DXは何故進展しないのか?
最近、新聞記事や、経済番組でデジタルトランスフォーメーションの特集などが増えています。
昨年9月には、デジタル庁が設置され官民挙げての一大関心事と言えます。
投資の世界においてもDX関連銘柄が大きな注目を集めています。
いまやデジタルトランスフォーメーションは、ビジネスを優位に展開する際に必要不可欠な要素と言えますが、アンケート調査にみる現状は、期待に反して低調のようです。
1.国内企業におけるDX推進の現状
帝国データバンクによると、DX推進の取組み内容として「オンライン会議設備の導入」(61.9%)や「ペーパーレス化」(60.6%)などDX実現の初期段階の取り組みである業務環境のオンライン化などが上位を占めています。
一方で、デジタル技術を活用して「既存製品・サービスの高付加価値化」(11.7%)および「新規製品・サービスの創出」(10.8%)といったDX への本格的な取り組みを進めている企業は1 割にとどまっています。
また「DX白書2021」においても全社戦略に基づき、全社的にDXに取り組んでいるのは、米国企業37%に対して日本企業は22%と低調です。
さらに「DX の取り組みに関する実態調査」でもグローバル市場におけるデジタル企業(1.3%)、全社戦略に基づく継続的実施(8.1%)を加えても、1割に満たない状況です。
2.要因分析
なぜこれだけ注目されているビジネステーマなのに、デジタル技術による企業変革が思わしくないのでしょうか?
私は、国内企業のDX推進が立ち遅れている要因として3点あると考えます。
1.デジタイゼーション対応の遅れとアジャイルの原則に則ったDX推進
2.経営者の意識が低く全社戦略に基づいた全社的なDX推進ができていない3.デジタル人材の不足から現場での巻き込みが出来ていない
デジタイゼーション(アナログ・物理データのデジタルデータ化)において「すでに十分成果が出ている」項目で、米国企業57%に対して、日本企業は17%と大きく差が開いています。基盤となる体制整備がままならない状況が伺えます。
さらにアジャイルの原則(顧客価値を高めるために企画、実行、学習のサイクルを継続的かつスピード感をもって反復すること)においてもIT部門、経営企画部門、事業部門で「(アジャイルの原則にのっとったDX推進を)全面的に取り入れている」のは、一桁代です。
DXとは、工夫(Modify)や改善(Change)といったものとは全く異なる、変革はいわば「全く違うものに変わること」と言われています。
デジタルは技術の変化スピードが速く、成果が見えにくい未分野の領域において、これまでと全く異なる変革を遂げるには、アジャイルが求められます。そうした事に対する認識の低さ、これまでのビジネス慣習からの脱却が見られなければ成果が得にくい状況も致し方ないと考えます。
こうしたアジャイルな意識変革ができていないのは、デジタルに対する経営者の知識や位置づけが低いことが要因として考えられます。
その裏付けとして、専任のCIO,CDO,CDXOがいる企業は20%に満たない状況が背景として挙げられます。
要するに、国内企業においては、DXを推進することが、事業継続、ひいては企業存続において必要不可欠であるという危機感が欠如していると考えられます。自由回答ですが「DX全体を管理したり、事業を形にする人材が不足している」と回答したのは最多の80名となっています。
最後は、人材不足と教育体制の未整備です。
業務戦略上、変革を担う人材の「量」の確保において「やや過剰である」、「過不足はない」の合計値で米国企業54%に対して、日本企業は17%です。
「ITリテラシー向上施策」で「社内研修・教育プランを実施している」のは、米国企業55%に対して、日本企業は22%です。
3.DXによる企業変革へむけた課題
まとめると国内企業がグローバルな競争優位を確保するためにDXを推進していくには、以下3点が課題と考えます。
1.経営者の意識変革(デジタルを活用し既存と新規事業の両面を変革)
2.社員教育による現場レベルでのデジタル化推進の強化
3.デジタルを利用しないことによるデメリット危機意識の醸成
以上
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