結局、お互い好きなんだよね!
コーヒーやサンドイッチの提供が終わり一段落ついたので、ことはは桜たちのいる屋上へ向かう。
初めて風鈴の校舎に入った。
さすが不良校というのか、どこの壁も落書きでいっぱいだ。
階段を登ると桜たち1-1の教室があったので、ちらりと中を覗いた。
教室は……普通だ
アイツらほんとにここで勉強してるのか?と、想像してみたけど難しかった。
屋上に入ると風鈴生でガヤガヤと賑やかだ。
串焼きをする桜たちは特に目立っている。
近づくと、蘇枋と桐生がことはに気づいた。
「やほーことはちゃん」
「やあ、来てくれたんだ」
「楽しそうね」
「みんな桜君に焼かせたがるから、頑張ってくれてるよ」
「お前らも少しは手伝えよ」
桜が焼き上げたばかりの串焼きを持ってやって来る。
「お疲れ、桜」
「おう……食べるか?」
桜が紙皿を差し出してきたので、串焼きを一本もらう。
「って、桜は食べないの?」
「俺は……いい」
「せっかく自分で焼いたのに」
「梅ちゃん先輩が知ったら悲しむよ」
「…っぐ」
「もー仕方ないな桜君。はい、あーん」
「っいい!食わない!」
「だーめ。食べてよ」
笑顔で詰め寄る蘇枋に、桜が折れた。
「にげぇ!!」
ピーマンを食べた桜は顔をしかめる。
「あはは、すごい顔」
「はい、じゃあ次はネギね」
「あ”?もういい!蘇枋が食べろや」
「オレは遠慮しとくよ」
「なんでだよ!」
桜と蘇枋が言い合っていると、楡井がやって来る。
「ことはさ〜ん!」
「あ、にれ君ナイスタイミング」
「楡井、やる」
桜が楡井に食べかけの串焼きを渡そうとするが、蘇枋が桜に何か耳打ちする。
「にれ…」
「はい?」
何も知らない楡井は桜に手招きされ、近づく。
「ん!」
桜が楡井にあーんする。
「え〜?!!!」
「にれ君、美味しい?」
「は、はい!美味しいです」
「良かったね桜君。って、顔真っ赤だよ大丈夫?(ふふ)」
「うるせー!!」
全く、何を見せられてるんだかと呆れてことははなんとなく視線を外す。
すると入り口付近のベンチに杉下が一人で座っているのが見えた。
ことはの位置からでわかるくらい、杉下は何か思い詰めたような顔つきだ。
「杉ちゃん元気ないんだよね〜最近はずっとあんな顔してるよ」
隣にいた桐生が気づいて教えてくれる。
「もしかして桜とのこと?」
「お〜!勘が鋭いねことはちゃん」
「梅が喋ってたから」
「あ、なるほど〜」
「でも、梅は笑って大丈夫だって言ってたから、心配いらなさそうね」
「そうだね〜オレもよくわからないけどきっと大丈夫だと思う」
「おい」
いつの間にか桜が隣に来ていた。
「なに?」
「これアイツんとこ持っててくれよ」
言いながら、桜が焼き立ての串焼きが数本のった紙皿をことはに差し出す。
「桜が行けばいいじゃない」
「オレは…最近アイツに睨まれてばっかだから無理だ」
そっぽを向く桜の後ろで、楡井と蘇枋が優しい表情をしている。
「アイツたぶんまだこれ食ってねえと思うし…」
桜の言葉にことはたちは顔を見合わせた。
「仕方ないわねえ」
ことはは桜から紙皿を受け取り、杉下の元へ向かう。
ほんと、桜ってツンデレだ……
思わず笑みが溢れた。