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名もなき音。

2/28(金)より「名もなき者/A Complete Unknown」という作品が日本公開されます。フォーリー効果音を担当しました。

1960年代にフォークミュージック界に突如現れた伝説のシンガー、ボブ・ディランの伝記映画です。

フォークソングが若者に受け入れられるきっかけを作ったと言っても過言ではないアーティストで、同時にエレキギターやキーボードをフォークミュージックに取り入れたことで賛否両論を浴びた異端児でもあります。ボブディランを知らない方でも、反骨の青春ドラマとして楽しめる作品だと思います。

主演のティモシー・シャラメ、ジョーンを演じるモニカ・バルバロ、ジョニー・キャッシュを演じるボイド・ホルブルックも歌唱、ギター演奏ともに現場録音、アフレコすらしていないという大変な録音作業をしたそうです。どんだけすごいんでしょうね。歌える俳優を集めたわけでもなく、オファーされてから練習したというからプロ根性に脱帽です。録音には40本のマイクを使用したとかで、しかも60年代、70年代に生産された古いマイクを集めてきて録音したという現場音声さん達のこだわりも相当なものです。低迷が続くハリウッドですが、こういう製作者の魂を見せてもらえたという点でも有意義な作品だと思います。

監督が音にこだわっているという作品に関われることは、やはりちょっと特別なワクワク感があります。

フォーリー についてご存知の方も、「映画の足音を入れ直すってどういう事?」といまいちピンと来ない方も、この作品の中の 

静まり返る病院の廊下に響く足音やギターケースのゴトゴト、

濡れた歩道の音、中華料理屋の調理場の音、タバコの音、

ギターを掴んだ時、置いた時にわずかに鳴る弦の音

などなど、聞いていただければ「なるほど、いい感じ!」と思ってもらえる小さな音達をたくさん散りばめときました。場面にちょっと質感を添えてるだけの、セリフでも音楽でもない音。身近すぎて誰も気にしていないようなところに、フォーリー は隠れています。

もしお近くの映画館で上映がありましたら見て、聞いてみてください。

あ、でもあんまり「足音にばっかり気を取られてストーリーが入ってこなかった!」ってならない程度にお楽しみください。

ありがとうございました。


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