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日本タイクラブの計画による希少本発行

日本タイクラブの20年アーカイブより(海外活動)
Universal Science 学会と 日本タイクラブの計画による希少本発行                                                            
チャローン・スントラーワーニット(チュラーロンコーン大学)

1995年に、大阪の日本タイクラブの代表である赤木攻教授が、Universal Science 学会の会員であるタイ国大学の研究者─教職者と、2機関の学術的協力をすることにしました。

日本タイクラブは、タイ国と関係ある色々な職業、知識分野の日本人の協力で設立されました。2国の間で意見、文化の交換と、共同で色々な行事を行うために、タイ国と関係を持ち、愛し、連帯する人達を結集するセンターとすることを意図しました。

現在タイ社会は大きな、これまでになかったような急激な変化に遭遇しているようです。特に経済発展は、全般的に人々の経済的な生活状態を向上させてきました。しかし、前の時代から続く、価値ある文化的な生活と遺産はその社会で変化させられ、壊されているのかも知れません。

文化の継承と育成は、新しい時代の全ての社会にとって、大変重要なものです。本の発行は文化継承の重要な方法のひとつです。発行から利益を求めるのではなく、一般の人々が求めやすい本として発行するための、希少で重要な書類やデータの探索は、文化面に於ける価値ある仕事です。

Universal Science学会は1982年に、過去、現在そして未来のタイ国の社会、政治、経済、文化と能力面での生活教育に関心を持つ色々な機関からのタイ人研究者のグループにより設立されました。

Universal Science学会のUniversal Scienceとは、国内外の多くの教育機関からの全会員の多様な学問基盤と所属基盤を示し、更にUniversal Worldの全体を覆う多様性と広さを持つ、取り上げて論争する学問面で求める命題を含みます。

日本タイクラブの前述の設立意図は、タイ社会が、歴史教育やタイ文化、習慣の継承に有益である為の古代文書や古書発行を希望する、Universal Science学会の学者の望むことと一致しました。このような理由で、日本タイクラブの希少本発行計画は1995年に誕生しました。

過去のものを重ねて発行するには、多くの限定条件があります。古代文書や古書のあるものは、無くなっていたり、発行しても関心をもたれないため、残念ながら、研究者と、関心を持つ一般の人達に、タイの歴史と社会の理解を進めるための多くの価値を持つ古書に辿りつけないなどがありました。

日本タイクラブとUniversal Science学会の研究者の間で合意した作業フレームは次の通りでした。
1.Universal Science学会の研究者は.日本タイクラブの計画である希少本発行検討委員会を設立する。それは古代書類や、或いはタイ語希少本を審議、選択するためであり、編集、発行、発行部数、営業上の利益を目的としない適当な宣伝,更に毎回発行費用の収支簿の作成に責任を持つ。
2.日本タイクラブは一冊発行当り10万バーツ、或いは、場合によっては、それ以上の費用支援金を責任を持って準備する。

日本タイクラブの計画である希少本発行検討委員会は、1995年に発足し、次のメンバーで構成することにしました。

赤木 攻    教授  顧問
チャローン・スントラワーニット  准教授  委員長
ソムキャット・ワンタナ博士 准教授  委員
ナカリン・メートトライラット博士  准教授  委員
ウィーラ・ソムブーン博士  助手  委員
スウィモン・ルンチャルーン  助手  委員、セクレタリー

そこで、日本タイクラブの計画である希少本発行検討委員会は、次のように主旨、文書選択基準、そして普及基準を決定しました。

1.日本タイクラブの計画である希少本復刻の主旨は、如何なる営業面の利益或いはメリットを追及せず、タイ文化への理解を伝承し、推進することである。だから初期に価値ある希少本を発行を目指す。また他の機関によって再発行される機会がごく少ない本とする。

2.希少本の再発行は、元の本と正字法のフォーマットを保存するために、元の原書から写真を撮る方法で発行する。

3.研究面のメリットのために、希少本の全ての本にその方面の有識ある研究者による解説を入れる。

4.希少本の各本の印刷数は1,000冊とし、半数は一般の研究面として、高等教育機関図書館、研究機関、文化関係の公的部署、営利を目的としない民間の機関に贈呈する。

5.残りの本は発行コストに近い価格で、出来るだけ多く販売する。売り上げ金は、次回の日本タイクラブの希少本発行の経費のために、元の基金に繰り入れる。

6.読者からの色々なアドバイスを受け入れる。教育目的で上記の本を授与するに相応しい組織の名前や、日本タイクラブの希少本発行計画で検討するに相応しい希少本の名前の提案も含める。

普及のための再発行をするに相応しい希少本の原本に多くの制限がありました(特に原本が完全に揃っていること、内容の価値、サイズや長さなど)。従って、1995年の日本タイクラブの希少本復刻計画の開始から希少本復刻発行は6冊が発行できたのみです。
 
<第一冊目> アヤティワット(著者K.S.R.クラーブ) 218ページ R.S.130(バンコク王朝歴)(1911年)に初版発行 1995年に復刻発行 タマサート大学政治学部准教授 ナカリン・メークトライラット博士の解説 価格120Baht


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<第二冊目> 各県の状況に関する下院議員の講演 216ページ 1935年に初版発行 1996年に復刻発行 カセサート大学社会学部准教授 ソムキヤット・ワンタナ博士の解説 価格150Baht

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<第三冊目> 高原での御陵威(著者アム・ブンタイ) 148ページ 1933年に初版発行 2000年に復刻発行 無所属の学者 チャイシリ・サムットワニット氏の解説 価格100Baht


<第四冊目> サームネーリー・ワットナーリウオンの件の発表(著者ナリン・パーシット) 226ページ 1928年に初版発行 2001年に復刻発行 研究者 サクディナー・チャトラクーン・ナ・アユタヤー氏の解説 価格120Baht



<第五冊目> サーコーンテーサバーン(著者モーンチャオ・サーコーンワンナコーン・オラワン) 249ページ 1935年に初版発行 2004年に復刻発行 タマサート大学政治学部准教授 ナカリン・メークトライラット博士の解説 価格140Baht



<第六冊目> サムットラーチャブリー 345ページ 1925年に初版発行 2007年に復刻発行 タマサート大学タイ学研究所 ミス スントリー・アーサワイ氏の解説 価格300Baht


日本タイクラブの希少本計画は全部で6冊を発行し、読者から好意ある歓迎を受けました。そして、色々な媒体で、研究者から広く論評を受けました。これらの成果は日本タイクラブからの限りない支援に因ります。
日本タイクラブ希少本計画の第七冊目は、印刷準備の段階にあります。
                                                                                                                   
(金子義久訳)













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