蘇枋が欠席した理由を誰も知らない‥‥‥?
ホームルームの時間になっても蘇枋が来ない。
どうしたんだろ?
担任が出席をとり始めるが、蘇枋の番だけ飛ばされた。
「それじゃ、今日も一日頑張れよ〜」
呑気な担任はそう言って教室を出て行こうとするので、楡井は咄嗟に呼び止める。
「先生!蘇枋さんはお休みですか……?」
楡井の言葉に担任の肩が跳ねる。
「蘇枋は……そ、そうだ。今日は休みだ」
これ以上聞くなよと言いたげに、担任は駆け足で教室を出て行ってしまった。
直後、クラスメイトたちがざわざわと話し出す。
「蘇枋が休み?珍しいな」
「どうしたんだろな」
「チャットには何も連絡きてないねぇ」
「風邪でもひいたんやろか?」
桐生と柘浦が楡井の席にやって来る。
「オレ、蘇枋さんに連絡してみます」
「うん、ありがと楡ちゃん」
トーク画面を開いて蘇枋さんのを探す。
しかし、見つからない。
おかしいな……
何度もスクロールしていると、桐生の声がかかる。
「どうしたの楡ちゃん?険しい顔して」
「蘇枋さんのチャットが見つからないんです」
「「え」」
二人もスマホを開いて確認する。
黙って見ていた桜もスマホを見る。
「ほんとだねぇ。すおちゃんの見つからないよ」
「どういうことだ?」
何故だろう?
蘇枋のアイコンがどこにも無い。
頻繁に動いている1-1のグループチャットからも消えている。
クラスメイトにも確認をとってみるが、誰のチャットにも蘇枋のは見つからない。
「ブロックか脱退したとか?」
思い当たるのはそれくらいしかない。
「でもどうしてそんなことを‥‥‥‥?」
「せやなあ。蘇枋がそんなことするはずないもんなあ」
三人で考え込んでいると、ずっとスマホを見ていた桜が「あっ」と声をあげる。
「あったぞ、蘇枋の」
桜がスマホを差し出すので三人で覗き込む。
確かに、桜のチャットには蘇枋のアイコンがある。
けど、なんだかチカチカして見える。
マグカップがゆらゆら揺れて、その動きはだんだん速くなっていく。
「これなんか変だぞ」
「故障してるみたい」
「「あっ!」」
「消えた!?」
見えていた蘇枋のアイコンが突然画面から消えてしまった。
「は?どういうことだ?」
「消えちゃった」
「通信環境が悪いとか‥‥‥?」
「でも、そもそも桜ちゃんだけ見れたのが謎なんだけど」
「桜君、特別なスマホでも使ってるん?」
「んなわけあるか」
「ツゲちゃん、今深刻だから」
いつの間にかクラスメイトも周りに集まっている。
みんな不安そうに顔をしかめていた。
「なんか今の、アレみたいだな」
「あぁ」
「‥‥‥怪奇現象」
後ろの方で誰かが呟くのが聞こえた。
それはたぶん、ここにいる全員が思っていることだった。
その日、担任は体調不良で早退したと知らされた。