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ふぞろいの温もりが描く未来 AQUOSシリーズの新たな挑戦

ふと手に取ったスマートフォン。

その「冷たさ」に違和感を覚えたことはありませんか?

今や私たちの生活に欠かせない存在となったスマートフォンですが、そのデザインには、どこか「無機的で冷たい印象」がつきまといます。

シャープのAQUOSシリーズは、そんな冷たさからの脱却を目指し、新たな挑戦をはじめました。その象徴となるのが、「AQUOS R9」と「AQUOS sense9」です。

両モデルが持つ「有機的で温かい印象」は、単なる道具を超えて、私たちの生活に温もりと彩りを加えようとしています。


ふぞろい、せいぞろい

出典:SHARP『スマートフォン「AQUOS R9」を商品化』
https://corporate.jp.sharp/news/240508-f.html

先に発売された「AQUOS R9」は、発表直後から個性的なカメラデザインが話題になりました。

大きさの違う2つのレンズ、規則性をあえて崩した配置で、独特の存在感を放っています。その周りを包み込むカメラパネルは、フリーハンドで書いたような、絶妙な丸みを帯びています。几帳面な方は、丸の大きさや位置をそろえたくなるほど、まあふぞろいなのです。

でも、そのちょっとした「ふぞろい感」が、不思議と愛らしく感じてきます。

今回、AQUOSシリーズのデザインを担当したのは、「miyake design」を主宰する三宅一成さん。主に、プロダクトデザインを手掛けており、過去にはドコモのスマートフォン「MONO」もデザインしています。

三宅一成さんは、「AQUOS R9」について、次のように語っています。

『服や手帳のように身の回りにあるお気に入りのもののような存在にできないかと考えました。』

引用:miyake design『AQUOS R9』
https://www.kazushigemiyake.com/design/r9/

現代のスマートフォンは、SFの世界の道具ではなく、私たちの生活にとってありふれた道具です。服や手帳のように、温かみがあり、いつしか思い出になるような存在にならなければいけません。

しかし、スマートフォン市場は、いつしか性能や革新性、コストパフォーマンスだけを争う世界になってしまいました。そこに、デザインを楽しむ余裕はなく、ただ時期が来たら買い換えるだけの「機械的な消費」になっています。

中身の進化が頭打ちとなった今、次世代のスマートフォンに求められるのは、「使う人の心に残る、温かみのあるデザイン」ではないでしょうか。

日々の暮らしのなかで、かすかな喜びを感じてもらえるモノづくりが、これからのスマートフォンには必要です。

そんななか、シャープのAQUOSシリーズは、カメラデザインを軸にして、新たな価値観を創造します。

カメラ イコール 顔

出典:SHARP 『スマートフォン「AQUOS sense9」を商品化』
https://corporate.jp.sharp/news/241029-g.html

まるで、小さなキャラクターが顔を覗かせているような本作のカメラデザイン。
ふぞろいの大きさの円がランダムに並び、それを見た人たちに柔らかく温かい印象を与えます。どこか生きているような、こっちを見ているような、そんな気がしてきませんか。

カメラ周りは、現代スマートフォンにとっての「顔」ともいえる場所です。

だれかを撮るとき、鏡越しに自撮りをするとき、背面のカバーを見せるとき……。
スマートフォンのカメラは、カバーをつけても唯一、顔を出す部分。だからこそ現代では、背面のカメラ周りの充実が、スマートフォンにとって大切になります。

シャープは、従来の無機質なデザインを脱却するため、カメラ周りに焦点を当てて、そこを個性の発信源にしました。今回、AQUOSシリーズが採用したアンバランスなカメラは、「親しみやすく、心に響くデザイン」への挑戦です。

アップルやソニー、サムスンが、バランスの取れたデザインで「美しさ」を追求する一方、シャープは、あえてアンバランスなデザインで「親しみやすさ」を追求しました。

シャープは、性能や革新性、コストパフォーマンスではなく、ユーザーの感性に寄り添うアプローチで、新たな市場の開拓に挑みます。

賛否両論の先にあるもの


もちろん、このデザインには賛否両論があります。

無機質なデザインが好みの方には、本作のデザインに違和感を覚えるかもしれません。毎日使うものだからこそ、魚の骨が喉に刺さったような違和感が負担になっていきます。

前作までのAQUOSシリーズは、どちらかというと無機質でモダンなデザインでした。「なのになぜ突然?」そう感じている方は、少なくありません。

しかし、シャープは、この大胆な方向転換を通して、スマートフォンに対する意識の変革を試みているように思えます。

ただの道具ではなく、それ以上の価値の提案、つまり「私たちの生活に寄り添い、やがて思い出として刻まれる存在」への変化です。かつて「auデザインプロジェクト」が成し遂げた取り組み、それらの延長線上に入るような気がしてなりません。

KDDIの「au Design project」は、多くの独創的な製品を生み出し、今でも国内外で高く評価されています。

当時、どれも同じだった携帯電話のデザインに対して、性能やコストパフォーマンスを超えて、「手にしたい!」と思わせるデザインを追求しました。

最終的には、「INFOBAR」や「talby」、「neon」など、ニューヨーク近代美術館(MoMA)の永久収蔵品に選定されるほどの名作を生み出します。

本作におけるシャープの取り組みは、au Design projectに近いものを感じます。賛否両論を超えた先には、居心地の良い未来が待っているのかもしれません。

未来のスタンダードを目指して


性能や革新性、コストパフォーマンスの競争が主流となるなかで、シャープは「ふぞろい」という独自のデザインを通じて、新しいスマートフォンのあり方を示しました。

その結果、「AQUOS R9」は"グッドデザイン・ベスト100"に選定、同シリーズの「AQUOS wish4」は"グッドデザイン賞"を受賞しました。グッドデザイン賞への選出は、シャープの挑戦が時代にフィットしたことを示すものです。

それは単なる道具ではなく、「私たちの生活に寄り添い、やがて思い出として刻まれる存在」への第一歩だといえます。シャープの挑戦が、日本のみならず世界へ広がり、未来のスタンダードになる日は、そう遠くはないのかもしれません。




参考:

miyake design「AQUOS R9」

SHARP「AQUOS R9」

SHARP「AQUOS sense9」



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