住んでみてわかった日本とヨーロッパ 『田舎暮らし』 の違い
〈未知〉ヨーロッパの田舎暮らし
ヨーロッパの田舎に住むなど、私の人生で一度も想像したことがありませんでした。しかし、夫の仕事の都合でポルトガルの小さな田舎町に移住することになり、そこでの生活を始めてから、私の固定観念が次々と覆されていきました。
日本の田舎暮らしからくる不安
日本の田舎で生まれ育った私は、田舎暮らしの閉鎖的な雰囲気をよく知っています。地元では誰もが顔見知りで、人の噂が絶えず飛び交う環境が当たり前でした。「誰が不倫した」「どこそこの息子が事故に遭った」「あの娘さんが有名大学に進学した」など、個人の出来事が町中に知れ渡るのです。そのため、ポルトガルの田舎に移住する際、同じような環境かもしれないという不安が頭をよぎりました。それに加え、「ヨーロッパの田舎では外国人が差別を受けるのではないか」という心配もありました。狭いコミュニティの中で排他的な態度を取られたら、きっと耐えられないだろうと考えていたのです。
ポルトガルの田舎暮らし
しかし、実際にポルトガルでの暮らしを始めてみると、その心配は杞憂に終わりました。確かにこの町は小さく、住民の多くが顔見知りのような状態です。けれども、驚いたのは人々が他人の生活に対して驚くほど無関心だということです。日本の田舎のように他人の噂話で盛り上がることはほとんどなく、誰が何をしていようと、個人の自由として尊重する雰囲気がありました。また、差別的な態度を受けるどころか、むしろ好奇心旺盛に私に話しかけてくれる人たちが多かったのです。
特に印象的だったのは、ポルトガルの人々の褒め上手なところです。道ですれ違うたびに「あなたは本当に綺麗ね」と声をかけてくれたり、「肌がとても綺麗だけど、何を使っているの?」と聞かれたり、「あなたたちはいつもいい匂いがするけど、どうして?」と興味津々に質問されたりしました。日本では見知らぬ人に突然褒められることなど滅多にないので、最初は戸惑いましたが、これもこの土地ならではの温かさなのだと感じるようになりました。
ヨーロッパの魅力は田舎にこそある:バランスの取れた雰囲気
ヨーロッパでも都会であれば人種も多様で、多少の差別や偏見があっても、人が多すぎて気にならないかもしれません。しかし、田舎では人との距離が近く、もしそこで排他的な態度を取られたら、大きな苦痛を伴うでしょう。それを恐れていた私にとって、ポルトガルの田舎のフレンドリーで寛容な空気は、驚きであり、同時に感動でした。
ヨーロッパの田舎には、ゆったりとした時間が流れています。日々の暮らしはシンプルですが、その中に人々の温かさや親しみやすさが感じられるのです。住民一人ひとりが他人の自由を尊重し、過度に干渉しない一方で、必要なときには惜しみなく手を差し伸べてくれる――そんなバランスの取れたコミュニティがここにはあります。
「ヨーロッパの魅力は田舎にこそある」と断言できる理由は、こうした日常の中に詰まっています。文化的な多様性と寛容さ、そして自然に溢れる美しい景色。それらが共存する田舎は、都会にはない独自の価値を持っています。ポルトガルの田舎に暮らし始めた私は、その魅力を身をもって知ることができました。ここでの生活は、私の人生においてかけがえのない宝物となりつつあります。