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こんな漫画もどうぞ➀ 男おいどん 松本零士

「宇宙戦艦ヤマト」「銀河鉄道999」などでお馴染みの松本零士先生の「大四畳半シリーズ」と言われるダメな男(学生)を中心とした下宿先での人間模様を描いた一遍。

主人公の「大山昇太(のぼった)」は通称「おいどん」。チビでメガネでガニ股、短気で怒るとすぐ手が出るが喧嘩も弱い。口癖は「おいどん男ばい」「おはんら人の情ちゅうもんがないんかい!」。
毎度毎度、恋やら結婚やら合格やら夢を見ては現実に泣かされ、孤独に四畳半ですすり泣くオチもしばしば。
でも他人のために体を張り、泣くことができる心優しい男。
夜間高校に通いながら大学を目指すも、日中のバイト先をクビになり学費を賄うことができなくなり、同級生のカンパも「男がすたる」と断り、やむ無く休学することとなるのが第1話。

とにかく何をやってもうまく行かないおいどん。
臨時バイトはたいていすぐにクビになり、下宿先や臨時バイト先の女性に片思いをしては振られる。
下宿館の他の学生から大学合格の声が聞こえてくると来年があるさ と虚勢を張りながらも、陰で大家の婆さんの胸ですすり泣く。
下宿先の他の学生も色々事情があり、家庭の事情で学校をやめ帰郷する事になる女の子、実は左翼活動家(時代ですね)してたニセ学生の女の子、おいどんと窓越しにパンツを投げ合うケンカ友達の浪人生 など様々だ。下宿館を舞台にした群像劇でありシットコム、というべきか。

そんな中おいどんは、大家の婆さんに家賃滞納を見逃され、普段のバイト先であるラーメン屋の親父の温情を受けながらも復学を目指し、周りがどんどん先に行く中、不安も焦りも山ほどあれど希望は決して捨てず「明日のために今日も寝る」のだ。

松本先生の下宿先でのかつての生活が原風景と語っているが、それが作品に血肉を与えたのか「学生時代に同じような苦労をしている(していた)読者からたくさんの共感の手紙が来た」とのこと。

また、おいどんを語る上で外せないのが「サルマタケ」。
サルマタ(トランクスのようなもの)愛好家のおいどんだが、洗濯はほとんどしないし風呂は数カ月に1度入るくらいの不潔っぷり。洗ってないサルマタを押し入れに大量に放置し、謎のキノコ・サルマタケが生えてくる。これを食べたり売ったりする騒動も面白い。(これも松本先生の実話らしい、ちばてつや先生に食べさせたとかなんとか)

終盤まで苦労しつつも少しずつ少しずつ前に進みながら、もの悲しさを感じる曖昧な結末で終わる「男おいどん」。
だが、以降の短編や他作品で子孫が出てくる。

おいどんもいつかは幸せになれるのだ。

そこをはっきり描かないところがまた憎い。

きっと義理堅く大家の婆さんに挨拶に来るんだろうなあとか、相手はどんな人かなぁとか色々空想してしまう。

おいどんを読んだあと、Kindleで「大四畳半シリーズ」やおいどんが出演する他の松本作品を読みあさってしまった。
他の作品もいずれ紹介したい。

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