1991年以来33年ぶりに、イギリスに行こうと思った話。#0
そもそもの始まりは、10歳の頃。
昭和50年のことである。
病気がちだった私に近所の年上のお兄さんが段ボール箱いっぱいにくれた児童書の中にあった、
アーサー・ランサム全集の第8巻、「ひみつの海」
子供達が親元を離れてキャンプしたりセイリングしたりする夏休みのお話、とまとめてしまえば簡単なんだけれども
幼少期の私にとって、どんな漫画よりTV番組より強烈なインパクトを残した作品。
第8巻の物語の舞台もロンドンの南東部に実在する場所なのだが、第1巻から何度も登場する主な舞台となっているのがイギリス北部の湖水地方である。
訳者のあとがきにその言葉を見つけた10歳の私は、大きくなったら絶対に、この物語の舞台となった湖水地方のウィンダミア湖へ行くんだ、と決意した。
早速英語を習いたいと言うと親には「中学校に入ればただで教えてもらえるのだから待ちなさい」と誤魔化され、お粗末な文部省英語教育しか受けられなかったおかげで結局社会人になってから勉強し直す羽目になったり
当時付き合っていた彼氏からは「俺を置いて1人でヨーロッパ行くとかふざけんな」などと言われ(置いて行ったけど)
そんな数多の困難を乗り越え、ようやくその夢が叶ったのは24歳の夏だった。
1991年、初めての渡英。
だがしかし…
肝心のアーサー・ランサム作品を知っている現地のイギリス人が、めちゃくちゃ少ない。いや、今でも子供向け良書としては有名なので(プーさんやらナルニアやらトルーキンやらにはてんで敵わない知名度ではあるが)イギリスの大人達も子供達も、その存在を知っては居るけれど私のような熱狂的ファンにはついにお目にかかれなかった。
結局、1991〜1993年は、毎年8月に有給を取り渡英を繰り返したが、現在のようにネットで同好の士を検索できる時代ではなく、物語に関係の深い美術館や景色を見つけるには、自分の足であちこちの町のインフォメーションを回るしか手がなかった。
1994年以降、うっかり結婚してしまったり子供を産んでしまったり親の介護が始まってしまったり夫と別れて3人息子を独りで育てたりしていたため、イギリスの思い出は、青春の幻影に成り果ててしまった。
それが。
昨年の暮れ、立派に成長した息子の1人が会社の休みを取って、ホノルルマラソンに出るという。一緒に行くなら母ちゃんの分のお金は出すけど、どう?と言うのだ。
行かいでか!
実に32年ぶりの海外。
私の中で何かが弾けた。
実は、もう海外へなど行けないと諦めていた…
介護が終わり母を看取ったと思ったらコロナ禍。加えてウクライナ情勢、円安…
海外旅行など、2度と縁のないものとばかり思っていたのだが。
はたと我が身を振り返れば
がむしゃらに働き子育てをし介護を終え
今の私は自分の衣食住を自分で賄い、そこそこ旅行に行ける程度の収入もあり。
介護すべき親族はもうおらず
息子達は家事も仕事もちゃんとこなせる大人になった。
待てよ
今なら行けるんじゃ?
いや、行けない理由は無いのでは?
次男と出かけたハワイが、そのトリガーになった。
折りしも歴史的円安だが、自分1人くらいならなんとかなる。いや、今行かなかったらいつ行くのだ…
斯くして、33年ぶりのイギリス一人旅計画が
始動したのであった。
(ほぼ覚書・笑)でも#1へ続く。
※ タイトルの写真は、1991年のキングスクロス駅タクシーターミナル。多分今行ったらあまりの変貌に目を疑うと思う………
まだハリポタが執筆されてなかった頃だしね…