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わたしと小鳥とあしのにおいと
私が両足ひろげても
お空はちっとも飛べないが
飛べる小鳥は私のやうに
あしを臭くはできません
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これをひらめいたとき、私は自分の前世は金子みすゞさんか、その娘かその友達か、そのまた友達か、ともかく金子家族周辺だろうと自信たっぷりに考えた。とはいえ、足のにおいなんて風情のかけらもない題材で金子みすゞ氏の素晴らしい詩を改変するなど、むしろ罰当たりなことなのかもしれないが…。
私は現在20歳。今年の誕生日を迎えたらなんと、成人の壁をぶち破って21歳になるらしい。この20年フラフラくねくね生きてきたわけだが、私のこの20年の歴史はもちろん私の足のにおい歴史と共にある。
この間友達とインドカレーを食べに行った。大人数で押し掛けたため店主に奥のお座敷に押し込まれ、畳に正座をしてカレーをたべることになった。お座敷に上がろうと靴を脱いだとき、私は気が付いてしまったのだ。ぷーんと漂ってくる私の足の強烈なにおいに。まずい!これは、周りの人に気が付かれるレベルのにおいの強さだ!焦った私だが、あくまでも顔には出さず全身からいい匂いがするいい女の顔を保ち続けた。
全員がお座敷に上がり、注文までがひと段落したところで私に危機が訪れる。そもそも人間というものは、何かに集中している時はそれ以外の物事が疎かになるもの。つまり注文中はメニューを見ることに夢中になって私の足のにおいには気づかれなかったのだ。しかし注文が終わり料理が来るまでの待ち時間である今、もはや私の足のにおいから他人の気をそらすための術は存在しない。さらに、そのとき私の隣に座っていたのは今回のグループの中でデリカシーのなさNo.1のパセリさん。パセリさんが口を開いた。
「なんか、めっちゃ臭くね?誰の足だよお。」
普段はその屈託のなさに助けられているのだが、今は違う。頼むから黙っててくれ!そんな言葉を飲み込んで、クールな顔を保ち続けた私をだれか褒めて!
すぐに話題が流れるようならパセリさんを無視して終わろうと考えていたが、パセリさんの親友の漱石さんが
「俺とお前は足がくさくない同盟組んでるし、他の誰かじゃない?」
足がくさくない同盟ってなんだよ!どうやら高校時代にお互いの足を嗅ぎあって、相手のことを同盟相手として認めたらしい。この説明を私ができるということは、つまりそれだけ足のにおいだけで会話が広がったということで…。これは、腹をくくるしかない。せめて笑いが取れればと思い、声を上げた。
「私の足のにおいに決まってるじゃん!」
なんて、バシッと笑いながら言えたらよかったのだろうが実際に私の口から出た言葉は、
「私だよ…。」
こうなると not 足クサ同盟の二人も
「え。あ、かわいそう…。」「あ、ごめん。」
なら初めから言うな!
わたしと小鳥とあしのにおいと、みんな違ってみんないい。
でも、大学生になって運動する機会が減っても足のにおいが最前線に立ち続けているのはなぜなのか。同じような生活をしているほかの人の足のにおいをこっそり嗅いでも、私のようににおいを出し続けている人と出会えないのはなぜなのか。
個性を出すなら別の部分でもよかったんじゃないの?神様!!
こんな感じで、私の生まれて初めてのnoteへの投稿を終わってみます。