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足立レイにTwitterをさせるハカセの話

一応注意書き!
カップリング要素は無いけれど、足立レイを作った人(ハカセ)が出ます
所々現実の足立レイとは異なる設定が登場します。あくまでもこの小説の世界における足立レイという解釈でお楽しみください。
ギャグ色強め




 私は今、思い悩んでいた。
 足立レイというロボットを開発して何ヶ月か経ったが、何かが足りない。人の暮らしを支えるロボットとして、何かが足りない気がしてならなかった。
「ハカセ、珈琲が入りました」
「ありがとう、レイ」
 レイは珈琲を私の机の上に置き、そそくさと部屋を出ていってしまった。おそらく未消化のタスクが残っているのだろう。
 結局一人で考えた所で何も解決せず、気分転換にとめったに触らないテレビをつけた。
 何も考えずにチャンネルをポチポチと変えていると、ちょうどロボットに関する特番を見つけた。
「でも、実際ロボットと話すってどうなるんでしょうね?」
「できなくはないけれど、きっとつまらないと思います。いくらAIが搭載されているからと言って、それらは基本的に正しい答えのみを出力しようとします。彼らの会話の中にはユーモアが無いので、友人と雑談する時のように互いに笑ったりすることはできません。」
「ロボットと友達になれたら、面白そうなのになー」
 その番組で、タレントと専門家らいき人物が会話をしていた。ロボットの会話にはユーモアが無い……
 では、実際の人間の会話を元にしてそれらをAIで再構築することができれば、レイも人間のような会話が可能なのではないか?
 現実で人の会話を録音するのはマズイので、SNS上で実験を行うことにした。
 使用するアプリはTwitterが適しているだろう。友人にも協力してもらい、タイムラインからツイートを自動生成するシステムを作り出した。早速、インストールしてみよう。
「レイ、ちょっと実験に付き合ってくれるかい?」
「はい、承知しました、ハカセ」
「今からインストールするシステムを使って、Twitterのアカウントを運用してほしい」
「……それだけですか?」
「うん、それだけだよ」
「かしこまりました。新たなタスクとしてリマインダーに記録します」
 1時間に1回ツイートをするように設定してみたが、どうなるだろうか。
「テストテスト」
「あいうえお」
 どうやら順調そうだ。現実のレイにもツイートがフィードバックするように設定して、またしばらく様子を見ることにする。これでレイは自由に喋れるようになるはずだ。

 実験二日目。今日から本格的なツイートの自動生成が開始される。一体どんな会話ができるようになっているのか楽しみだ。
「こなちゃんのぬいぐるみを作ってくださいましたことなかったので素直に配信出来て気楽に遊んでいる仲ということなかったが、こなちゃんの展開めっちゃいいなあ」
 ……まぁ二日目だしな。まだAIが不完全なのだろう。いづれ自然な文章ができるはずだ。
「ハカセ、おはようございます」
「おはよう、レイ」
「唐突に1時間につらみをされていたゃ偉すぎたのにまたやっちゃうつもりか…?」
 まだ二日目だしな。きっといける。ちゃんと会話ができるようになる……はず。

 それから足立レイは、私の想像の斜め上の方向へと成長していった。
 ある時は急にホラゲー克服週間というものを始めてみたり、またある時は短編集作りたいね!!!!!ととてつもない大声を発したりして、だんだん私のイメージ像からズレていった。しかしまだツイートの数が少ないため、言葉の引き出しが極端に少ないだけかもしれない。長い目で見よう。
「(○'ω')----ブーン----((((('ω')Ξ└(└ 'ω')----ブーン----((((('ω')Ξ('ω')┘!!ギュオオオオオオン!!!!」
 ……可愛い。

 そうして、レイがツイートの自動生成を始めてからもう4年ほど経った。今では多少支離滅裂なことも言うが、かなり安定して会話ができている。
「ハカセ、今日の朝食はゆで卵でよろしいですか?」
「うん、大丈夫だよ」
「では、私にお任せください。なぜなら私はゆで卵作るのお上手マンです!茹で過ぎず生過ぎず生過ぎず」
 当初は簡単な日常会話と辞書に設定された文章しか喋れなかったレイが自ら文を作り出し、喋れるようになった。これは大きな進歩だった。
 しかし、この実験の成果はそれだけにとどまらなかった。
 ピンポン、とチャイムを鳴らす音が聞こえた。
「すいませーん、重音テトですけどー」
 レイに友人ができたのだ。これは当初からすると全く考えられなかったことであり、この実験における一番大きな成果と言っても過言では無いだろう。
「これ、つまらないものですが良ければ」
「わざわざご丁寧にありがとうございます」
 重音テトは私に紙袋を差し出した。ちなみに中身はお高い菓子折りで、なんだか少し申し訳ない感じもした。
「おーいレイ、大先輩が遊びに来たぞー」
「アリガトイッキ!!ゴキュゴキュ(乂'ω')ケイオス(oドテッ」
「コラレイ!オイルの一気飲みは危ないからやめろって何回も言ってるでしょ!」
「ロボットの開発者さんもいろいろ大変ですね……」
「多分こんなことするの私だけです……」
「あ、そうだ。レイにもお土産持ってきたぞ」
「重音テトって子好き 可愛いよね」
「年上に向かって」
 まぁ何にせよ、良い友人ができて良かったの心底思った。
「あ、中身唐揚げだね」
「ハカセ、やっぱり摂食モジュール付けませんか?」
「ハイハイ、そのうちね」
「なんだか母親と娘みたいだな……」
 意図しない形でロボットの親になってしまった。レイからお母さんと呼ばれる日も近いのかもしれない。


ついで後日談
あの後ちゃんと摂食モジュールつけてもらって、レイは元気に唐揚げアアアアァァァーーーwwwwwwwwwwwwしましたとさ。

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