本当の獣は俺だ…
家に帰ってくると、蘇枋は倒れるようにソファに横になった。
もうダメ…
最悪な日だった。
さっきまでは皆んなといたから平気だったけど、一人になるとやっぱり思い出す。
にれ君が倒れてから、自分がとった行動。
俺の獣がまた暴れ出そうとした。
あの時桜君が止めてくれなかったら、本当にアイツを…
嫌だ 怖い…
何で俺はこんなに暴力的なんだろう
平静でいられるように日々鍛錬してるのに、やっぱりオレは昔と変わってない。
「おー、隼飛帰ったのか」
兄貴の明るい声。
誰よりも俺のことを知っていて、今一番そばにいてほしい人。
「どうした?」
うつ伏せのままでいると、兄貴の手がオレの頭に触れた。
「兄貴……」
「何だそんな暗い声して。またやらかしたのか?」
そうだよ。
溢れ出る負の感情に耐えきれず、勢いで全部話した。
「でもさ、その桜って奴がお前を止めてくれたんだろ。よかったじゃん」
「それは‥‥‥よかったけど」
そういう事じゃない。
俺が言いたいのは‥‥‥
「わかってるよ。その桜がいなかったら、お前は相手を殺してたって言いたいんだろ」
兄貴はいともあっさりと言った。
その通りだ。
「もう!どうしたらいいんだよ」
ソファに顔を埋めて足をバタつかせる弟
相当参ってるなあ
弟がこんな風に自分を曝け出すのは自分の前だけだ。
普段風鈴の奴が見ている弟の姿は、建前に過ぎない。
本当の弟は繊細で臆病、でも時として暴走してしまうくらいの力を秘めている。
だからオレは弟を鍛えてきた。
表と裏の自分を使い分けできるように。
さてと、これからどうやって弟を甘やかそうか。
「はやと」
そっと頭を撫でると、悲哀に満ちた目を向けてくる。
可愛い…
弟が心から頼れるのは兄である自分だけだ。
自分の暴力性に怯える可哀想な弟
「大丈夫だよ」
お前のことは俺が守るから。
壊れてしまいそうな隼飛の脆い心は、いくらでも俺が治してあげる。
「おいで」
優しい声で呼ぶと、弟は「あにき…」と縋るように身を委ねた。
オレの異様な執着心なんて知らずに。
憐れな弟はオレの腕の中で眠りに落ちた。
本当の獣は俺だ…