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次代の証券会社の、"なめらかな"証券基盤をつくる、エンジニアリング的挑戦

今回のインタビューは、大手日系証券会社2社でのエンジニア経験を経て、FOLIOへとジョインすることになった証券基盤チームの高山智史へのインタビューです。

大手からベンチャーへの転職は、エンジニアとってどんな意味を持つものだったのか?大手証券とベンチャーのオンライン証券での働き方には、どんな変化があったのか? また元々、エンジニアではなかった人物が、どんな道を辿り、今のポジションへと至ったか?フロントエンドエンジニアの倉見洋輔(@Quramy)がインタビュアーとなり、お届けします。

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-高山さんは、ユニークなキャリアを持っているんですよね? 

はい。私は元々はエンジニアではなかったんです。大学では情報学を学んでいましたが、数理工学という数学よりの専攻でした。なので、情報学出身といっても、プログラミングやITに詳しかったかと言えば、そんなことはないんです。

-どんな経緯で、金融業界のエンジニアの道を辿ることになったのでしょう?

元々、私は事業会社(自らが主体となって事業をしている会社)で働きたい、と考えていました。そこに自分のバックグラウンドの情報学を生かした働き方ができたら、レバレッジが効くのではないか、と考えていたわけです。で、エンジニアになった。エンジニアになったのは、元々やりたかったことがヘッジファンドみたいなことだったからです。どういうことかと言えば、「自動で売買(売りと買い)をつなげて、最終的に利益を積み上げていくロジックを考える」というようなことがしたいと思っていたんです。

自動売買の仕組みづくりをしたかったからエンジニアになった、と。 

はい、そうです。でも配属ガチャに負けて希望の部署には入れませんでした。結局プロの投資家の顧客からの注文を受ける部署に配属となり株のトレーダーの仕事に従事していました。

そこで驚いたのが、顧客の注文を受けるのが、ほぼ手動によるものだったということです。お客さんからの注文を受けて、トレーダーが逐一対応をしていくという環境です。

結局、1年弱くらいその環境下で頑張ってはみたものの、やはり手でやるのは非合理的だし限界を感じました。それで、「システム開発したいです!やらせてください!」と直談判したわけです。その時は、まだエンジニアではなかったんですが、自動化した方が良いと思って…。 

-そこからエンジニアの道がはじまったのですね。業務設計をしながら、システムにできるところはシステムに置き換えていくという仕事ですね。「自動化した方が良い」という声をあげて、それを実行するというのは、一筋縄では行かなかったのでは? 

はい。それまでは、データはあるのに手で紙の伝票を書いていたり、紙をもらってデータを打ち込んだりという形の仕事が残っていました。

大変だったのは、長く続けてきた仕事の習慣を変えてもらうこと。とても反発は大きかった。「今までは上手く回っていたのに、なんでやり方を変えなきゃいけないんだ」と思っていた人も少なくなかったと思います。 

-調整も必要でしょうし、それはもう一大プロジェクトだったのではないですか?   

忍耐でしたね。 

-それでもやり遂げたわけですよね。それができた秘訣は何だったと思いますか? 

もともと問題や課題を解くことは好きでした。けれどその時はなぜ手作業が必要なのか、が分からない状態でしたので。地道にヒアリングや調査、仮説と検証に真面目に取り組み、問題を明らかにしていったことが大きかったのだろうと思います。

-なるほど。そんな風に、キャリアの舵をエンジニアの方へと切ったわけですね。 

はい。国内の大手証券会社2社に勤めて、最後はトレーディングアルゴリズムと執行管理システム(EMS)のチーフアーキテクト兼開発リーダーとして働いていました。 

トレーディングアルゴリズムは、ある程度決まったパターンの売買を代替する、DSA(Direct Strategy Access)と呼ばれるサービスを開発していました。ネット証券でもある逆指値や、1日の中で時間分散させるTWAPなどですね。決まったパターンがあるとはいえ、マーケットは日々変わりますし、もともとトレーダーが手で行なっていたことを代替しなければならないので、とても大変でした。

-なるほど。では、EMSとはどういったものでしょう?

EMSはお客様の注文一つ一つのライフサイクルを管理するシステムです。注文と取引の結果である約定は抜けても多くてもダメなので、Exactly onceを保証する必要のあるすごくガッチリしたシステムでした。証券会社の一般的なイメージって、株の売買を始めとしたフロントデスクと呼ばれる業務だと思いますが、この2つはフロントデスク業務を支える重要なサービスです。

どちらも入社前から存在していたのですが、リプレイスのプロジェクトが始まりました。たまたま私が入社した後にこれら重要なプロジェクトが始まり、ゼロから携われたのはとても幸運で貴重な経験でした。

でも、その流れには一通り携われて、ある程度やり切った感があったんです。そこから他のこと、新しいことをやろうと考えると、異動してミドルオフィスやバックオフィスの担当に変わるか、株以外のプロダクトに変わるかの選択しかなかった。ただどちらも既にシステムがあり業務が回っているので、先の2つみたいにゼロから開発、という訳にはいきません。

だとすれば、外に出るという道もあるかな、と考えたわけです。 

-大手金融機関から、どういう経緯でFOLIOを知って、興味を持つようになったのでしょう? 

今まで経験したことのないものをやりたかった。新しいことにチャレンジしたかったんです。既に大手の証券会社は経験していますから、国内大手証券に転職したら、また同じような仕事になってしまうのはだいたい想像がついていた。だから最初は、転職先の候補として、自分の想像が及ばないフィンテック系の会社を考えてみたんです。

フィンテック系で、証券会社で、なおかつ自分たちのプロダクトを複数持っていて、それを内製している会社…。そうやって探していって浮かび上がってきたのがFOLIOでした。実際にはFOLIOしかなかったんです。だから、FOLIOを知ったのは、偶然の流れだったんです。

-FOLIOに惹かれたポイントについて、もう少し詳しく聞きたいです。 

それは、ディーリングエンジンですね。私は、ディーリングエンジンの一部であるEMSの開発を前職で経験しており、必要としているスキルセットがわかっていました。だからFOLIOの応募フォームに、「高速なディーリングエンジンを作りましょう」と出してみたわけです。何と言っても、自分の強みをフルに生かして転職出来るチャンスだと思いましたから。

FOLIOはスタートアップなので他にも色々なサービスが必要で、ディーリングエンジンを足がかりに新しいことにチャレンジする機会もありそう、と。

イチから証券システムを作るところに携わりたいという想いを持っていたので、この機会を逃したら次はそうそうこのチャンスには巡り会えないだろう、と。実際に、FOLIOが登場するまで、ネット証券は10年間も出なかったわけですからね。(※)

(※)国内株を取り扱う独立系証券会社としては、10年ぶりの新規参入企業

-そこからFOLIOにジョインすることになったわけですが、大手からベンチャーへの転職ということで不安な気持ちはありませんでしたか? 

すごくありましたよ。文化もよくわからなかったですから。「本当に、自分がマッチできるのだろうか?」とか「自分がやろうとしていること、やろうとしているやり方が通用するのだろうか?」とか。でも実際に入ってみたら、そんな不安は無用だったのかもしれませんね。

-FOLIOのエンジニアは、金融出身じゃない人の方が大半です。その点、金融出身のエンジニアとしてはチームメンバーとして気になることはなかったですか?  

実は、それがなかったんです。話が通じない相手がいたりしても良さそうなものですが…。前職での仕事のやり方と大きくずれていなかったというのが、大きな要因なのかもしれません。前職の考え方を引き継ぐことができて、「1」から頭の中を入れ替えてというよりも、その時の良さを生かしながらやれている気がして…。

例えば、前職もあくまで主体は私を含めた社内エンジニアチームで、ベンダーさんにはエンジニアチームの一部として開発に参加してもらう形を取っていた。その際、ベンダーさんには自分が開発するのに必要かつ十分な情報を渡すことで、コミュニケーションの齟齬が極力起こらないよう心掛けていました。これは、今FOLIOで取っているスタンスと同じです。

加えて、FOLIOのエンジニアチームのみんなとは、私の領域にある知識と皆さんが持っているスキルがうまく補い合える関係を築けているように感じられるのも良かったことの1つです。 

-他にFOLIOで働くエンジニアの仲間たちに感じていることはありますか?

FOLIOには、基本的にとても高いスキルを持っているエンジニアが、集まっていると思います。私がいる証券基盤チームにしても、バックエンドにしても、フロントエンドにしても、本当にいい人たちが多い。彼らには、個人のことを尊重してくれる文化、自主的にやってくれる精神というものは根付いているように感じています。そんな環境なので、プレッシャーではなくて、心理的安全を感じながら、やりがいを感じつつ働けるのは嬉しいですね。旧来の日本の会社だと「調整してやってもらえません?」とお願いしても「嫌だ」とか言われてしまったりすることもありますからね(笑)。仕事が増えるのをすごい嫌がる人がいたりするじゃないですか、普通は…(笑)。でも、FOLIOにはそれがなかった。 

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 -良い点についてはわかりました。反対に、「これはちょっと...」という点もあったのではないですか? 

個人的な意見ですが、スキルを持っているがゆえに、なんでもババッとつくれてしまう。サクッとつくって、次のプロジェクトに移行してしまう。これは、今後は、もう少しゆっくり考え直す機会などを持った方がいいのかもしれませんね。証券会社の基盤ってとても大きいので、作ったあとに修正するコストが大きいんですよ。経験上、急がば回れでちゃんと設計してからの方が良かったという反省が多かった。もちろん、プロダクトをリリースする厳しいスケジュールの中でのことなので判断が難しいことも理解できるので…。でも、つくれてしまうスキル、短期間でリリースにこぎ着けてしまう力がすごいことは間違いありません。 

ーここからは今のお仕事について聞かせてください。高山さんの所属している証券基盤チームというところは、どんなミッションがあるのでしょうか? 

基本的な目標となるのは、「証券会社で行っている業務をいかに円滑に回すか」です。もちろん稼働しているプロダクトなので、今も正しく業務は回っているんですが、新しい商品やサービスを提供する未来を考えると、このタイミングで整理しておく必要があるのかな、と。

もう少し具体的に説明すると、証券会社の事業に必須な発注や口座を管理する基盤システムを整える仕事です。実際に取引所に流すフローであったり、入金や出金であったりとか、口座振替するのでも積立をするとなったら、銀行と接続してかつそれを1個のトランザクションとして処理するといったことを整理しています。取引したのはいいけど、スマホで自分の口座の利益を確認したら、「残高がなかった」とか「よくわからないけど残高増えていた」みたいな不整合があったら一発で信用なくしますからね。特に、FOLIOの場合には、個人投資家がお客様になります。プロの投資家と比べて、お客様の生活により近い分だけ障害の影響が大きいので、とても緊張しますね。

-お客様のそれぞれの帳簿をしっかり管理するというイメージでしょうか?

はい。口座の数字の増減については、証券基盤チームが面倒を見切る。間違ってはいけないところを証券基盤チームがガッチリ守る。そんなイメージです。そうすることで、プロダクトを通してお客様に向き合っている仲間が、後ろを気にせずに自分たちの取り組むべき仕事、新しいサービス、新しい機能を入れていくことに注力できる。そう思っているんです。 

-そんな証券基盤チームの中で、高山さんはどんな役割を担っているのでしょう? 

今は、基本的には、アーキテクトの役割を担っています。それも、どのテクノロジーを採用するかのアーキテクトではなく、ドメイン側のアーキテクトです。具体的に言うと、「発注しました」「入金しました」と言うときに、「どんな風にお金を管理しよう」とか「どんな障害があってもお金がなくならないようにするにはどうするべきか」などについて考える役割です。

-大手からベンチャーの FOLIOに加わった立場として、もしFOLIOに興味を持っている人がいたら、どんなアドバイスをしますか? 

証券業界からの転職の場合は、入社時点での技術力は、あればベターですが必須ではありません。証券領域の知見を生かしてもらえるよう、優秀なエンジニアがサポートしてくれますから。ただエンジニアがマジョリティの会社なので、技術に興味があって学んでいきたいと言う人の方が良いかもしれないですね。 

-働き方と言う面からは、どう感じられていますか? 

FOLIOの仕事が裁量労働制であることは、ありがたいことですね。夜遅くなってしまったときは、翌日少し遅めに来たりとかできますから。私には、1歳半の子供がいるから、家族と朝一緒にご飯を食べられるみたいなことや、場合によっては夜、少し早く帰って子供の顔を見られるというのが、すごく助かるんです。 

-最後に高山さんの今後のビジョンについて教えてください。今の自分の仕事で描く将来像、それに加えて、こんな未来が作って見たいという想いを聞かせて欲しいです。 

FOLIOの場合、他のフィンテックと違う点は複数のサービスを一社で全部実現しようとしていて、その結合が非常に難しいところなんです。一般的なネット証券で使えるレベルのものはつくりたい。でも、他のネット証券と同じようなものをやっても意味がない。今のFOLIOのスキルセットの高いエンジニアと、より良いものを作れたらなというのが今目指している目標です。

 もう少し先のことを言えば、「なめらかな証券基盤」をつくれたらと思っています。「なめらか」という言葉は、色々なところで使われていると思うんですけど、すごくいい言葉だなと思っています。資産の売買、利益の管理、受け渡しのタイムラグなど、情報をどう提供して、ブラックボックスを無くしていけるか。

つまり、お金の流れをいかにスムーズにしてあげられるか。なめらかな世界を実現していけるか。お客様に不便を感じさせないか。その発想がすごく好きだし、とてもやりがいのあることじゃないかと思っているんです。

-なるほど、素敵な未来像ですね。よくわかりました。証券の新しいエンジニアリングの未来が拓けていく感触がつかめた気がしました。ありがとうございました。 

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