蘇枋発見
蘇枋を見かけたのは本当に偶然だった。
バイトまで時間があるからと商店街をぶらついていると、とある洋服屋さんに蘇枋がいた。
お会計中のようで店主らしいお爺さんと親しげに話している。
お爺さんは蘇枋が買ったらしい洋服を畳んでいた。
それは蘇枋がよく着ているカンフーシャツで。
ここで買ってるのかと、知ってしまいちょっといけないことをしている気分になる。
直ぐに立ち去ろうとしたが蘇枋が俺に気づく。
「十亀さん!?」
俺を見た蘇枋の目が見開かれる。
すごく驚いてくれてちょっと面白い。
俺の服装を見て寒そうだと言われ、「裸足は気持ちいいよ」と言うと蘇枋がきょとんとした顔をする。
その間、オレは蘇枋の私服姿を新鮮な目で見ていた。
オレとは全然違う、イケメンの着こなしだ。
「ずっと見てたんですか?ここで?」
そう聞く蘇枋の耳は赤い。
そんなことに気分を良くしてる自分がいて、少し揶揄ってしまう。
ムスッとした顔をする蘇枋も見られて嬉しくなる。
通りを歩きながら少し話した。
俺が歩いてここまで来たと言うと、蘇枋は目を丸くした。
君そんなに表情豊かなんだねとつい言いそうになるのを耐えた。
子犬が現れると蘇枋は嬉しそうに子犬を撫でた。
無邪気に笑う蘇枋が普段より幼く見える。
商店街の出口まで来て2人は別れることに。
「歩きで帰るの?」
「はい、天気もいいので」
「俺も帰りたくなってきた」
「バイト行ってください」
「そうだね」
「それじゃあ、また」
「うん」
本当はもう少し話していたかったなあ…
反対方向に歩く2人はそんなことを思った。