忘備録 TDSを食品分析で使うメリット

昇温脱離分析は、通常、材料表面から吸着分子を解析する技術として広く用いられますが、食品成分分析にも適用可能な場面があります。以下に、TDS(Thermal Desorption Spectroscopy)分析の食品分野での活用例と限界について説明します。

1. TDS分析とは?

TDS分析は、試料を加熱しながら発生する揮発性化合物や脱離ガスを検出する手法です。ガスや揮発性成分を質量分析計(MS)や他の検出器と組み合わせて分析します。食品分野では、特に香気成分や有害物質の解析に役立ちます。

2. 食品成分分析でのTDSの適用例

(1) 香気成分や揮発性成分の解析
   •   食品に含まれる揮発性有機化合物(VOCs)の検出に利用されます。
      •   例: コーヒー豆や紅茶の焙煎時に発生する香り成分の解析。
      •   食品の鮮度や品質評価(揮発性物質の変化を測定)。

(2) 異臭や劣化成分の検出
   •   食品の劣化や腐敗によって生成される揮発性化合物の特定。
      •   例: 加工食品や飲料の保存中に生成される異臭分子の検出。

(3) 有害物質の検出
   •   食品表面や内部に吸着した化学物質の測定。
      •   例: 包装材から食品に移行した揮発性化合物や残留溶媒の分析。
      •   重金属や農薬の熱脱離による検出も可能。

(4) 油脂の酸化や揮発性成分の生成
   •   食用油脂の加熱時に発生する揮発性酸化生成物の分析。
      •   例: 加熱油中の脂肪酸の揮発特性を測定し、酸化安定性を評価。

3. TDS分析の食品成分分析における利点
 分析の食品成分分析における利点
   •   高感度: 微量の揮発性化合物も検出可能。
   •   特異性: 温度によって脱離する成分を区別でき、化学組成の解明が容易。
   •   リアルタイム分析: 温度とともに揮発性成分の挙動を追跡可能。

4. TDS分析の限界
   •   非揮発性成分の測定は困難: TDSは揮発性成分の検出に特化しており、非揮発性成分(タンパク質、炭水化物など)の測定には適しません。
   •   複雑なサンプルの前処理: 食品は複雑なマトリクスを持つため、試料調製が必要になる場合があります。
   •   定量性の限界: 定性分析には優れる一方で、定量分析には追加のキャリブレーションが必要。

5. TDS分析の食品分野での具体的活用シナリオ
   •   コーヒーやカカオの焙煎品質管理: 温度ごとの香気成分を解析し、最適な焙煎条件を特定。
   •   冷凍食品の異臭解析: 保存中に発生する揮発性異臭分子を検出。
   •   有害化学物質の移行評価: 包装材から食品への移行物質(例: プラスチック由来の揮発性物質)の測定。
   •   スナック食品の酸化評価: 保存中や調理中に生成される酸化生成物を分析。

TDS分析は食品成分分析に直接適用されることは少ないものの、揮発性成分や熱処理過程での化学変化の解析に非常に有用です。特に香気や異臭、有害物質の検出といった特定のニーズに応える分析手法として採用されています。

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