本当は俺も心臓バクバクしてた
「冷た!」
布団の中で蘇枋の冷たい足先が触れ、桜はびっくりする。
「ごめん俺、冷え性なんだ」
「にしても冷たすぎるだろ。手は?」
蘇枋が差し出す手を握るとやっぱり冷たい。
「いつもこんななのか?」
「うーん、日によるけど冬場は大体冷えてるかな」
「へぇ…大変だな。寒いと眠れなくない?」
「うん。寝つきは悪いよ。でももう慣れた」
そういう蘇枋の声はちょっと暗かった。
「それにカイロ持ってるから大丈夫だよ」
ほらと、手に握るカイロを見せてくる。
カイロ握って寝るって…
相当寒いんじゃん
そこで桜は思いつく。
桜はゴロンと蘇枋に背中を向ける。
「ほら、腕回せ。こうしてればまだマシだろ」
蘇枋は桜の背中から抱きつく体勢になる。
「俺の足当たって冷たくない?」
「大丈夫」
そんなことないだろうに。
靴下を履いてても冷たいと感じるのだから。
気を遣ってくれる桜が嬉しい。
だから少し力を込めて背中にくっついた。
「ていうか、こんな密着して桜君平気なの?」
「あ?今更だろ」
「そうなんだ…」
「お前はどうなんだ?」
「あー、結構心臓バクバクしてる」
「へぇ…」
「聞こえる?」
「…聞こえない」
「いい匂いする」
「俺?」
「うん」
桜は自分の寝巻きをくんくん嗅いでみる。
これいい匂いなのか?
「自分じゃわかんねー」
蘇枋はクスッと笑う。
「教室でも桜君の後ろの席座るといい匂いしてるよ」
「え!まじ?俺そんな匂い強いのか?」
「強くはないよ。ふわ〜って感じだから」
「何だよそれ。って、蘇枋の鼻が良すぎなんだよ」
「まあ、それもあるかもね」
「まだ手寒いのか?」
カイロを握りしめてる蘇枋の手に触れて確認する。
「気にしなくていいよ。いくら温めても冷たいままだから」
こんな風にくっついてるのにごめんと謝られた。
蘇枋の手はいまだに氷みたいに冷たい。
「桜君は手あったかいね」
「お前と比べたらまあ…」
「俺のせいで冷たくなっちゃうね」
手を離そうとする蘇枋の手を桜が捕まえる。
「ずっと握ってればいいだろ」
「……ありがと」
「ん」
暗くて良かった。
蘇枋と桜はそのまま眠りについた。