【都消幻想春梅香】菅原道真の繋ぐ、宮古芳香と鳴花ヒメの物語

noteを書くのはだいぶ久しぶりのフォカでございます。
応用物理学会と東方舞踏館ライブの準備に追われているため走り書きでかいております。


9/13 21:00~より、「電脳幻想音楽」の「國分。」様とのコラボ曲『都消幻想春梅香』のMVが公開されるので、それに合わせて、この曲に至る経緯と内容の解説をしていきます。

なお、こちらはギャラクティック・リボルバーは関係のない、個人的なコラボとなっております。
ですが、こちらの曲の収録されておりますCD「約束」には、ギャラリボの『星色デザイア』を鳴花バージョンが入っております。そちらもぜひぜひ聞いていただけると嬉しいです。

https://x.com/_knwk_/status/1781642682311557129

鳴花ヒメについて

このnoteを読んでいる人の多くは彼女のことを知らないかもしれません。
あらためてここで先に説明しておこうと思います。


ピンクの方がヒメ、青の方がミコト 両方とも性別は不詳らしい

鳴花ヒメは、2019年に発売された合成音声ソフトのキャラクターとなります。
つまるところ、VOCALOIDというやつです。
相方として、より中性的なボイスの「鳴花ミコト」がいます。二人合わせて鳴花ーズと呼ばれたりしています。

声優はどちらとも小岩井ことりさん、「のんのんびより」の「れんげ」が一番有名ですかね。

比較的若い(発売年的な意味で)キャラクターですが、主にニコニコを中心に一定の人気を博しております。
「ふにんがす」(ふにちかさんは、東方ファンならなじみ深いだろう)における「妙楽」さんが使用しているキャラ、というとわかる方もいるかもしれません。

あんまデカい声で言っていませんでしたが、僕はそれなりに彼女のオタクをしています。実際に合成音声ソフトウェアを買って色々()作ったりもしていました。

そんな彼女のモチーフは梅、特に「飛梅伝説」であるとされています。

これは、菅原道真にまつわる逸話であります。
道真が策略にあって太宰府に左遷された、というのは有名な話でしょう。
で日頃から愛でていた梅に対して、このような別れの句を残しました

東風吹かば 匂ひおこせよ 梅の花 あるじなしとて 春な忘れそ

菅原道真, 901

道真はこの句を残して都を去りました。
道真の想いを受け取ったこの梅の木は、道真についていくべく、一晩で太宰府まで飛んで行った、とのことです。

実際、多くの天満宮では梅の花が植えられていますが、それはこの逸話に起因するものです。そんな飛梅伝説における梅の花が精霊になったものが、鳴花-ズであるとされています。

彼女がボーカロイドとして発売される際のデモ曲として、「鳴花」という曲があります。

声優本人が作詞作曲編曲MV全部やってるのバケモンすぎる

こちらの曲の中でも、「東風を吹かせに行こう」という歌詞がありますが、明確にこのエピソードを意識したものでしょう。

これの他にも、鳴花二次創作界隈的には、菅原道真を主とするのはそれなりに一般的なものであります。


都良香と道真の話

あれは2022年の上旬、まだ自分がサークルを持つことなど考えていなかった時期のことでした。
当時、純粋に神霊廟のオタクをやっていた僕は、ふと「都良香」のことを調べてみようという気になりました。

都良香については、このnoteの読者はそれなりに知っているんじゃないかなと思います。
これは、「宮古芳香」の元ネタであります。
東方の世界では意思なきキョンシーとなってしまった彼女(彼)ですが、生前(死前、とでも呼んだ方が正確か)においては、それはそれは高名な文人であり官僚でした。

東方世界と関わるエピソードで言うと、茨木華扇、すなわち茨木童子との絡みが有名でしょう。

東方茨歌仙の冒頭は、茨木華扇が詩を唄う場面から始まります。
このときの詩こそ、都良香との共作とも呼ぶべきものです。

都良香はある日、羅生門の下で次のような詩を詠みました。

気霽れては風新柳の髪を梳る

都良香

それに対して、羅生門の上からこのような対句が帰ってきました。

氷消えては波旧苔の鬚を洗ふ

茨木童子

実はこの招待が『茨木童子』という鬼だった、というのが有名な「羅生門の鬼」の逸話です。

これはどちらかといえば華扇側のエピソードとしての印象が強いですが、確かに都良香の関わるものであります。

「たまには原作の原作をちゃんと履修しよう!」ということで、元ネタの文献を追ってみることにしました。
さすがに弊学の図書館ということで、探すと様々に出てきました。
実際に分厚い古文書から上記に関する記述を発見したときには、「空想上の存在とも思っていた都良香の実在性」を感じて非常に感動したのを覚えています。

して、そんな元ネタ漁りをしているときに、ある記述が目につきました。
それは、都良香と菅原道真についての関係性です。

曰く、都良香は実のところ、道真の師匠的ポジションであったのです。
師匠"的"と言ったのは、確かに師匠ではあるものの、道真のすごさを語る話の方が多いためです。
(誤解を恐れずに行っておくと、都良香も普通に歴史に名を遺すレベルなので相当やばいです。ただし、相手が天神様はさすがに分が悪い。)

当時、平安の都では、中国の科挙のような官僚登用試験が行われていたようです。
その試験において、道真の試験官をしたのが実は良香なのです。
実際に、道真の書いた論評に対して「中の上で合格」という評価を良香がした、という記録が残っております。

そんな感じで良香と道真にはいろいろと関係する話があります。
実のところ、先ほどの羅生門の話でも道真が出てきます。

良香「なんか羅生門の下で歌よんだら天から対句が返ってきたんだが」
道真「それ鬼が詠んだやつやで」

平安時代のなんJ

とまあ、良香と道真の関係性には気づいていたのですが、最初はそこで止まっていました。
しかし、しばらくしてあることに気づきます。

(「これ、道真を間に挟めば「宮古芳香と鳴花ヒメ」、すなわち「東方とボカロ」を自然な形で融合できるんじゃね……?」「リジッドパラダイスを原曲にして、鳴花ヒメに歌わせれば面白いんじゃね……?」)

実際、これに気づいたのは本当にたまたま偶然の話であります。

『本朝神仙伝』という書物があります。
これは仙道にかかわる偉人たちの逸話が並んでいるものですが、都良香の次の項目が道真となっていました。
「せっかくだし道真の方も一応目を通しておくか!」程度のノリで読んでいましたが、そこで出てきたのが冒頭にて紹介した「飛梅伝説」の逸話でした。
ここで初めて、道真の鳴花ヒメの関係性を思い出し、考案に至ったというわけですね。

國分。さんとの出会いと現在に至るまで

そんか感じの構想得たのが2022年の上旬というわけで、この曲の出る2年ほどとなります。
当時の僕は一般東方オタクではありましたが、基本的に創作意欲などを持ち合わせてはいませんでした。
この構想を実現したい!とは思ったものの、音楽の経験もなく、ほぼほぼ断念していました。
(一応メロディもどきと作詞だけはした記憶、今のものとは全然別物ですが)

そんなこんなで半年ほどが経過して、12月だったと思います。
東方ステーション『この東方アレンジがすごい!』の企画がありました。

去年は大変お世話になりました

ここで知ったのが國分。さんであります。
この企画において、「籠の鳥」という曲がノミネートされていました。


なんとこの曲、鳴花ヒメによる東方アレンジであります。
「好きなもの」×「好きなもの」ということで、僕的にはもう推さざるを得ないような曲だったわけです。

この曲ひいては國分。さんを知るにつれ、
「僕のあきらめた構想を託すとしたら國分。さんしかいない」と思うようになりました。

熱量をぶちまけるがごとく、國分。さんのDMに長文ドーン!!とやりました。(非常識)
國分。さんは快く返事をしてくださり、「2024年くらいにやるんでそんときヨロシクっす!(意訳)」という返答をいただきました。

そんなこんなでこの曲については完全にお任せするつもりだったのですが、話がややこしくなるのが年明けからです。

2023年の正月に唐突にすてぃんがー☆より連絡を受け、自分のサークルであるギャラクティック・リボルバーが結成されました。
それから1年、色々と活動していったのは皆さんご存じのことかと思います。

そんな様子でしたので、國分。さんより「合作という形にしませんか?」という連絡を受けまして、今に至ったというわけです。


あとがき

そんな感じで投稿直前に至ります。(2024 09/13 19:20)
この前提を踏まえておくと、歌詞や演出の意味などわかってくるかもしれません。

それではぜひお楽しみください!!

 


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