同期3人組

無陀野たち大人組は夜遅くまで遊摺部の件で会議をしていた。
ようやく話がまとまり一同は疲れた様子で部屋を出て、各々の部屋へ行く。
「いゃ〜懐かしいね。3人で同部屋なんて。羅刹の時以来だね」
京夜が嬉しそうにベッドに寝転がる。
「やっと一息つけるな」
無陀野も気が抜けたのか、ベッドに腰をおろした。
その横で真澄は靴下を脱ぎ捨てて風呂場へ向かう。
「先、風呂もらうぞ」
「いってら〜」
部屋には無陀野と京夜が残された。
「ダノッチ、疲れたでしょ。肩揉んであげる」
京夜が無陀野の肩に触れると、無陀野は大人しく目を閉じる。
「なんかさあ、昔を思い出すよね。あの時もこうやって‥‥」
その間も京夜はペラペラと思い出話をした。
無陀野はただ相槌を打つだけだが、京夜の穏やかな声が心地よかった。
「ダノッチ‥‥」
いつの間にか後ろから京夜が無陀野の首に抱きついた。
「お疲れさま」
「京夜もな」
無陀野は京夜の手にポンと手を重ねた。

少しの間お互いの体温を感じていたら、コツっと物音がした。
「真澄」
無陀野の声とともに透明化していた真澄が姿を現す。
「ッチ、音出しちまった」
「えぇ〜まっすーいつからいたの?!幽霊にならないでよ」
「オメエらがいちゃついてるのが悪い」
「これはイチャイチャじゃないもん。ねえ?ダノッチ」
「ああ」
少し頬が赤い京夜と反対に、無陀野は普段と変わらない仏頂面をしている。
「ダノッチ、先お風呂いいよ」
「…ありがとう」

「まっすーもお疲れさま!髪乾かしてあげようか」
ベッドの上でドライヤーをかけようとしている真澄に、冗談半分で聞く。
さすがに断られると思っていたら、真澄が京夜のベッドにしれっとやって来る。
「え?」
「何だよ間抜けな顔して」 
「いゃ、だって…」 
京夜は動揺を隠せないまま真澄の髪に触れる。
あのまっすーが甘えてくるなんて、どうしちゃったんだろう? 
京夜の顔がニヤける。
「きめぇ顔すんな」
「え、なんでわかるの⁉︎」 
真澄は前を向いたままなのに。
「早く乾かせ」
「はいよ〜」

「まっすー髪さらさらだね」
京夜は乾かした後も真澄の髪をいじっている。
そこへちょうど無陀野が風呂から戻って来た。
「無陀野〜髪乾かしてやんよ」
普段のポーカーフェイスの真澄だが、彼が面白がっていることは雰囲気から京夜にもわかった。
「あぁ、頼む」
無陀野は素直に真澄の前に座る。
「は?」
珍しく真澄の顔に驚きの色が浮かんだ。
「あはは、まっすー固まってるじゃん。俺もさっきまっすーにされた時、同じ気持ちだったよ」
京夜はニヤニヤ笑いながら部屋を出て行った。

「俺、人の髪乾かしたことねえ」
真澄が無陀野の濡れた髪をツンツンしながら言う。
「ならオレが初めてになるんだな」
「嬉しいのか?」
返事は聞きたくないのか、真澄はドライヤーをつけて無陀野の声をかき消した。
見た目に反して優しい手つきで髪を触ってくる真澄に、無陀野は前を向いたまま表情を崩した。
「終わったぞ」
「ありがとな、真澄」
無陀野がチラッと真澄を見上げると、丸い真っ暗な目と合う。
「きめぇこと言うな」
無陀野は前に向き直りほくそ笑む。
廊下でも聞いた真澄のこの返事は、どういたしましての意味だと、無陀野は知っている。

「あれ?今笑った?笑ったよね!?」
風呂上がりの京夜がドアの所に立っていた。
「無陀野ぉ〜」
真澄も後ろから無陀野の顔を覗き込む。
「もう寝るぞ」
無陀野は立ち上がってベッドに逃げた。





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