羅刹までの道中

印南と二人で船に乗って羅刹学園に向かっていた。

「なあ、今からでも遅くない。帰ろうぜ」
猫咲と印南は無陀野の指名で非常勤講師に選ばれ、強制的に羅刹に出向くことになった。
「もう遅いよ。今海の上だもん」
「はあ」
印南の肩に頭を寄りかからせて猫咲はため息をつく。
行きたくねえ
あいつ…無陀野に会いたくねえ
「相変わらず怖いの?」
「怖くはねえよ。苦手なだけだ」
「そっかあ」
強がっているのがバレバレで印南は可笑しそうに笑っているけど、反応するのもだるくて気にしないことにした。
「大丈夫だよ、僕がついてるから」
「お前になにができる」
いつも血を吐いてるくせに、心の中でつっこんだ。
「猫咲の隣にずっといるよ」
「答えになってねえよ」

「そうだ、コレ。今日会う生徒たちの顔写真。6人もいる」
印南が上着のポケットから写真を取り出して見せてきた。
「しかも女の子が二人もいる」
猫咲の代は男しかいなかった。

「コイツ何でマスクしてるんだ?」
金髪のそいつはこちらを鋭い目で睨んでいた。
「僕みたいに喉が弱いのかも」
「…」

「コイツが例の一ノ瀬か」
一ノ瀬については鬼機関の中で共有されていたので猫咲も知っていた。
どこでどう撮ったのかわからないけど、写真の一ノ瀬は上半身裸で、椅子に縄で括り付けられていた。
「これどういう状況?」
「さあな、暴れでもしたんじゃねえの」
「僕大丈夫かな?噛み殺されたりしないよね」
「お前次第だろ」
「ええ?!」
「舐められんなよ」
「うん、猫咲もね」
「バカにしてんのか」
「してません」

「こっちの子は背が高いね」
「名前、何て読むんだ?」
「ロクロ君だね」
「名字の方」
「…」
「目のクマすごいな」
「僕と一緒だ」
「お前と雰囲気似てるな」
「そう?」
「よかったな、気が合いそうで」
「僕は猫咲だけだよ」
「‥‥」
「猫咲?」
「お前、不意打ちやめろよ」

印南は無自覚だろうけど、彼の何気ない殺し文句が猫咲を振り回していた。

「仕返しだ」
猫咲は印南のほっぺたを軽くつねった。

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