という程度に読んでいただければと思います。
ジョホールバル飲食店について
まさに成長期といった感じで、ものすごい速さで新しい業態やお店がオープンしては潰れる、の繰り返しです。
お店の出す料理のクオリティーの上昇も、ものすごい速さです。
例えば、4年前には、きちんとおいしいと感じられる洋食レストランや、アルデンテのスパゲティを出すレストランは1、2軒だったのに、この4年で、たいていのお店でまあまあおいしく感じられるクオリティになってきました。
国の発展とともに、お金を持つ人が多くなってきたのと、VISAの緩和により、海外旅行を楽しめる人が増えてきているので、本場で本物の味を食べたり見たりして、再現できるようになったことが、このクオリティの上昇スピードを加速させているのではないかと思います。
また、イギリスに留学する人も多く、英語の壁がないので、世界中のものをとりいれるハードルが低く、スピードが早いのではないかと思います。
新しい調理機械や食材、ブランドを海外から持ってこようとしたときに、スピード感をもって直接交渉したり、すぐにコンタクトがとれるのは、英語ができるマレーシア人の強みの一つではないでしょうか。
新しいお店がオープンすると、あっという間にSNSで評判が広まります。
口コミでよい評判が流れると、すぐに大勢が押し寄せ、行列ができますが、真似をする人もとても多いのです。
すぐに似たようなお店が乱立するので、お客はもの珍しさがなくなります。
真似をしただけの、商品やスタッフのクオリティが低い店だと、どんどん潰れていきます。
本来、人は食に対しては保守的なので、新しいものは定着するには、時間がかかります。
なので、行列ができて流行ってきたかな、というときに、質を落とさずに維持しながら続けていけば、新しいものでもブームから日常へと定着し、店は長く続けるほどに老舗の安定感がでてくるのですが、そこはマレーシア人。質を落とさずに同じことを続けるというのは、苦手な国民性なのでしょうか。
何年も続く店というのが本当に少なくて、1年前後でなくなる店ばかりです。
ジョホールバル飲食店 流行の推移
ジョホールバルの流行 2014年から2018年(カフェとレストラン)
2014年〜 おしゃれカフェブーム
ジョホールバルのローカルカフェは、コピティアムといって、入り口にドアがないオープンスタイルの店が多いです。
コーヒーや紅茶は40円から90円程度。
人が集まるところや街角にはたいてい何店舗かあり、インド系の店だと24時間営業です。
食事メニューは、トーストなどのパン類と、麺類、マレーシアの国民食であるナシレマなど、定番のメニューが並びます。
コーヒーは、豆の焙煎の工程から砂糖をまぶすので、ブラックコーヒーにしてもほのかに甘く、少しとろみがある感じ。
ですが、砂糖抜きのコーヒーや紅茶を頼む人はまずいなくて、普通にコピ(コーヒー)やテ(ティー)を注文すると砂糖とミルク入りです。
日本人や西洋人が思う、本格的なおいしいコーヒーを出すカフェというと、スターバックスは1999年からジョホールバルに上陸していました。
ですが、2014年初頭の時点で、マレーシア人がオープンさせた、本格的なコーヒーを出す内装にも凝ったおしゃれカフェは、ジョホールバルで数軒しかありませんでした。
おしゃれカフェの値段はブラックコーヒー一杯が250円から300円程度。
ミルク入りだと330円から400円越えなので、ローカルカフェとの値段の差はとても大きいです。
コーヒーの豆や抽出方法にこだわったおしゃれカフェは、若い人の間ですぐに人気が出て、出店ラッシュが続きました。
おしゃれカフェの先駆者である、コーヒーを愛する人たちが、バリスタ養成学校を主催したりしたおかげで、知識やこだわりを持って出店する方が増えました。
また、海外留学から帰国して、アメリカや日本のカフェの要素を取り入れた、新しい感覚の店をオープンさせたりして、あっという間に街のいたるところでおいしいコーヒーが飲めるようになりました。
スターバックスも、2015年から急激に店舗数が増えているので、マレーシア人の、おいしいコーヒーや雰囲気にかけるお金の感覚が変化してきたのだと思います。
洋食店の定番料理と味の変化
2014年当初は、洋食店も、ローカライズした店はたくさんありましたが、日本人の感覚で「おいしい」と思えるお店は本当に少なかったです。
スパゲティはたいていが茹ですぎ。
今でも、マレーシア人は柔らかめの麺を好みますが、アルデンテのスパゲティを出すお店もだいぶ増えました。
ジョホールバルでの洋食の定番は、「チキンチョップ」と「フィッシュアンドチップス」。
チキンチョップは、開いた鶏もも肉で先端にだけ骨があるものを、ソテーか衣をつけて揚げた料理です。
ソースは、マッシュルームのデミグラスソースか、甘辛い味のブラックペッパーソース。
フィッシュアンドチップスは、イギリスから伝わったのでしょう。
甘いチリソースや、半透明のマヨネーズが添えられていることが多いです。
また、スープは、日本で定番のコーンスープを見ることはほとんどなく、どこの店でもクリームマッシュルームスープが出てきます。
ご飯や麺が大好きなマレーシア人ですが、基本的に、洋食と一緒にパンがつけ合わされることはありません。
今もかわらず、洋食の定番メニューは同じですが、サーモンのグリルや、生野菜のサラダなど、バラエティ豊かなメニューや、スパゲティの種類が増えてきました。
また、2016年頃には、甘辛く味付けして柔らかく調理してから焼いた、豚肉のスペアリブの料理が人気となり、多くのダイニングバーや洋食屋で出されるようになりました。
今では、洋食メニューはたいていのお店で無難においしくいただくことができます。
日本料理のカジュアル化
日本の料理といえば、マレーシアでのパイオニア、回転寿司の「すし金」のおかげで、ほとんどのマレーシア人は、寿司とてんぷらとてりやきチキンは知っている状態です。
ですが、流通上での管理がよくないということと、輸入コストがかかるということで、新鮮でおいしいお刺身などは値段が上がってしまって、今でもなかなか一般的に出回りません。
2014年から2018年まで変わらず、ジョホールバルで普通に流通していておいしく食べられるお刺身はサーモンだけです。
2013年頃までは、日本料理といえば日本人シェフがいる高級店、というイメージがついていましたが、2014年には、学生向けにテリヤキチキン定食や日本風カレーなどを300円程度で出すカジュアル店などもちらほら増えてきました。
そしてシンガポールの和食店や日本の和食店などで日本食を学んだマレーシア人の料理人もでてきて、おいしい和食をリーズナブルに出す店が、2018年では当たり前になってきました。
2016年 手づかみ海鮮レストランのブーム
2014年から徐々に洗練された味を出すレストランも増えてきて、新しい味のブームも広がってきました。
2016年には、ルイジアナスタイルの、手づかみ海鮮レストランが流行りました。
これは、カニやイカやエビや貝などの新鮮な食材を、サンバルの辛いソースや、ソルティッドエッグという塩漬け卵黄のコクのあるソースなどで炒め、防水加工のされたテーブルクロスの上にどばっと置き、手づかみでガシガシ食べる、という料理です。
皿やカトラリーを使わないスタイルが斬新で、シンガポールや東京にも似たようなお店が数店あります。
新鮮な海鮮とソースさえあれば、誰でも調理できるのでシェフいらず。
皿洗いなども必要ないからスタッフの人件費も抑えられる。
真似するのが簡単で、海鮮だから客単価も高くとれるので、あっという間に狭いジョホールバル内だけでも10店舗近くできました。
最初はお客がどっと押し寄せましたが、何店舗もできると物珍しさもなくなり、普段遣いの価格の店ではないので、そう何度も頻繁には行きません。
お客が減ると食材の回転が悪くなり、新鮮な食材を出せなくなって評判が落ちるという悪循環。
今では残っているのは3店舗ほどだと思います。
2017年 韓国料理のブームからの激辛麻辣味ブーム。
ひと昔前は、日本のアイドルやドラマがマレーシアでも人気だったと思いますが、ここ数年はすっかり韓流ブームです。
韓国ドラマがよく放映されるようになり、韓国のファッションもたくさん上陸してきました。
同時に、ジョホールバルに住む韓国人も増えてきて、食の分野でも、韓国料理レストランが続々とオープンしています。
おなじみ韓国定番料理であるビビンパや焼肉のお店はずっと前からありましたが、2017年ごろから急に増えてきたのが韓国フライドチキンのお店。
もともとマレーシア人は、揚げ物や辛いものが大好きなので、揚げた鶏肉に甘辛いタレを絡めた韓国フライドチキンはあっという間にマレーシア人の胃袋をつかみました。
さらに、韓国スターのおしゃれでカッコいいイメージがあわさり、ムスリムマレーシア人も、中華系マレーシア人も、人種を問わず押し寄せ、韓国フライドチキン店には連日行列ができるようになりました。
さらに、とろけるチーズをたっぷりと絡めたフライドチキンや、甘辛い味付けのダッカルビとチーズを組み合わせたチーズダッカルビ、ボリュームたっぷりでインスタ映えがするかき氷「ビンス」も大人気です。
2018年には、こういった韓国料理のお店は乱立しているので、もうそろそろブームから定着してくる頃だと思います。
また、これらの韓国料理ブームの中で、韓国の辛いインスタントヌードルも流行りました。
辛さが何段階もあるインスタント麺があり、激辛ヌードルを最後まで完食できるかという「激辛チャレンジ」を行なってビデオに撮り、SNS上にアップする人を何人も見かけるようになりました。
激辛麺の人気から、中国の唐辛子たっぷりで激辛な麻辣料理も流行り出し、お店で好きな具材を選んで注文すると、麻辣鍋や麻辣麺にしてくれる、という店も増えてきました。
もともと辛いもの好きのマレーシア人が好む激辛料理は、日本人の私たちからすると、辛すぎて完食が難しいくらいです。
2018年 新しい流行の兆し
ここ最近で流行の兆しがあるのは、魚介や肉類の旨味たっぷりのスープ麺です。
クアラルンプールで20店舗ほどある人気のスープ麺屋「GO NOODLE HOUSE有間麺館」が、ジョホールバルに上陸したことがきっかけだと思います。
昔からあるローカルのスープ麺と見た目は同じような感じなのですが、スープの旨みが違います。
魚系のだしと肉系のだしの旨味たっぷりのスープに、豚肉団子やフィッシュボールなどシンプルな具と麺。
麺の種類や具材は選べるお店が多いです。
あっさりしながらも、また食べたくなるような麺が、300ー400円程度。
馴染みのある料理なので、老若男女に受け入れられます。
壺のような容器にたっぷりとスープをいれて提供する店や、焼き小龍包とセットで提供する店などがでてきました。
この業態は、目新しいというより、既存の馴染みのあるメニューをアップグレードした感じなので、すぐに定番になるのではないかと思います。
このように、2014年から4年間の間に、流行のレストランは移り変わってきましたが、この間に、レストランの業態は増え、全体的に味はよくなってきており、さまざまな料理をおいしくいただけるようになってきました。
価格も、激安店から高級店まであり、ジョホールバルでの食生活にはほとんど不便はなくなってきていると感じます。
この、すごいスピードでうつりかわる4年間の中でも、あいかわらず足りないのは、おいしいお寿司やさんと、フレンチビストロくらいかな。
次回は、おやつとデザートのトレンドついて書きたいと思います。
ジョホールバルのレストラン情報Facebook
ジョホールバルグルメ
https://www.facebook.com/jbgourmet/
※ジョホールバルでの飲食店開業支援、食に関するマーケティングリサーチ、ハラルフードの調査と試食テスト、飲食業視察コーディネイトなどを承っております。お気軽にご連絡くださいませ。
※ワクワク海外移住 2018/2/27の記事より転載
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