東京03 FROLIC A HOLIC feat Creepy Nuts[盛大なネタバレあり]
2023.03.04.sat at 配信
2023.03.05.sun at 日本武道館
※ 信じられないくらいネタバレ含んでます ※
※ 私はCreepy(特にR-指定強火)ファンなので、見どころが偏っています ※
まず感想を端的に言うと、これを観たか観ないかで私の人生確実に変わった。
CreepyNutsを好きになって良かったことってこれまでも数えきれないくらいあったけど、これはちょっと群を抜いてる。松永さんがかました後、天に感謝キッスするあれを何度だってやりたい気持ち。
括るというテーマ
オークラさんがCreepy Nutsの武道館公演を見て「いつか東京03と2組でコントをやりたい」と佐久間宣行ANN0で話した事から始まった企画。中でもR-指定の詞世界に惚れ込んだ彼がテーマに選んだのが、自身の中にも長年あったという”括る”という概念。
これはR-指定が30歳になった時の心境を綴った「のびしろ」という曲で出てくるフレーズでもある。”男” ”女” ”大人” ”子供” など括る言葉には3文字が多いという発想から彼はこう言っている。
そして東京03・CreepyNuts共に、いわゆる王道という括りからは外れた道を歩んで今の立ち位置を築いた2組であるという共通点を土台に、この舞台は確かに”括る”を縦軸にしたものではあるが、私は視点の違いを描いた物語だと感じた。
私の世界 あなたの世界
夢いっぱい未来に希望しかない若者がなんとも言いようのない悩みに囚われる姿。
そんな彼らを見ている大人には、彼らの悩みは尽きない承認欲求、むき出しの自意識が作り出す悩みだと察するも、それを解決する回答を持ち合わせていない。
場面変わり、とある作家に憧れ仕事を辞めた才のない男は、その作家を見切った元嫁のヒモをしていて愛されており、才のある作家はいつまでも自分の元を去った嫁の影を追い求めている。そんな作家がファンであるアイドルはとあるTV番組でのディスり企画での共演がきっかけでラッパーと付き合っているが、そのラッパーは10年前に作家の著書を読んだことがきっかけでラッパーになっていた。
少し話は過去に遡り、自分のごく一部だけを切り取り脚色され、人に求められるまま思ってもないことばかりを言わされる毎日に絶望していたラッパーは、ふらりと立ち寄った地元のスナックで、かつての自分にうんざりするようなアドバイスをしてきた元同級生と再会。かつてと変わらぬ真っ直ぐな瞳で「すごいね!」と賞され思わず本音が口をついて出る。
「どうしたら…周囲を変えることができるんかなぁ」
「周囲は…変えられないんじゃないかな?」
「自分で変えられるのは、自分だけだから」
「だから、あなたの見る目が変われば周囲も変わるんじゃないかな。だって、あなたの世界はあなたが作るんだから」
それぞれの目を通して見る世界は人の数だけ幾通りもあって、ある人から見れば天国だが、ある人から見れば地獄。幸せだって少し横向けば不幸せ。どんなに渇望しても掴めない憧れの世界は、誰かからすれば今すぐにでも捨て去りたい厭な世界。
また一方で、俺のため・私のためだけでやったことが、誰かの希望や救い、逆に絶望になってる なんてこともありうる。世界は一筋縄ではいかない。
大人って、そんなもん
ここからさらに核心に迫っていき、全ての伏線が回収され複雑に絡み合い1本の筋となる訳だけど、世界は実に混沌としていて決して1つだけなんかじゃなく
自分が幼い頃見ていたものは、大きくなってみたらなんてことなくて。
若い自分が嫌悪していた世界は、大人になってみたら案外悪くなかったりして。
万能だ!神だ!と讃えていた相手は、近づいてみたら普通の人間で。
自分が全て見えてるつもりでいたものは、ほんの1部分でしかなくて。
注目されたいとは確かに思ったけど、そんなところまで見てなんて言ってないし。
なんなら自分だって1日1日変化してて、昨日と同じ自分はもうそこにはいないのにおんなじだと思われるのって心外だし。なんでだよ、なんでお前ら大人は平気でいられんだよ?という問いへの答えはこれじゃないかな。
あいにく括れるほど、こちとら浅くねーんだわ
まぁその分動きは鈍くて重いけど、それは深みって言うんじゃないの?
大人ってお前ら若者が思ってるより格好良くて、楽しいもんなんだよ。まぁたまにちょっとカッコ悪いことしたりするけど、それすら魅力的だろ?だから安心してこの先も歩いてきたら良いよ っていう、オークラさんからcreepyへの熱烈な応援メッセージなんじゃないかなと思った。
で、それを体現し良きお手本を見せつけてくれたのが東京03さん。
実に説得力ハンパない。
なのに、コント
あまりにも凄まじい当て書きに激エモな内容だと感じるけど、これが徹頭徹尾コントで、笑いで包んでくれたから真っ直ぐ見れた気がする。各々が持つスキルを使い最高のパフォーマンスでもって、バカまじめに全力でコントを演じるからこそ説得力があるし胸にきた。
東京03さんの舞台であり当然主役なんだけど、明らかに世界の土台はこの3人が担ってて、その圧倒的世界観にコントとしてのリアリティを加えているのは吉住さん。彼女がいたから、あの世界に空や奥行きが生まれて私は世界に没頭できた。
あの場にいた全員が吉住さんの虜だった。
さらに佐久間さんや佐倉さん、百田さんが彩りを加えGENTLE FOREST JAZZ BANDの音色が空間を隙間なく埋め尽くし甘く空気を震わせる。
1人、異質
中心でスポットライトを浴び、明らかに常とは違う光を纏い輝き1つの人生を生ききったR-指定もすごいが、驚くべきはDJ松永。
こんな大きな舞台で皆が虚構の世界の住人となり別の人格を演じきってる中で、彼だけはずっと彼のまんまで板の上に立っていた。これ、すごくない?普通耐えられなくない?そんなんできます?震えない?
誰よりも”人からどう見られるか”という自意識の強さに苛まれ悩み苦しんできた彼が、日本武道館のど真ん中で、2万4000個の目に見つめられながら、飾ることなく彼自身として立っているという事実にとにかく私は感動してしまった。
いや、ちょっと違うか。
DJ松永という人物を彼自身が全力で演じている姿にグッときてしまい、さらにそれが最高に魅力的であり、オモロい。そんな人…ちょっと他に思いつかないなと。
ただ技術面でいうと、彼の凄さが相方のそれに比べると少しわかりにくい。
だって、あまりにも華麗に軽やかにやるもんだから。
ラブちゃんの声をサンプリングしルーティンを作ることがどれだけ時間のかかることなのか。あの中にどれだけの技が入っていて、どれだけの膨大な鍛錬が必要なことか。JAZZバンドに混ざって口笛のようなスクラッチを奏でることがどれだけ難しく、自由気ままではなくいつでも正確にやれることがどれだけすごいことなのか。
もしあれで初めてDJルーティンを聴いたという人がいたら、ぜひ色々見てほしい。DJ松永がすごいってきっとわかると思うから。
夢と現を繋ぐオードリー
最後のパートはオードリーのお2人が日替わりで出てきたが、それぞれが全く異なった内容になっていてとにかく楽しかった。とにかくただひたすらに楽しかった。このパートがあるおかげで現実世界に戻れた気がするし、さすがスターだった。
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