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私の彼はムスリム

 私の部屋のドアの前に立った、私の言葉にショックを受けた彼の突き刺すようなまっすぐな彼の眼差しが忘れられない。


 今日は、いよいよ渡航の日だ。
東京での生活も今日でお別れ。朝のコーヒーを飲みながら、ふと思いに耽った。
「みく、早く支度しなさいよ〜」
母がキッチンから、寝ぼけている私に声をかけた。
「ママ、わかってるわよ。昨日、壮行会の後。徹夜で荷造りしてたのよ」
母とのたわいもない会話も今日で最後になるのかと名残惜しい気持ちを我慢し、国際便で送れなかった荷物たちと一緒にフライトまで準備だ。
「みく、私は今日仕事休めないから、空港まで見送りできないけど。気をつけてね。」
「わかってるわよ。ありがと、ママ。着いたらラインする。」
「みく、あなたならできるわ。さよならは言わないわよ。先に出るわね。」
「ママ、ありがと」
みくは、コーヒーを片手にヨレヨレのTーシャツで玄関からママを見送った。

身支度をして、最寄り駅の品川まではタクシーで行き、品川駅から、数人の外国人と一緒に成田エクスプレスに乗り込んだ。
早速、自分の席を見つけ、黒いフカフカのシートに座り込んだ。気が抜けそうだ。。
家を出る前にチェックしたが、もう一度、成田エクスプレスの中で、IDやワクチンパスポートなどの忘れ物がないかを再びチェックしよう。
一緒に乗り込んだ外国人たちの笑い声を聞きながら、窓の外を眺めながらうとうとし始めた。
成田空港に到着し、小走りにエアラインのエコノミーのチェックインカウンターに並んだ。エアラインのスタッフが並んでる乗客のパスポートチェックを始めた。
ようやく私の番になり、彼は、私のオンラインチェックインしたアプリとパスポートを確認した。どうやら、私のマイレージステータスのグレードでビジネスのカウンターが利用できるそうだ。ラッキーと思いながら、列から離れ、ビジネスカウンターでチェックインを済ませた。
美人のエアラインのグランドスタッフさんは慣れた手つきでボーディングパスを渡してくれた。
片手で、ボーディングパスを受け取り、真っ直ぐにセキュリティチェックへ向かった。アップルウォッチなどを外し、セキュリティーチェックをとおり、イミグレの自動化ゲートも難なく通過した。自動化ゲートの鏡に映った私の顔が疲れきっていて、ちゃんと顔認証されるか心配だった。。が自動化ゲートは無事に開いた。

チェックインの時に教えてもらったのだが、どうやら、エコノミーなのだが、エアラインのステイタスの権利でラウンジが使えるそうだ。
搭乗まで時間はたっぷりある。ラウンジでシャワーでも浴びることにしよう。
早速とラウンジに向かった。
出張などでもラウンジはよく使っていたが、常に同僚や上司が同行していたのでラウンジでシャワーをゆっくり使うのは初めてだった。アフターコロナの影響で使えないのはと思っていたが使えるそうだ。ありがたい。
シャワーを浴びてさっぱりした後、軽食を取り、自分のソファーを確保し、どさっと腰を下ろした。

目の前、一面に広がる飛行機たちを見ながら、新たな人生の出発に心を躍らせていた。
この時の私は、現地で数奇で過酷なことが待っているとは夢にも思わなかった。



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