最後の晩餐 ー最終章ー そして私は
まめおやじです。
お好み焼き 好きですか?
最後の晩餐と聞かれたら迷わず「お好み焼き」
そう答えます。できれば自分でつくって食べたい。最後の晩餐を自分で作るって変かな。
お好み焼きの記事3本目。
「焼きそば お好み焼き二刀流」の店
駅の南側に幹線道路があり、バスターミナル、タクシー乗り場、すこし高い建物がいくか立ち並ぶ一角に、周りの風景とは異質な古いお店がひっそりとビルとビルの間に挟まれている。
木製引き戸をくぐると、別世界。ソースの焼けるにおい、キャベツの焼けるにおい、たまらない。通路が狭く待ち客が肩をよせあう、異空間が現れる。
「満席なのでこちらでお待ち頂けますか」
90歳を超えた腰が曲がったおばあさんが丁寧に待合椅子へ誘導する。
鉄板テーブルは5席。
9割以上が常連。常に混んでいる。待ち時間が長くても誰も文句は言わない。
四世代の女性4人で切盛り。柔らかな声で客とのやりとりが幾重にも重なり、緩やかな空気を醸し出し、店内を包む。
ほとんどの常連がお好み焼きと焼そばの両方を頼む。
ここでは店の方が鉄板で焼いてくれる。客は触らない。
待ち時間から食べ終わりまで90分はかかる。急いで食べる店ではない。ゆっくり食べる店。
お好み焼きを先に食べたり、焼きそばと同時に食べたりもできる。混んでいても自分のペースで食べれる。相席はない。ありがたい。
20分ほど待ち、テーブルへ案内される。オーダーは先に伝えてある。お好み焼き焼きそば同時。
雑誌をみながら鉄板で作られていくのをチラチラ見ながらまつ。お冷はセルフ。完成間際になると鉄板から目が離せなくなる。
「おまちどうさま」
待った分、お腹はぐうぐう。
いただきます。
左に焼きそば 右にお好み焼き
なんという贅沢な時間。
お好み焼きは小ぶり。焼きそば麺は弾力、コシがありキャベツが甘く美味しい、ここでしか食べられない上品な優しい味。ソースは甘め。重たくなく、優しい味付けなので、いくらでも食べれる。
時間をかけてゆっくり味わう。至福の時。
板を横張した店内 柔らかな声 ゆっくり食べる客 ソースの焼ける香り。混ざり合って優しい空間を作り上げる。その中で自分のペースでゆっくり食べる。味わう。
「ご馳走様でした。お勘定」
コロナ明けに店の前を通ったら、閉店の知らせがグレーのシャッターに貼ってあった。
とうとう3店舗ともなくなってしまった。
コロナ禍でお好み焼きを家で作り始めた。様々なレシピを参考に試行錯誤を重ね、3店の味の記憶と共に自分のお好み焼きを完成させた。
あのお店はもうないけど、確実に味は受け継がれている。
思い出はずっと消えない。
ありがとう。
ごちそうさまでした。
ここまで読んで頂きありがとうございました。
貴方にとって良い一日を~まめおやじ